「ビッグデータ」という言葉が流行る理由「統計解析の重要性」

ここ最近「ビッグデータ」という言葉がビジネス上で流行っています。一体なぜ「ビッグデータ」という言葉が流行ったのでしょうか?


■ビジネスのプロセスを変えたIT

ITはビジネスのプロセスの多くを変えました。商品の仕入れ、在庫、販売といった記録はほとんどすべて電子化され、コストや売上の把握は紙で管理していた時代よりもずいぶん簡単になりました。顧客のプロフィールや購買履歴も、従業員の勤務時間や評定、健康状態、支払った給料や精算した経費なども社内システムやエクセルシートの中に電子化されて蓄えられています。製造のための機械の動作も、自社のウェブサイトに対するアクセスも、ほとんどのログは記録され、必要であれば集計して経営の参考にすることができます。主要な会社のほとんどの業務プロセスは、すべて電子化済みであるといっても過言ではありません。

■行き詰まるITビジネス

しかし、一通りの業務がIT化されてしまうと、ITがらみのビジネスは行き詰ってしまいます。いくらハードウェアやソフトウェアの処理性能が向上しても、これ以上IT化すべき業務プロセスはないし、顧客が特に性能に不満を持たなければ、商品を売り込むことはできません。だから、ハードウェアメーカーも、ソフトウェアメーカーも、それらを使ってITのサービスを提供しようとする者も、ITに関わる企業はすべて、すでに満足している顧客に、十分すぎる性能を持った新しい技術を売り込む「理由」が必要なのです。

■流行り言葉でしかない「ビッグデータ」

ポジティブな「理由」としては、この十分すぎる性能を使って「いかに価値を産み出すか」という考え方が必要になります。またネガティブな本音の「理由」としては「価値を生み出そうがなんだろうが、大量の処理が必要になる使い道」を提案しなければならないし、それを売り込むためには「一見ビジネスの役に立ちそうなお題目」が必要になります。どんな大量のデータでも、どんな計算でもできる技術ができた今、何を計算すべきかと考えると、統計解析以外にはありえません。そしてもし「統計解析」という地味な言葉が魅力的でないのならば、「ビッグデータ」や「ビジネスインテリジェンス」といった流行り言葉を生み出せばいいのです。

うした流行り言葉と統計学への注目が高まっているのは、そういう理由と考えることができます。長年IT業界の巨人であり、フラミンガム研究をパンチカードや大型計算機の時代から支えたIBMの動きは、その中でも顕著です。IBMはビジネスインテリジェンスで有名なCognos社や、統計解析ソフトウェアのSPSS社など、この分野においてノウハウとブランド力を持った企業を時に数十億ドルといった巨額をかけて買収しました。2005年から2011年にかけて統計学やビジネスインテリジェンスがらみの企業に対して投じた資金は140億ドル以上と言われています。

■マイクロソフトもビッグデータに注力している

マイクロソフトも、データベースで有名なオラクル、NTTデータも、統計学やビジネスインテリジェンス関係の企業買収を積極的に進めています。次の時代に自らのビジネス領域において価値を産み出す主流が、こうした「知恵」の中にあると戦略的に判断しているのではないでしょうか。特にマイクロソフトは、テクノロジー分野で最も熱い専門性として、「機械学習」、「人工知能」、「ビジネスインテリジェンス」、「A/Bテスト」などをあげています。

人間の認知機能を再現するためのアルゴリズムの研究として始まった機械学習や人工知能という分野は、今や統計学の基礎理論抜きで学ぶことは困難になっているし、ビジネスインテリジェンスは統計学のビジネス領域への応用です。A/Bテストの計画において必要とされるのも、20世紀前半に現代統計学の父ロナルド・A・フィッシャーによって完成された実験計画法と呼ばれる統計学の一分野に関する知識が基礎となるからです。解析はそれ自体価値があるものではなく、それを活かして何を行ない、どれだけの価値を得られそうなのかによって異なるのです。

このようにITビジネスの進化により「ビッグデータ」という言葉が作られ、流行するになったのです。統計解析の重要性を考えてみてはいかがでしょうか?

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