即戦力の罠! 中途採用でよくある3つの失敗例

中途採用する社員には、即戦力として過剰な期待を持つ企業が多いです。しかし、中途採用で即戦力な社員を採用できることは少ないんです。中途採用で代表的な失敗例を3つ紹介します。


即戦力の罠1. 「クレーム体質は再発する!」

まず、一つ目は「会社への不満は再発する」ということです。本来、年功序列型の日本の職場では、社員に対し、年齢に応じて徐々に難しい仕事を与えていくということが当たり前におこなわれてきました。

パートや派遣社員などの非正規社員であれば、毎年同じ仕事を続けることもありますが、毎年賃金が上がっていく正社員である以上は、その付加価値が毎年上がっていくことが前提になっているからです。そしてそこで成長しながら、主任、係長、課長……というように社内における立場も上がっていったわけです。

当然その過程において、誰でもどこかの段階で壁にあたり、「仕事がうまくいかない」「上司から評価されない」という悩みを持つはずです。ステップアップしていく階段の踊り場は必ずやってくるからです。

このような状況に陥ったとき、それを上司や環境、お客様などのせいにしてしまう人がいます。こういったクレーム体質をもった人のことを「他責体質」と呼びますが、企業が「即戦力」として期待をかけがちな転職希望者の多くには、その傾向が見られます。

実際、転職活動経験者の90%近くが、「前職に対する不安や不満を持っている」というデータがあります。彼らは、前職で何かに行き詰まったときに、それを「自責」で考えることができず、「他責」で捉えてしまったということです。つまり、自分が苦しんでいるのは、「上司が悪い」「会社が悪い」「顧客が悪い」と、人や環境のせいにしてしまうのです。

しかし、そういう考えを発端として別の会社に転職したとしても、移った先の会社でも当然同じ壁は存在します。こうした壁を自責発想で乗り越えられなかった人は、そこで前回と同じように人や環境のせいにしてしまう可能性がとても高いのです。いわば、他責体質の再発です。

人が何かの壁にぶつかったとき、「自責」で捉えるか「他責」で捉えるかは、その人の人間性が強く影響します。そのため、たとえ転職して場所を移したとしても、それはかなりの確率で再発してしまうのです。

壁にぶつかったときに自責で考えられる人は、どうしたらこの壁を克服できるかと考え、そもそも人や環境のせいだという発想を持つことがないものです。反対に、他責で考える人というのは自分がかわいいため、自らの課題を振り返ろうとする発想すらありません。

「自分が恥を搔きたくない」「低い評価に耐えられない」「同期のあいつだけには負けたくない」というように、事あるごとにプライドが顔をのぞかせてしまい、素直に反省すべきところで反省できなくなれば、その時点で成長がストップしてしまいます。

即戦力の罠2. 「前職の成功が成長を妨げる」

二つ目は、「前職における成功体験は長くは通用しない」ことです。中途採用の面接では、「前職でこのような成果を残してきました」という堂々たる自己PRをする人がいます。そしてそれを聞いた面接官が、「そのような成果を出せたのならうちの会社でも大丈夫だろう」と楽観的に想像を膨らませ、採用してしまうというのもよくある話です。

自分の過去の実績を高く評価する人は、疑うようにしましょう。なぜなら、伸びる人というのはみな、過去の実績に対する自己評価はむしろ厳しいものだからです。それは「もっと良くできるはず」とどんどん新しいチャレンジをしていく向上心のあらわれなのです。

向上心のある人にとって、過去の実績はそれほど意味をもちません。過去の成功体験よりも将来の成長に関心があり、どんどん新しいチャレンジをしていくからです。それに対し向上心のない人は、過去に大きな成功体験があれば、いつまでもそれにしがみつきがちです。

変化が激しく先の見えにくい今日において、組織のリーダーに求められるのは変化に対して前向きに取り組み、何らかの成果を生み出す「変化対応力」です。ですから、過去の成功体験にしがみつき、いつまでも過去だけを見て生きている「現状維持」型の人には生きにくい時代だといえます。

