科学に進歩をもたらした統計学

みなさんおなじみの科学は「観察」と「実験」からなります。しかし、科学は統計学により領域が変化しました。今回は、科学に進歩をもたらした統計学の秘密に迫ります。


■科学の領域を変えた統計学

統計学が「最強の学問」となったのはその汎用性の高さ(政治、教育、経営、スポーツだろうが、最速で最善の答えを導けるところ)にあります。そうした統計学の汎用性は、どんなことの因果関係も科学的に検証可能な「ランダム化比較実験」によって大きく支えられています。フィッシャーが打ち立てたランダム化比較実験という方法論は、科学の領域そのものを変えたと言っても過言ではないのです。

■「観察」と「実験」

科学の方法論の重要な特徴は「観察と実験からなる」、としたアンリ・ポアンカレの言葉を紹介します。「観察」とは対象を詳細に見たり測定したりして、そこから何かの真実を明らかにする行為であす。一方、「実験」とは、さまざまに条件を変えたうえで対象を見たり測定したりしてそこから何らかの真実を明らかにする行為です。

観察にせよ実験にせよ、統計学は大きな力を発揮することに間違いないのですが、ランダム化比較実験という枠組みは、「実験とは何か」という考え方を一歩先へ進めたのです。フィッシャー以前にも素晴らしい実験はありました。たとえば医学においては、1628年にウイリアム・ハーヴェイが動物のさまざまな箇所にある血管を縛る、という実験を通して血液が心臓によって全身を循環していることを示しました。

彼の実験以前は、血液は肝臓で作られ人体各部で消費されると考えられていました。ハーヴェイに限らず、化学でも物理でも、素晴らしい実験のアイディアによって実証された法則や作り出されたものは数限りありません。しかし、フィッシャーのランダム化比較実験がなければ、人類は「誤差のある現象」を科学的に扱うことはできなかったのです。

■「誤差」と科学

血管を縛ればその先に血が流れる量が減るという現象は、言われてみれば小学生にだってわかる当たり前のことです。そこに誤差は存在しません。

こうした科学の方法論の特徴を理解したうえで、「どうすれば小麦の収穫量が上がるか」といったテーマに科学的に取り組もうとすれば、どうすればよいのでしょうか?

小麦の特徴や種類については世界中で農作業に携わる人々のほうがよく知っているでしょう。それに彼らはこれまでの経験上

「水はけが悪いと育たない」
「冬場に晴れの日が続くと豊作」

といったことも知っています。より収穫量をあげるために、いつ、どれだけ、どういう種類の肥料をあげればよいのか、という点についても経験や勘を持っているでしょう。しかし、こうした知見はフィッシャー以前には科学ではありませんでした。なぜならリンゴを落とせば加速しながら落下する、という現象ほど毎回同じようにうまくいくわけではないからです。細心の注意を払って肥料の配合を工夫した場合と、面倒くさがって肥料をあげなかった年を比較しても、たまたま後者のほうが天候に恵まれたために豊作になることもあります。また同じ年、同じように肥料をあげた畑の中でも、生育のよい麦とそれほどよくない麦の個体差は表れます。このようなものを「実験で正しい真実を確認する」といった科学の方法論で扱えるとは、フィッシャー以前の時代にはあまり考えられていなかったのです。

統計学が、科学に大きな進歩をもたらしました。データと統計学の大切さが理解できます。この機会に統計学を勉強してみてはいかがでしょうか?

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