コカ・コーラとは真逆の戦略を取った伊右衛門の狙い

レシピ秘密厳守のコカ・コーラに対して、オープン・クローズ戦略で勝利した伊右衛門。ビジネス成功の裏に隠された頭脳戦をご紹介します。


石臼技術を堂々公開

私が調べた限り、サントリーは『伊右衛門』の製法について、「石臼で挽いて茶葉を微粉砕する技術」「微粉砕した茶葉を浮遊させる技術」といった技術の特許を出願しています。
この事実を知った当初は、「ライバルにパクられたとしても、その証拠は抑えづらいのだから、出願しないほうがよかったのではないか?」と、思いました。

特許出願もマーケティング

その思いは今もゼロではありませんが、さまざまな調査を行っていくうちに、少しずつ同社の狙いが分かってきました。
あくまで私の推測ですが、サントリーが特許出願した目的は「技術の模倣を防ぐ」ことではなく、「マーケティングの道具として活用すること」にあったように思うのです。

技術の裏を隠す戦略

たとえば「石臼で挽いて茶葉を微粉砕する技術」を使えば、『伊右衛門』の味を再現できるかというと、そう簡単にはいかないはずです。
家庭で入れるお茶だって、茶葉の量やお湯の温度、湯出しの時間などによって、まったく違う味になりますよね。
サントリーは「石臼挽きの茶葉を使うことは開示しても、その他の条件を示さなければ同じ味は誰にも作れない」と踏んだのではないかと思うようになりました。

リスクに勝る宣伝効果

そして、「石臼で挽いた茶葉」と聞いたとき、私たち消費者は「本格的だな」「なんとなくおいしそう」と思います。しかも「特許」です。特許出願のリスクをとってでも、消費者への宣伝効果が十分だと考えたのではないでしょうか。
数多ある緑茶飲料を押しのけて、後続ともいえる『伊右衛門』がこれだけのヒット商品となった事実を見ると、その選択は正しかったといえます。

特許で伊右衛門ブランドが確立

その後のニュースを見ると、トクホ(特定保険飲料)ジャンルにかなりの後続で参戦したにもかかわらず、伊右衛門のトクホバージョン『特茶』はそれまでの商品を押さえて、ヒット商品になっているそうです。
これも伊右衛門ブランドが消費者にしっかりと根づいている証拠。そして、「特許」というイメージ戦略がその要因として大きく貢献しているとはいえないでしょうか。
 絶対秘密のコカ・コーラ、オープン・クローズ戦略の伊右衛門。戦略は違えど、どちらも知財コミュニケーション力を賢く活用している。それがしっかりと商品力となっているのです。

 

【まとめ】

・サントリーの伊右衛門は特許でブランド力を高めた。
・技術の公開だけでは真似のできないオリジナリティがあったため。
・特許がイメージ戦略になり、大勝利。戦略がちがっても、大切なのは知財の価値を伝えて活かす、コミュニケーション力なのですね。

★ 参考図書『レシピ公開「伊右衛門」と絶対秘密「コカ・コーラ」、どっちが賢い?』
著者:新井信昭(あらい・のぶあき)

    
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