ホントにこのままじゃ死んじゃいます!スタントマンが話す危険マル秘ウラ話!(1)

深作欣二監督の映画《蒲田行進曲》で一躍世間に知られたスタントマンの世界。
最近では、唐沢寿明の《イン・ザ・ヒーロー》というベテランスタントマンの活躍を描いた映画も作られた。
スタントマンとは、危険なアクションシーンなどを演じる俳優の代わりに要求される特殊なシーンを演じる職業。
例えば、危険なカーアクションシーンや海に飛び込むシーン、火に包まれるシーンなど、秀でた反射神経と運動能力、高い運転技術などを必要とする仕事だ。

では、珍重され、大切に扱われるか? 答えはNO。内情は実にヒドいもので、現場では汁男優並みのエキストラ扱い。
待遇も悪く、監督のひと声でさらに危険なシーンに挑むこともしばしばだ。
今回は、死と隣あわせで体を酷使するスタントマン・西川さん(仮名/32歳)に、誰からも決して労われることはないというその仕事ぶりを話してもらった。


鬼教官のしごきに耐えることが第一歩

高校を卒業したオレは無類のジャッキーチェンマニアだった。
彼に会いたいという一心でハリウッドのアクションスターを夢見て、アクション俳優の養成所に入った。
募集は13歳から25歳までの男女。資格や学歴などは不問で年に2度のオーディション(審査料金1万円)を通過すれば、研修生になれる。

「おまえは何言っとるんや! ゴラァァ!」
「絶対に大スターになるから! なんとか、金、出してください!」

50万弱の入所費用とレッスン料は、さすがに大金だ。もちろん自分で支払うことなどできないし、そんな金、どこの消費者金融に行っても借りられるはずはない。
泣く泣くオレは、親に頭を下げて出してもらった。渋々了承してくれた親だが、それ以来、まともに口も利いてもらえなくなった。
カリキュラムとスタントマンとしての訓練は、股割りからはじまり、マット運動やアクション演技、
ジャズダンス、カンフー武術、少林寺拳法、時代劇の殺陣、乗馬、スキー、スノーボードまで幅広く勉強する。

「こら! そんなことで一流のスタントマンになれると思ってんのか!」
「はい! すんません!」
「よし! そのままヒンズースクワット200回!」
「はい! 先生、300回でお願いしますぅぅ~!」

鬼のような教官に毎日、体力の限界までしごかれるのだが、体づくりと精神力の鍛錬のためだ。仕方がない。

レッスン料を稼ぐためにバイトしながら養成所に通う日々。3年後、死ぬ思いでやっと卒業した後は、スタントマン専門のプロダクションに所属することができた。
各大手プロダクションが行っている採用試験を受けて、採用されれば入ることができるのだが、中々の難関。
目立ったり、注目されたりするために、自分出演の短編映画を作ったりする連中もいる。
オレもご多分に漏れず、悪の帝国にさらわれた姫をカンフーで助けるという荒唐無稽な、ジャッキーチェンの足元にも及ばないアクションVTRをこしらえて持ち込んだ。

もちろん他にも、スタントマンになる手はある。
活躍しているプロスタントマンに弟子入りしたり、スタントマン専門のプロダクションのスタッフからスタントマンになったり、とプロの世界へのパイプ作りは様々だ。
そして、オレが合格し、所属したのが弱小スタントマン事務所『R』。
日本のハリウッドと言われる地元の東映太秦映画村などの仕事が多く、通勤にも便利だからだ。
そこから、能力に応じて仕事が与えられ、スタントマンとして活躍できる……と思っていた。しかし、現場はそう甘くはなかった。

スタントマンは原則保険には入れない

初仕事は、時代劇スペシャルの斬られ役。馬が引く車に撥ねられるという役柄だ。

「今日が初めてなんだって?」
「ええ、そうなんです。もう緊張してしもうて……」
「まぁ、大丈夫や。肩の力抜いていこう」

大部屋俳優の年輩から、あたたかい言葉をかけてもらって本番に臨むが、夏なのにクーラーひとつなく大部屋の控え室に入れられ、経費削減を叫ぶ助監督に嫌味を言われながら300円のマズい弁当を食う。着物はすぐに汗でびっしょりと濡れた。日雇い労働者の飯場よりもヒドい扱いだ。

「押してるぞ、早く来いよ、スタント!」

現場は、ベテラン俳優の機嫌が悪いらしく、ピリピリと空気が張りつめている。嫌やなぁ~、こういう雰囲気。初現場がこれかよ……。
極力NGが出ないようにスタッフが気を遣いながら撮影は進む。主役に職場放棄でもされたら、作品自体がオジャンだ。

「よ~い! アクション!!」

カチンコの音が撮影現場に鳴り響き、カメラが回る。時速50キロほどで砂を蹴りながら激走してくる馬車。
危険を伴う職業であるためにスタントマンの保険への加入は基本的に拒否される。なんの保証もないまま、演技をしなければならない。
しかも相手は動物、どんなハプニングがあってもおかしくない。

オレは中に全身にプロテクターを装着したサムライ姿で定位置に立ち、ギリギリで躱してはじき飛ばされる演技をしようと待った。ヘタをすれば、マジで死ぬ。こ、怖ぁ~!!

(丸野裕行)

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