「お客様は神様」は正しいか

演歌歌手の三波春夫さんがかつて口にして広がった「お客様は神様です」という言葉。芸能の世界に限らず、接客業の世界でも頻繁に耳にします。「お客様は神様だから、どんな無理難題でも対応しなければならない」といった意味合いで使われますが、「ワンランク上の『接客交渉術』」の著者・宮田寿志さんは、その考え方自体が現場の店員たちを苦しめていると言っています。


何でも対応するのは一部に限った話

一部の高級ホテルや老舗旅館では、たしかに「お客のわがままにできる限り応える」ことをサービスの柱にしています。しかし、一般的にはそう簡単にいかないのが実情です。とはいえ、テレビドラマなどの影響もあるのか、どの宿泊施設でもそうした方針を当然と捉えてしまうお客が少なくありません。宮田さんは、これがクレーマーの温床となって、現場に悪影響を与えてしまうことを懸念しているのです。

神様の正体は「お金さま」

宮田さんは、「お客が払うお金が店員たちの給料になっている」という事実を認識しておくべきだと言っています。従業員の賃金の原資は、言うまでもなくお客からの売り上げ。つまり「お客様は神様」というより「お客様はお金さま」というのが実体なのだというわけです。

自分が損しないための割り切りを

難しいお客に対してはどんな要望であれ、相手に共感する言葉を使い、懇願することを厭わない対応が肝要だと、宮田さんは再三にわたり述べています。それは取りも直さず、店員としての自分が損しないための対処法であるとも。お客を神様ではなく、回り回って自分に利益をもたらすお金なのだと割り切れば、嫌なお客が相手でも少々の我慢は難しくない。宮田さんが言う徹底した演技にも磨きがかかるかもしれません。

参考書籍:宮田寿志著「ワンランク上の『接客交渉術』」(ぱる出版刊)

筆者プロフィール
足立謙二 時事通信記者を経てフリーライターに。雑誌「昭和40年男」、ねとらぼなどエンタメ系サイトなどでサブカル、アニメ、特撮などを中心に執筆。Twitterアカウントは@adaken

    
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