聖徳太子の「冠位十二階」から始まった身分制度。敬語が始まった歴史的理由

「敬語」の多くは、「人のランクづけ」をもとにした、「尊敬の敬語」や「謙譲の敬語」です。今ではそういうランクづけがなくなってしまって、敬語で一番必要なのは、「ランクの差」とは関係ない「丁寧の敬語」になっています。

しかし、「社会が人のランクを決めて、それに応じた尊敬の敬語を使わなければならない」という考え方は、日本人の中に深く根を下ろしています。

日本で「人のランクづけ」が始まったのは、603年です。聖徳太子が「冠位十二階」という制度を決めてから始まりました。


冠位十二階とは

聖徳太子は、朝廷に仕える人間たちを、十二のランクに分けました。それが、「冠位十二階」です。それまでは、そんなに細かくはっきりした「人のランクづけ」がありませんでした。人間一人一人をはっきりランクづけする必要はなくて、部族単位の大ざっぱなランクづけだけでよかったのです。

聖徳太子は、それを「一人ずつのランク」にしました。十二のランクごとにかぶる冠の色を変えて、一目見れば、「この人はどの程度のえらさ」ということがわかるようにしました。だから、「冠位」と言うのです。

昔の日本の冠は布でできていましたから、つまりは、「かぶる帽子の色でランクづけをはっきりさせた」です。このランクづけは、朝廷つまり国家が決めます。

えらい人、えらくない人

朝廷は、朝廷に仕える人だけをランクづけしました。その他の国民は、関係ありません。日本の国民は、「ランクづけされる人」と、「ランク外の人」の二種類にわけられます。「ランクづけされる人」は「身分のある人」で、これが「えらい人」です。「ランク外」の人は「身分のない人」で、つまりは「えらくない人」です。日本の身分制度は、まずこういうふうに分けられます。

「士農工商」と4つに分けられていても、武士の階級だけが特別なのも、これと同じです。「士」だけが「身分のある階級」で、「農工商」は、「身分のない階級」です。

「身分のない人」は、「身分のある人」に対して、「尊敬の敬語」や「謙譲の敬語」を使って、「ワンランク上の人」ということを、はっきりさせなければいけませんでした。それをしないと怒られます。そして、「身分のない人」から「尊敬の敬語」や「謙譲の敬語」を使われる「身分のある人」は、その中で細かいランクづけをされます。その最初が「冠位十二階」です。

「帽子の色の違い」で始まった「冠位十二階」は、平安時代になると、「一位、二位、三」という、数字によるランクづけになります。「冠の色による違い」はなくなり、冠の色は黒で統一され、「国家から冠をかぶってもいい」と言われた人と、言われない人の区別だけは、変わらぬままにありました。つまり、「身分のある人」と「身分のない人」です。

「一位、二位、三位」という数字によるランクづけは、「官位」と言います。「国からもらう位」だから、「官位」です。朝廷=国家に仕える人は、まず官位をもらって、「そのランクならこの仕事」というふうに、自分の仕事の肩書をもらいます。

「この人にはこういう能力があるから、どの仕事がふさわしい」とは考えません。「このランクならこの仕事」と、まるで受験の進路指導みたいに、仕事のランクが決められました。「どのランクならどの仕事」という、「身分による偏差値表」のようなものがあったのです。聖徳太子の「冠位十二階」から、そういう考え方は、ずっと続いていきます。

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参考本

「ちゃんと話すための敬語の本(橋本治)」

    
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