文壇、文人とは何か?

出版不況であるといわれて久しいですが、かつて出版はメディアの王道でした。そこでは多くの雑誌が創刊され、執筆者も多くいました。さらに、現在ではマイナーなジャンルとなってしまった文芸誌も、王道のメディアとして存在していました。


文壇人とは何か?

そうしたメディアに評論などの文章を寄稿する人たちは、文壇人と呼ばれていました。文壇人たちがこの社会からいなくなって久しいですが、坪内祐三の『右であれ左であれ、思想はネットでは伝わらない。』(幻戯書房)は、そんな文壇人たちのカタログというべき本です。著者が、物心ついたころから読んできた文壇人たちのテキストと、その人となりを解説しています。戦前に生まれ戦中を過ごし、戦後に中高年となっていった彼らが何を語ったのか、そして、それを若き日の坪内はどう感じ取っていたのか、言葉と思考の往還が感じ取れる本です。

最後の評論集

あとがきにおいて著者はこれが三冊目の評論集であると記しています。それと同時に最後の評論集にもなるだろうと記しています。ワンテーマの書き下ろしではなく、いろんな雑誌に書き続けてきた文章をまとめて一冊の本にする行為は、かつては当たり前に存在するものでした。しかし、いまはある程度のまとまった文章を書けるメディアがまず存在しません。さらに前回に評論集を出せたのは10年以上前となるので、自分の現在の年齢を考えれば次はないと考えているかもしれません。そうした言葉ひとつからしてみても、出版というメディアが大きく変わりつつあり、かつてのような世界はもう二度と戻ってこないのだと感じられます。

    
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