また、過去のキャリアだけをアピールしてくる人というのは、往々にして将来に目が向いていないので、そこからの変化に対応し、伸びていく伸びしろがあるとは考えにくいのです。「賞味期限付き」だと割り切って、ある期間、一定の業務をしてもらおうと考えるなら問題はありません。ですが、その人が成長を続けて、組織を率いるリーダーに成長していく可能性があるかといえば、それはまた別な話です。

「自分はこんなことができる」「あんなことをしてきた」と盛んに売り込んでくる人より、むしろ話の内容が地味だったとしても「こういう失敗からこういうことを学びました」「自分はこういうことをやりたいと思っているのですが、そのために必要な経験もスキルもまだまだ足りません」と自然体で話せる人の方が、「伸びしろ」は大きいはずです。採用では、過去を見ている人よりも、高い視点で未来を見ている人を選びたいものです。

即戦力の罠3. 社風とのミスマッチ

三つ目は、「価値観のミスマッチ」です。会社の「風土」や仕事の進め方、価値観などといったものは、一般に思われている以上に、その会社の中で影響力をもっているものです。

そのため、転職者の価値観が入社した会社の社風とぴったりと合うことは稀で、多くの場合、互いに違和感を感じながら仕事を始めることになります。会社ごとにそうした価値観の違いは当然あるものです。そのためこれは我慢と慣れの世界であり、時間が解決する以外ありません。

たとえば、ビジネスにおいてお客様の信頼感と目先の収益のどちらを優先するかという問題があります。それに関していえば、「お客様第一」「とことん利益追求」というように、単純に二つに割り切れるものではありません。どこまでお客様のことを考えて、どこまで利益を求めるかという部分では、ギリギリの判断が求められてきます。こうした判断に影響を及ぼすのが、会社ごとの「社風」です。

会社が変われば、仕事の作法や業務の流れの部分でも当然違いが出てきます。社会に出て最初に教わった仕事のやり方というのは、本人が思っている以上に体に染みついているものです。そのため、転職先の会社で仕事の考え方ややり方が違えば、それに悩んだり、やりづらさや窮屈さを覚えることがあるでしょう。これまで当たり前だと思っていたことが通じないわけですから、あまりに大きな価値観のギャップに直面し、愕然とすることも珍しくはないはずです。

価値観の違いは、頭ではすぐに理解できても、本当の意味で理解するまでに時間がかかります。マッチング度合いやコミュニケーションの頻度、濃度によって、それに要する時間も左右されますが、ある程度のギャップを埋めるためには2年、3年、あるいはそれ以上の時間を要するほどです。

そうしたマッチング過程においても、良い関係を築けず、互いに苦労が続きます。そして、それに我慢ができなくなった中途採用社員が再び会社を辞めてしまう、というケースはよくあることです。

とくに幹部候補生として入社し、マネジメントチームに入ったときなどは、最初から激しい価値観のぶつかり合いになります。顧客の問題、収益の問題、社員の問題…そうした問題で何をどれだけ優先するのかを議論し、それを突き詰めていくのがマネジメントチームの役割だからです。

ですから中途採用でそこに飛び込んだ場合には、価値観のすれ違いは当然大きくなります。「新しい風を吹き込む」という言い方もできますが、現実はそんなにうまくいきません。ギャップの大きさを目の当たりにして、すぐに離職する人も少なくありません。

中途採用の場合は、新卒採用に比べ入社以前に互いの価値観を確認し合うための時間がどうしても短くなってしまうので、こうした問題は常に起こりがちです。

中途採用でよくある3つの失敗例を紹介しました。即戦力になるかどうかは厳しく面接でチェックすることが大切です。

参考本

「即戦力は3年もたない 組織を強くする採用と人事(樋口弘和)」

    
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