収入額は遺伝子と関係するか。

行動遺伝学の研究によって、職業選択、勉強への意欲、離婚、殺人などは、少なくとも25%の遺伝の影響が報告されています。収入もそのひとつ。世界のいくつかの国で収入にどのくらい遺伝子が影響しているかの調査が行われています。ただし、人の行動は遺伝の影響を受けてはいますが、「遺伝によって全て決まってしまう」わけではありません。環境によっても遺伝子の表れ方も違います。


アメリカの研究

アメリカではきょうだいと、異母きょうだいもしくは異父きょうだいの比較によって調査が行われています。遺伝的により近いきょうだいが、育った環境は同じである異母きょうだいもしくは異父きょうだいよりも類似性があるかどうかを調べています。調査の結果、収入の42%が遺伝で説明されました。遺伝要因とは別に、同じ環境にいるメンバーを類似させる共有環境の影響は8%、同じ環境にいるメンバーをひとりひとり異ならせるような非共有環境の影響は50%でした。

スウェーデンの研究

スウェーデンでは双生児ときょうだいの膨大なサンプルで調査が行われました。収入への遺伝の影響は多めに見積もって30%、少なく見積もって20%という結果でした。残りのほとんどの影響は、非共有環境が占めていたそうです。

偶然か遺伝子か

2つの調査結果からは収入の遺伝による影響は20-40%であることが分かりました。この結果からは、収入が遺伝だけでない偶然の要素に大きく支配されているとも言えます。ただし、どのような仕事を選び、どのような働きぶりをして、その過程でどのような人とつながっていくか、どのようなチャンスをつかむかは遺伝子の影響を受けていて、このことが結果として遺伝が20-40%の範囲で収入に影響を及ぼしていると考えられています。

教育投資が収入に与える効果は?

一卵性双生児の中で学歴の異なるペアを比較した研究があります。一卵性双生児は遺伝要因が同じで、育った環境も同じです。家庭環境と遺伝子が同じ場合、学歴が違うことで、どのくらい収入に影響があるかを調べています。1998年にアメリカで調査が行われ、2000年にはオーストラリアで別の調査が行われました。いずれの調査も「教育的投資を行うことによる見返りは10%」という結果が出ました。同じ遺伝子を持つ人間でも、より上級の教育を受けることにより、有意(10%程度)な収入のアップを期待できることが分かりました。

遺伝によって収入額が決まるわけではありませんが、遺伝的に知能の高い人が高学歴を得やすく、また、遺伝的に高い学歴を得やすい人が高い収入を得やすいという社会構造になっていることは否定できません。特定の遺伝の優劣だけで、人を評価する社会も変えていかなければならないのかもしれません。

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