『深夜特急』なぜ読み継がれる?

旅行記は現在も過去も人気のジャンルのひとつでしょう。ですが、旅行記のほとんどは、著者の主観が強いことが多く、その人にとってハマるかどうかは未知数です。これは世代、時代の問題でもあるでしょう。あるいは年代を経ると情報が古びてしまったりして、実践的な読み方はできなくなります。そんな栄枯盛衰のはげしい旅行記の中で読み継がれている本があります。それが沢木耕太郎による『深夜特急』シリーズです。


文庫で6冊構成

『深夜特急』は、70年代のはじめに仕事を休み、香港からロンドンまで貧乏旅行をした体験を、旅からおよそ20年後の、1986年から1992年にかけて書き下ろしたものです。旅に出た時、26歳だった青年は結婚して家庭を持っていました。すでに出版時に、20年前の出来事を書いているにも関わらず本書はベストセラーとなりました。単行本3巻分として発売されましたが、のちに6冊の文庫本として新潮文庫に入っています。6冊の内訳は、香港・マカオ、マレー半島(タイ)・シンガポール 、インド・ネパール、シルクロード(パキスタン、イラン)、トルコ・ギリシア・地中海、南ヨーロッパ・ロンドンです。

旅先ごとに持っていける

『深夜特急』は通して読む楽しみもありますが、旅先ごとに持参することもできます。200ページほどのコンパクトな文庫本なので持ち運びに便利です。アジアには路地裏の世界がひろがっており、なかには『深夜特急』に出てくる宿や建物がいまだに存在するといったこともあります。時が止まったような場所であり、ノスタルジーを喚起させられる場所でもあります。『深夜特急』を読みながらそうした場所、風景、記憶をたどるのもひとつの楽しみだといえるでしょう。なにより、20代で旅に出たくなる衝動は、今も昔も変わりないものであるがゆえに、共感を持って読めるため、『深夜特急』シリーズの魅力が色褪せないのでしょう。

    
コメント