遠まわりしたアイドル「AKB48」。成功の秘密はコミュニティ形成だった

AKB48は、すぐに売れたアイドルではありません。AKB48が成功するには、ファンのコミュニティ形成が必要でした。AKB48が売れるまでの間、売れるためのコミュニティを築き続けました。そして、総選挙を機に、今のAKB48伝説は始まったのです。

第1フェーズ:劇場時代 2005年~2008年
第2フェーズ:総選挙時代 2009年~現在

とフェーズ分類することができます。では、AKB48はどのように成功に繋がるまでのコミュニティ形成を行ったのでしょうか?


■「48人、秋葉原、会いに行けるアイドル」のインパクト

AKB48のはじまりは、テレビの申し子ともいえる秋元康さんプロデュースなのに、テレビ番組を基盤にしないアイドルを打ち出すというアイデアでした。テレビ以前に始まった宝塚歌劇団のような、劇場拠点型アイドルを始めるという違和感がありました。しかも、その劇場がおかれる場所は、「秋葉原」。従来のメジャー系アイドルとは対極の、マニアック系アイドルが活躍する土地です。

「どうなるんだ?」
「うまくいくのか?」
「え、48人もいるの⁉」

当初記憶しているのは、それぐらいの印象です。でも、しっかり覚えている。これが、AKB48のみんなで共有できる「ネタ」だったのです。

■秋元流「やりましょう!」の巻き込み

やがてAKB48劇場でのライブが始まり、試行錯誤の日々が続きました。「アイドルと直接会える」ことを求めるファンは集まり出したものの、ファンの望む劇場にまだなれていませんでした。秋元康さん自身が直接、ファンと対話しながら「コミュニティとしての和」が形成されていき、「ファンの要望をどんどん取り入れる」方針が、運営側にもファン側にも浸透していきました。

ここは、ソフトバンクの孫正義社長の「やりましょう」にも似ています。ファンやフォロワーが何気なくリクエストしたことを拾って実現してくれる構造なのです。そこにファンは醍醐味を感じたのです。そこから、ファンは積極的に意見を投げかけてくれるようになりました。

「もっとこうして」
「やっぱりああして」

が、どんどん寄せられるようになります。やがてそれが「AKB総選挙」になり「じゃんけん大会」にまで発展しました。この運営側とファン側が「ゆるく交われる感じ」をベースに、「自分たちのAKB48」というコミュニティ基盤は形成されていきました。当然、ライブはどんどん盛況となっていき、「コミュニティの宴」がどんどん活性化しました。

■川の流れのように期は満ちて「総選挙」

AKBに対する「コミュニティの宴」が活性化し、AKB劇場も黒字化の目処が立っていました。

「収益的には、このままを続けていくのも手かもしれない」

しかし、そうしないのが秋元康さん。次の手に打って出ました。それが「総選挙」でした。AKB48には名前のとおり、大勢のメンバーがいます。それぞれのメンバーのキャラも、その頃にはもう育っていました。ファンはこう思っていたのです。

「なんでずっと前田敦子さんばかりがセンターなんですか?」

ファンも答えてくれるとは思っていなかったかもしれません。秋元康さんは投げ返しました。

「じゃ、選挙できめましょう」

最初の年は、ある意味予想通り、前田敦子さんが勝利しました。でも、ファンは相当、熱くなりました。

チーム内なのに勝ち負けが持ち込まれたスリリングさ。
自分が好きなメンバーの順位の明確化。
そして自分の貢献度合いへの満足や反省。

それぞれが新しい手応えを感じたのです。同じアイドルグループの中で序列を決める総選挙なんて、考えようによってはとても残酷なはずなのに、しびれるほど盛り上がれます。いつものライブとは違う高まりでした。メンバーにとっても、ファンにとっても、忘れようのない「晴れの場」が一緒に経験できたのです。翌年はさらに総選挙が盛り上がり、大島優子さんが勝利しました。

この時点で、AKB劇場を飛び出し、総選挙自体が、国民にとってのAKB劇場となっていました。泣いたり笑ったり、事件が起きたり、卒業があったり。「今年はどうなるんだろう⁉」とみんなが注目します。やがて、ふつうの女の子や、年配の方まで、「私は、大島推し!」とか「いやいや、ゆきりんでしょー!」といっている日常があります。AKB総選挙は、ファンにとって「◯◯推しのリーグ戦」ともなっています。マエアツ派、大島派、ゆきりん派、まゆゆ派、たかみな派…。さらには、公演に行く、握手会に行く、話す、覚えてもらう、やりとりを通じて誰かを好きになる、誰かを応援したくなる。推したくなる。◯◯推しの仲間と交流・結束する。投票する。そして、投票した分、それが順位に反映される…。総選挙だけが、あるのではありません。そのすべてが総選挙に向かって集約されていくから一緒に順位発表を見守ることができます。発表された瞬間、みんなで「うあー!」「やったー!」と感情を爆発させます。みんなで「祭の旗」取りに参加しているのです。

■「誰得?」を超え、CDを購入させたAKB48

ネットでよく使われる表現に「誰得?」という言葉があります。「それで誰が得するの?」という、誰の得にもならないような意味不明な行為を揶揄する時に使われます。そんな言葉が流行ってしまうぐらい、私たちの身の回りは「誰得?」な意識が蔓延しています。

「誰かが得するためにだけなんて、やってらんない」

CDを買うという行為は、もはや誰かを得にさせる「誰得?」行為にしか映らなくなっています。推しメンのため、自分のため、推しメン仲間のためにCDを買うようになるには、遠まわりが必要です。CDだけではなく、ふつうの女の子や、年配の方まで、「私は、大島推しのアイスを買う!」とか「いやいや、ゆきりん推しの缶コーヒーでしょー!」と選ぶ日常がやってきました。気分としては、毎日誰かに「心の一票」を投じている感覚です。これが、コミュニティが「ソーシャルエコノミー」の発動です。

いまや、AKB48の経済的インパクトは200億円を超えると言われています。しかし、AKB48も、まず「和」を築くため「遠まわり」を大切にし、サービスする側もされる側も曖昧となり、自発的に参加していました。「和のあるコミュニティ」が築かれたからこそ、「総選挙」という「祭り」を目指すことができ大ヒットできたのです。ヒット商品の作り方をもっと知りたい人は、「ソーシャルエコノミー」を読んでみてはいかがでしょうか?

「ソーシャルエコノミー 和をしかける経済(阿久津 聡, 谷内 宏行, 金田 育子, 鷲尾 恒平, 野中 郁次郎)」の詳細を調べる

    
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