クレディセゾンがサインレスと永久不滅ポイントアイデアを生み出したイノベーション発想法

クレディセゾンがサインレスと永久不滅ポイントのアイデアを生み出したイノベーション発想法について紹介します。アイデア発想法として非常に役立つ考え方です!


小さなスティーブ・ジョブズを目指せ

どうすれば消費者の感性を刺激する商品やサービスを生み出せるのでしょうか。求められるのが、開発する側、企画する側の感性です。じつは消費者は、自分がどのようなものによって感性を刺激されるのかがよくわかっていません。いくら市場をリサーチしても、そこから導き出せるのは消費者の想定内の企画だけです。

消費者の感性を刺激するサプライズを生み出すには、開発者や企画者が自らの感性を信じるしかないのです。知性優位のままでは「モノからコトへ」の時代に対応できず、家電メーカーのように苦戦を強いられる可能性が大です。ガラパゴス化して淘汰されないように、しっかりと感性を磨く必要があります。

感性の重要性を指摘すると、「商品の企画や開発を担当していないので自分は関係がない。会社に一人、スティーブ・ジョブズ氏のような感性を持った天才がいれば十分だ」と主張する人もいます。

しかし、会社に一人の天才がいれば、他の人は凡庸でかまわないのでしょうか。たしかにアップルの成功は、スティーブ・ジョブズという一人の凄まじい努力家によってもたらされた部分が大きいと思います。ジョブズがいなければ、いまのアップルはありえなかっでしょう。

ただし、現実はジョブズ一人では何も動きません。ジョブズが打ち出すコンセプトがイノベーティブであるほど、その実現に向けて数々の壁が立ちはだかることになります。その壁を乗り越えるには、現場レベルで一人一人が小さなイノベーションを起こさなくてはなりません。

つまり、ジョブズの起こしたイノベーションは、各現場にいる小さなスティーブ・ジョブズたちによって支えられてきたのです。私たちが目指すべきは、ジョブズの代わりを務めることではなく、一人ひとりが自分の現場で「小さなスティーブ・ジョブズ」になることです。それぞれの持ち場で一人一人が感性を発揮して小さなイノベーションを積み重ねていけば、天才の登場を待つまでもなく企業間競争で優位に立つことが可能です。

イノベーションは身近にある

イノベーションは、天才が生み出す特別なものではありません。クレディセゾンはサインレスや永久不滅ポイントといったサービスで、カード業界の常識を打破しました。それらのサービスは、カード利用者の立場に立てば誰でも気づくことができるイノベーションでした。

サインレスの誕生

サインレスは、西友とのコラボレーションの中で誕生したサービスです。当時、スーパーではカードの利用が進んでいませんでした。カード払いは現金払いと違って小銭がいらないので便利です。また割引の日をつくるなどして、利用しやすい環境も整えました。それでも利用者数は、期待していたほど伸びませんでした。

行き詰まったときは、現場に答えが落ちています。そこでレジでのお客様の様子を観察したところ、どうやらサインに手間がかかることがカードの利用を妨げていることがわかりました。

たしかに日常的な買い物をするときに毎回サインをするのは面倒です。またサインに手間がかかると、後ろに並んだ人たちの目も気になります。後ろの人たちからの「早くして」というプレッシャーにさらされるくらいなら、現金でさっさと払ってしまおうと日本人は考えるのです。つまり、優しい気配りができるということです。

そこで出てきたアイデアがサインレスでした。サインレスは業界の慣習を打ち破る画期的なアイデアで、他社からクレームがついたほどです。しかし、業界の慣習などお客様には関係がありません。顧客目線で考えれば、サインレスは当然の判断でした。しかも、カードであればポイントがつきます。

永久不滅ポイントの誕生

永久不滅ポイントも、顧客目線で浮かんできたイノベーションです。クレディセゾンのポイントは、200ポイントからさまざまな商品と交換が可能です。お客様の1年間の平均利用額は約27万円。27万円なら270ポイントが付与されるので、普通に利用していれば商品を交換するのに十分なポイントがたまることになります。

ただ、以前はポイントを交換する人がそれほど多くありませんでした。200ポイントで交換できるのは、もっとも下のランクの商品です。それぞれ単体で見れば魅力的な商品ですが、300ポイントのものと比べると見劣りがします。そのため「あともう少しで300ポイントだから」と交換を先延ばしにするお客様も多く、そのうちに有効期限を迎えてしまうのです。

かつてのカード業界には、お客様がポイントを無駄にするのを喜んでいる風潮がありました。お客様が交換を申し込めば、その商品のコストだけでなく、送料などのコストもかかります。もしお客様が交換を忘れれば、カード会社としては二重に負担が減るわけです。

だからといって、「今回は交換するお客様が少なかった」と喜んでいるようでは話になりません。もともと顧客満足のためのサービスなのですから、交換率が低ければ、それを嘆くべきなのです。

もっと顧客満足につながるやり方があるはずだ。その視点で検討を重ねた結果、永久不滅ポイントの導入を決めました。ポイントの有効期限をなくせば、お客様は期限を気にせずいつでも商品と交換できます。また、「それほど欲しくないが、期限が来たからとりあえず」というように、不本意な商品と交換する必要もない。好きなタイミングでいつでも好きな商品と交換できる点が、永久不滅ポイントの魅力です。

ポイントの期限をなくせば、新たな引当金が必要になります。これを用意するのは大変ですが、だからこそ他社は追随しにくく、差別化につながるという読みもありました。永久不滅ポイントはお客様に評判がよく、カード発行増に大きく貢献してくましたが、これに関しては、何でも模倣する同業他社もまだ追随してきません。マネしたくてもマネできないサービスを生み出したのです。

サインレスや永久不滅ポイントの例からわかるように、イノベーションのヒントは案外、身近なところに隠れています。それが見えないのは、発想が業界の慣習に縛られているからです。何ごとも角度を変えて見つめていく習慣が大切です。

顧客目線で自分たちのサービスを、あらゆる角度から見直してみましょう。そこにはきっと、他社を圧倒するイノベーションの種があるはずです。

参考本

「BQ〜次代を生き抜く新しい能力〜(林野宏)」

    
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