武田砂鉄による『芸能人寛容論:テレビの中のわだかまり』(青弓社)は、インターネットのサイトcakes(ケイクス)に連載されたコラム「ワダアキ考〜テレビの中のわだかまり〜」をまとめたものです。


芸能人論に挑む

著者である武田砂鉄は、出版社編集者を経て、2015年に『紋切型社会』(河出書房新社)でデビューします。デビュー作は、世の中のちょっと気になるフレーズやツッコミどころなどを、ときほぐしたコラムです。誰もが知っていることに対し著者ならではの視点をぶつけます。『芸能人寛容論』もその延長線上にある書籍だといえるでしょう。

自らへツッコミ

本書のあとがきにおいて著者は、あらかじめ想定されるツッコミにこたえています。それは「ナンシー関のエピゴーネンではないか」というものです。エピゴーネンとは、まがいものや二番煎じといった意味合いです。いまや誰もがナンシー関のようにテレビと芸能人に対してネット上でツッコミを入れられる時代です。そんな時に『芸能人寛容論』の本が出れば「俺の方が面白く書ける」といった意見が出るのは承知です。インサイダーな芸能人情報を盛り込んだり、あるいは硬派なルポルタージュなど、そうした読者が黙るような要素を入れても良いのでしょうが、著者は、印象批評に終始しようとします。このストイックさは評価に値します。

ネットの時代だからこそのコラム

テレビはかつてに比べて見られなくなったと言われて久しいです。ですが、果たして本当にそうなのでしょうか。ネットニュースを見ていると、テレビ番組内における芸能人の発言を取り上げたものが多くあります。テレビと芸能人については過剰に語られているのです。そんな中で抜きん出た面白さを保持しているのが本書なのです。