更新されるナムジュン・パイク

2016年は、ビデオアーティストとして知られるナムジュン・パイクの没後10年の年にあたります。そのため、東京のワタリウム美術館では大規模な回顧展が行われました。その展示会図録として『ナムジュン・パイク:2020年笑っているのは誰 ?+?=??』(平凡社)が作られました。


新規文章を多数収録

本書は、展示の構成に準じて生い立ちから晩年までを編年体で追った決定版というべき書籍です。さらに未発表分を含むテキストも多く収録されています。ナムジュン・パイクは、多くの文章を雑誌や新聞に発表していますが、それを網羅的に集めた書籍はありません。そのため、本書はナムジュン・パイク入門編として最適な一冊でしょう。

ヨーゼフ・ボイスとの交流も

本書でページがさかれているのは、ヨーゼフ・ボイスとの交流でしょう。ナムジュン・パイクは、ドイツ留学中に、ヨーゼフ・ボイス
と知り合い、その後生涯にわたって親交を結びます。ヨーゼフ・ボイスは「すべての人間は芸術家である」として、芸術概念の拡張を提唱しました。ナムジュン・パイクも、ビデオアートという表現手段を「新しいキャンバス」になぞらえていましたので、両者の思いは一致していたのだといえるでしょう。

未来へどう展開される?

タイトルの通り、本書は2020年を見据えたものです。彼の作品は死によって完結するのではなく、拡張をはじめたといえるでしょう。現代の高度情報化社会の到来を、ナム・ジュン・パイクはアート作品の中で予言していました。多数のモニターに、無数の映像が映り込む作品などは、現在は衛星放送チャンネルとして具現化しています。さらにナムジュン・パイクは、情報が光速で飛び交う世界をエレクトロニック・スーパーハイウェイと呼んでいました。言わずもがな、これは現在のインターネットでしょう。彼の先見性が際立ちます。

    
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