素人だった「モーニング娘。」を成功させたつんくのプロデュース術とリズム論

シャ乱Qのつんくといえば、「モーニング娘。」を成功させたプロデューサーとしても有名です。では、「モーニング娘。」は素人の女の子だったのに成功を収めたのでしょうか? そこには、つんくならではのプロデュース術とリズム論に秘密が隠されています。


シャ乱Qでつんくが学んだことを活かした

シャ乱Qとしてデビューしても、売れない日々が続き、これを出して売れなかったら、もう引退するしかないという瀬戸際で出したのが、「上・京・物・語」という曲でした。幸い、この曲がヒット曲とはいえないまでも、ランキングの上位に食い込むことができ、かろうじて「シャ乱Q」は解散せずにすみました。

じつをいうと、この曲はつんくが作詞・作曲したものではなく、シンガーとしての参加でした。そのときのつんくは、シンガーとしてどうすべきかを集中して考えていたのです。プロの歌手がたくさんいるなかで、ヒットするための歌の歌い方とはいったいどういうことなんだろうと、必死でした。

歌を歌う。心で歌う。気持ちを込めて歌う。正確な音階で歌う。そこはもっと強く、あるいは弱く、高く歌い上げる、いろんな要素を人は教えてくれます。でも、それらとは違う何か大事なものがあることを感じていました。

リズムの大切さ

それは何だろう。必死で研究した結果、見つけ出したのは、リズムでした。歌にはリズムがある。一定のリズムが流れている。それは誰も教えてくれないことだったのです。

歌には、基本的に一定の速度でリズムが流れています。ポピュラーミュージックだと、たいていBPM(一分間あたりの拍数)が120~140くらいのリズムで流れていることが多いでしょう。

ビートルズの歌が耳に残る理由

このリズムのことを、それまで研究したことはありませんでした。そこで、いままで意識せずに聴いていた音楽を、リズムの面から聴き直してみました。たとえば、ビートルズの歌があります。英語の歌なのになぜ耳に残るのだろうと。

歌詞が聞き取りにくくても耳に残る歌

また、日本語で歌っているのに、外国語のように聞こえる歌があります。たとえばB'zやサザンオールスターズ。彼らの歌は、歌詞としては聞き取りにくい部分も多い。曲として、耳に心地よいのはなぜだろうと。

逆に声はいいのに、なぜか心に訴えかけてこない歌手がいるのはなぜだろうと。その理由は、歌い方のリズムが根本的に違うことにあるのではないか。そのように思い至ったそうです。

「上・京・物・語」をはじけさせるように歌うためには、BPMを145くらいのスピードに設定して、それを倍のリズムで刻んで、全身でノリをつくって歌わなければならない。

そうしないと、ふつうのフォークソングになりかねないからです。そのノリをメンバーに言葉で説明してもわかりにくいだろうと思い、アコースティック・ギターを使って、そのリズムを表現して伝えました。145の倍300くらいが人間としては限界のスピードだと思いますが、それだとけんしょう炎になるくらいの速さで弾かなければならないのです。

ドラムやベースなど、リズムを刻む楽器もつんくのリズムに合わせてくれと実際にやって見せ、「ジャンガジャンジャガンジャジャンジャンジャカ」とボディランゲージとアコースティック・ギターで何度も何度も繰り返し、作品を仕上げるべくかたちにしていきました。

つんくのリズム論

この練習の過程で、つんくのリズム論がある程度完成し、「上・京・物・語」はその方法論で歌ったのです。そしたら、ヒット曲とはいえないまでも、オリコンのランキングでベスト50入りした。それで自信を深め、この方法を「シングルベッド」にも応用したのです。

「シングルベッドで」というところを歌うとき、「シイインンングウウルベエエエッドで」と細かく16ビートを感じるように割ってリズムをとっています。

曲のしめの部分も、「あぁ 辛くないのに」ではなく、「ああ つうらぁくううう なぁぁぁいいんのおにいい」というふうにリズムを細かくとって歌っています。

こんなふうに歌えば、日本人離れしたように誰でもうまく歌える。黒人がもつリズム感を出すのはむずかしいかもしれないが、日本人歌手が歌う英語曲風のリズム感が感じられるような雰囲気くらいは出せるのです。

モーニング娘。ではリズム感を徹底的に鍛えた

「モーニング娘。」はもともと素人だった女の子たちを、このリズム感で鍛え上げました。あのはじけるようなリズム感は、訓練によって習得してもらったものなのです。

成功の秘密はリズム感にある

音楽にかぎらず、何をやるにもスムーズにこなす人は、自分に心地よいリズムをもっているのではないかとつんくは思っています。たとえば、生活のリズム。朝何時に起きて、何時に食事する。リズムに乗った生活をしていると、一つひとつの動作がスムーズになり、体調もよくなる。

仕事も同様で、仕事がリズムに乗り出すとどんどんはかどる。たとえばスケジュールを30分単位で考え、その30分を自分の頭のなかでさらに分け、十分のうちにここまでやって、それを3回やると一段落来るなといったふうにリズム割りしてみるのです。

人生というのは長縄跳びみたいなものではないでしょうか。長い縄のなかで、何人もの人がリズムを合わせ、一緒になって跳ぶ。縄に引っかかったらゲームは終わりです。

子どもに演技を教えるとき、見えない長縄跳びをやる教室があるそうです。大人二人が架空の縄をまわし、そのなかにいつ入るかを、リズムを読みながら「いまだ」と入っていく。それをやることで、協調性を身体感覚として身につけていくのだといいます。リズム感を身につけることと、協調性を身につけることがイコールになっているのです。

会社という組織も同様です。ほかの人と歩調を合わせて、いかに長く輪=和のなかにいることができるか。リズム感は、様々なところで成功をもたらすものだったのです。つんくさんの本「一番になる人」は芸能本とは思えないほどおすすめのビジネス本です。気になる人は読んで損しません!

参考本

「一番になる人(つんく♂)」

    
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