なぜ「富士宮やきそば」は「B‐1グランプリ」でグランプリになったのか!? コミュニティ形成が生み出す

あなたがどこかの町おこしを企画するなら、看板メニューとして、どちらを選びますか?

A「伊勢エビラーメン」的なゴージャス系メニュー
B「富士宮やきそば」

「伊勢エビラーメン」なんて一度か二度食べればもう十分ですよね。値段だってきっと高いし。それより350円ぐらいで香ばしそうな「富士宮やきそば」のほうが、何度でも食べたくなるし、友人知人に、お気に入りの店を紹介したくなりませんか? 今回は、なぜ「富士宮やきそば」は「B‐1グランプリ」でグランプリを獲得したのか? 「富士宮やきそば」がヒット商品になった秘密を紹介します。


■自分なら絶対こっち! を大切に

「伊勢エビラーメン」という珍しさだけでは、人はすぐに飽きてしまいます。一方、「(富士宮)やきそば」は屋台の定番です。自分だけでなく、みんなも「伊勢海老ラーメン」より「(富士宮)やきそば!」のほうを選ぶだろうなと思いませんか? 実はこの「絶対こっち!」という感覚がヒット商品を生み出すのです。この感覚はみんなが持っているもので、町おこしだからといって「ちょっと珍しいものを」、「プロ中のプロが作ったものを」という制限は必要ないのです。答えは「自分なら絶対こっち!」という感覚にあります。

■大ヒット商品「富士宮やきそば」の始まり

富士宮やきそば学会会長の渡邉英彦さんは、当初をこう振り返ります。

「もともとは、行政が町おこし的な会をやっていて、そこに僕らが入っていったんです。その会自体は時期が来て終わってしまったんですけど、そこから有志で『具体的に何かやろう!』ということになって、『焼きそばってどうだろう?』ってことになったんです。有志だからお金もないし、我々は焼きそばに携わる当事者でもなかった。焼きそばの麺をつくる製麺会社でも、焼きそばを提供している飲食店でもなかった。ここが新しいスタイルで、直接利益を得られるわけでもない人たちが勝手に、富士宮の焼きそばを盛り立てていった。普通の市民による勝手連だったんです」

渡邉さんは、その活動の名を「富士宮やきそば学会」としました。焼きそばなのに、学会? それこそが、渡邉さんの手だったのです。

■メディアにどう取り上げてもらうか

「ただ単に、焼きそばのレシピやお店を紹介しただけでは人は来ないので、メディアにどうしたら取り上げてもらえるかをずっと工夫してやってきました。焼きそばの味そのものではなく、我々の活動自体がおもしろいんだとなるように」

市民の勝手連の活動自体を、おもしろいものとしてアピールしていく。その「アピール方法」のひとつが、「富士宮やきそば学会」というネーミングでした。「あえて『学会』と称することで、メディアが取り上げてくれやすくなるんです。他にも、有志の活動の一環として、美味しく焼いている駄菓子屋や飲食店を調査することがあります。この調査隊を『焼きそばG麺』と名づける。するとメディアも、『Gメンならぬ、焼きそばG麺が夜な夜な調査した!』と表現しやすくなります」

思わず笑ってしまう渡邉さんの「おやじギャグ」。この緩さやメンタリティこそが、人を巻き込んでいくのにとても重要な要素だったんです。

■無責任MAXで、エントロピーMAX! 緩さが「和」を作る

「無責任とは、当事者でない関係ない人たちがやっている緩さや広がりを意味します。焼きそばに従事する者でなくても、富士宮やきそばを愛する有志なら誰でもが参加できる伸びやかさ、明るさです。これをマーケティング・ミックスならぬ無責任MIXと称しています(笑)。富士宮やきそばの場合、それらが噛み合ったんですね」

と富士宮やきそば学会会長の渡邉さんは語ります。しかし、この無責任MIXこそが、コミュニティを「和」にする上で最も重要といえるのです。

■コミュニティに参加したくなる制限を取っ払う

ある制限があると、コミュニティに参加したいと思えません。

堅苦しかったり、権利がうるさい。
誰かが儲かるためだけの仕組み。
自分でも何かできそうに思えない。
そして、何かへの愛がないと、参加する気にはなれません。

実は、「富士宮やきそば」でコミュニティづくりをリードしたのは、焼きそばに従事しない保険屋さんや建築屋さんなど有志からなる市民でした。彼らが町のために一生懸命になり「富士宮の焼きそば」を「富士宮やきそば」という名物に変えていったのです。焼きそば屋でもない人たちががんばったから、本業の焼きそば屋さんも、町の人たちも、「じゃ、自分たちも盛り立ててみようか!」とどんどん協力的になってくれました。地元富士宮への愛、そして、自分たちも気軽に協力できそうな緩さ。無責任MIXが、

「富士宮やきそば、サイコー!!」

というエネルギー量をどんどん肥大化させていったのです。

■コミュニティの「和」がヒットを生み出した

B‐1グランプリやコミケも、同好の勝手連から始まった祭りでした。運営する側も参加する側も同じような一般人っぽいし、どこまでが趣味でどこまでがビジネスなのかよくわからりません。そこに共益の和がありつづける限り、「もう勝手にやっとれん!」というほど、祭りは肥大化するのかもしれません。動員数がひとつの社会現象としてニュースに取り上げられるたび、「あー、行っとけばよかったなー」とちょっと残念になります。その残念な気持ちが、経済を動かします。「自分もどれがうまいのか、異論反論してみたい!」と輪に加わりたくなる気持ちが「ソーシャルエコノミー」となって、まわりはじめるのです。

「富士宮やきそば」などヒット商品を生み出すコミュニティの作り方は、「ソーシャルエコノミー」に詳しく紹介されています。ヒット商品を生み出したい人は読んでみてはいかがでしょうか?

「ソーシャルエコノミー 和をしかける経済(阿久津 聡, 谷内 宏行, 金田 育子, 鷲尾 恒平, 野中 郁次郎)」の詳細を調べる

    
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