大物俳優の一言で後遺障害が!スタントマンが話す危険マル秘ウラ話!(2)

アメリカ映画ではCG技術などの進歩でスタントマンもお払い箱になる中、邦画界で未だに重要な役柄、重要なシーンを担うのがスタントマンという縁の下の力持ち的職業。
時と場合によっては、死と隣り合わせの職業でも、スタントマン志願者は後を絶たないという。
前回に引き続き、過酷なスタントマンの経験と裏話を、現役スタントマン・西川さん(仮名/32歳)に語ってもらった。


火だるまになってギャラ100万円

【ドドドッ、ドドドッ!!】
正面から逸れ、そばを走り抜けるデカイ馬。段取り通りの動きだ。轢かれたフリで同時に横へ飛ぶ。地べたに這いつくばるオレ。
よっしゃ~! 思わずガッツポーズが出そうになる。背中と後頭部を強打したが、なんとか無傷でいい演技ができた。
これくらいなら、この商売、やっていけるかもしれない。そんな自信が少し顔をのぞかせた。……が、しかし。

「カット! カットぉぉ~!」
「オイ~!! なにやってんだ!! てめぇちゃんと轢かれろよ!!」
「一旦、カメラ止めますぅ~」

オレは耳を疑った。カメラを通すとなんだかリアルじゃないと言う理由で、打ち合わせとは違うことを怒鳴る監督。
轢かれたフリをする、という話だったはずだし、あんな馬にまともにぶつかったら、軽い怪我だけでは済まない。ひょっとすると、あの世行きってこともあるかもしれない。
オレが助監督に抗議していたとき、助監督にむかって1人の女が手をあげた。2年先輩のスタントウーマンだ。

「私、やりましょうか?」
「やりましょうかって、キミ、馬に轢かれた経験は?」
「馬はないですけど、牛ならあります」
「君、いいねぇ~。合格! ダメだ、この男のスタントマンは。もう帰っていいよ」

はぁ? なんやねんそれ。死ねって言うてるようなもんやんけ! 事務所に電話を入れると、そんな仕事を受ける必要はないということで事なきを得た。

オレは彼女がどうするのか、最後まで見守っていたのだが、命知らずというか、捨て鉢すぎるスタントだ。
引きの場面なので、女でもバレないサムライ役なのだが、彼女は意気揚々と馬車の前に立ちふさがった。
近づく、50メートル、30メートル、10メートル……あっヤバい! 案の定、彼女は馬の強靭な前足に巻き込まれ病院に運ばれた。
奇跡的に鎖骨骨折済んだそうだが、ギャラは4万円。

夜の海に飛び込んで3万円、階段を転げ落ちて5万円、火ダルマになって100万円。
何の保証もないまま、スタントマンは危険の中に全身で飛び込む。
危険度と経験×回数によって収入が決まる。何とかスターになりたいという弱い立場を利用されるときもある。メチャクチャなスタントマン業界だ。

大物俳優の一言でスタントマンが半身不随に

それから、オレはプロスタントマンとして、乱闘シーンや橋からのダイブ、車にひかれる役などスタントの素人であるスターの代わりに危険なアクションを精力的に行った。
依頼が入れば風邪を引いていてもムリに現場に向かう。
それもこれもスタントシーンは定期的にあるものではないため、数少ない収入源を人に渡したくないのだ。
それに、トレーニングは毎日欠かせない。人並み外れた体力と集中力と精神力を維持するためにだ。脱臼16回、骨折12回、傷を縫ったのは100針ではきかない。

死と隣あわせと言ったが、先輩スタントマンが到底ムリなスタントを強要されて、後遺症を負ったり、死んだりするケースも後を絶たない。
毒舌で有名な監督に重量9キロの鎧を着せられて滝つぼに落とされ俳優が死んだ『東方見聞録』や真剣でスタントマンを殺傷した『座頭市』などがそうだ。
オレがスタントマンをはじめて4年近くが経った頃、事件は起こった。

アクション大作『H』という映画の撮影に参加していたオレと先輩スタントマン・金田(仮名/当時31才)は、主人公とテロリストの役を任された。
2人とも、求められたとおり、俳優と大差のない体作りをして体調も万全で望んだが、出演者のOが脚本にケチをつけ、アクションシーンが追加された。

「もうちょっと、格闘シーン増やした方がオモシロいんじゃない?」
「でも、準備ができてないから危険ですよ。Oさんにケガでもあったら……」
「オレがやるわけないじゃない。スタントマンにやらせろよ!」

スタッフは、機嫌を損ねないようにアクションシーンを追加。
明らかに危険とわかる雪に覆われた山で、オレと金田は格闘シーンに臨んだ。

「気をつけてやりましょう。こんなトコでケガなんてバカバカしいじゃないですか!」
「足元気をつけろよ、西川!」

2人で取っ組み合いを演じていると、金田が気を抜いたと、わかった瞬間。

「アッ!!」
【ズルズルズルズル…】
「金田さ~ん!!」

30度ほどの斜面を転げ落ちる金田。手足がおかしな方向に折れ曲がって、明らかに全身骨折してる。

30メートル下までずり落ちた金田へスタッフが吹雪の中を駆けつけてきたが、ときすでに遅し。
脚の指を凍傷で欠損し、頚椎骨折で彼は半身不随になってしまった。
大作映画を製作しているテレビ局と映画会社は、スキャンダルをもみ消すために金田に3千万の慰謝料を払い、無事に公開にこぎつけた。
だが、半身不随になった金田は酒に溺れ、今では何をしているか不明だ。

オレはスタントマンに対してこんな待遇の日本映画を何とか変えたい、と自分で監督をして映画を撮ることを目指している。
普段、映画の中で当たり前のように目にしているアクションシーン、少しオレたちのことを意識して観てやってほしい。

(丸野裕行)

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