ノーベル賞の裏に、知財コミュニケーション力あり

私たちの身近にも、そしてノーベル賞という一大栄誉の陰にも! 
iPS細胞の特許にまつわる、知られざる知財戦略の感動ドラマをご紹介します。


日本の誇り山中教授

知財を知り尽くし、賢く戦ったゆえの成功として、格好の例があります。ノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥教授です。
山中教授が所属する、京都大学iPS細胞研究所は、iPS細胞の基本特許を取得したことにより、今日、同研究所が主導権をもってiPS細胞の研究を行うことができています。

人のふんどしで相撲を取る海外企業

特許成立を発表する記者会見の席上、山中教授の隣には高須直子氏の姿がありました。高須氏は山中教授がヘッドハンティングした「知財のスペシャリスト」です。
特許競争は早々に起こりました。ヒトiPS細胞に成功し、国際特許を出願した山中教授らに、「うちのほうが先だ」とアメリカのベンチャー企業が噛み付いてきました。もちろん、山中教授らのマウスiPS細胞の論文ありきの内容で、日本国内ならあり得ない主張でしたが、そんな理屈が通じる相手ではありません。

訴訟に備えた万全策

こういった訴訟に備えて、万全の対策を練ってきていた高須氏らは「負けはしないだろうが、訴訟が長引けば、その後の研究に悪影響となること間違いなし」と考え、速やかに「痛み分け」という形で決着させました。
もちろん、守るべきところはしっかりと守った結果がノーベル賞受賞や、その後のヒトiPS細胞をつかった数々の臨床手術の成功という成果に表れています。

知財スペシャリストの功績

もし、高須氏のような知財のスペシャリスト不在の状態で、訴訟を仕掛けられていたら、いったいどうなっていたことでしょう。
訴訟慣れしている米国弁護士らが相手です。これまで、日本の多くの企業や研究者らが煮え湯を飲まされてきたように、簡単に手玉に取られていたことでしょう。

研究を守り切ってノーベル賞へ

山中教授も、そのような先例を数多く見てきたことから、知財のスペシャリストの必要性を痛感し、ヘッドハンティングまで行ったのだろうと思います。
ここを見誤り、研究にだけ没頭していたら、いかに山中教授であっても、ノーベル賞受賞はなかったかもしれません。
ノーベル賞の裏に知財コミュニケーション力あり、なのです。

 

【まとめ】

・iPS細胞の山中教授は知財スペシャリストをヘッドハンティングしていた。
・特許出願で貴重な研究が世界に流出。知財が盗まれる危機に。
・知財コミュニケーション力がなければノーベル賞はなかったかもしれないのです。驚きの事実、あなたはご存知でしたか?

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著者:新井信昭(あらい・のぶあき)

    
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