箸の棒にもかからない珍発明ばかりにてんやわんや!『特許取得代行屋』

発明ブームを作った『王様のアイデア』が全閉店したのは数年前のこと。
彼らが残したとんでもない功罪は、発明の楽しさと勘違い発明王を作り出してしまったことだ。
特許をとり、使用権で億万長者に…。そんな見果てぬ夢を追い求める自称・日本のエジソンたちが日本には数多くいる。
しかしそのほとんどが箸の棒にもかからないクズ発明ばかり。

しかし発明者は、自信満々に「これは世紀の大発明!」と力説する。彼らの口ぐせは「発光ダイオードのこともあるし…」。
国際特許事務所(特許手続きを行う代行屋)に勤務するオレが出会った仰天ビックリ発明品の数々。
今回は、そんな特許代行屋のNさんの元を訪れる発明者たちのことをお話ししたい。
毎日繰り広げられる自意識過剰な時代に大増殖したバカ発明者たちとの騒動とは…。


発明の意図も説明できない依頼者

平成16年春、オレは国家試験に合格して弁理士になり、スタッフ13名の中規模特許事務所に入所した。
この職業を選んだ理由は、独立すれば儲かるから。
特許取得の代理を行ったりする“弁理士”は特許庁において権利を保護するのが仕事。
しかし、特許を取るには、ハードルの高い特許要件を満たすことが重要だ。

そのために発明品の本質を理解して法律的・技術的な知識を使ってムリヤリ付加価値をでっち上げるのが特許事務所の役割なのだ。
発明という抽象を文章に表現しなければならないのでその苦労は計り知れない。
その後に起こるかもしれない侵害訴訟などの裁判で、その“発明明細書”が有利にも不利にもなるのだ。

また外国に出願する場合も多いため、語学力も必要になる。やたらめったらに細かくて、気難しい仕事なのだ。
仕事は9時。ホームページや紹介でやってきた客の知財担当者から受け取った“発明提案書”の内容を出願すべきかどうか審査、
特許の可能性を検討し、打ち合わせ。

特許技術スタッフや図面担当者、事務担当と入念な打ち合わせをし、すべての関連書類を作成して特許庁に提出する。
仕事の4割企業向けでキチンと金になるが、6割はどうにもならないものばかりだ。
出社早々、週1回火曜日の朝かかってくる電話は、通称・西成のアインシュタインから。

「おいコラ、実用新案で出願したいんやけど…」

 酒臭さが受話器から漂ってきそうないつもの声。

「はぁ…どんなもんです?」
「健康サンダルの先っちょにカメラつけて、自販機の下の小銭を瞬時に発見できる、その名も『カメラで¥結び』や!」
「それ、誰が買うんですか?」
「そりゃ、西成の連中やったらナンボでも買いよるで! しゃがんで探すことないんやで~!!」

んな、マイノリティーな…。企業案件は、実用化も可能なよく練られた発明ばかりだが、個人相談はただの思いつきだけでしかない。コレがあれば…と発明構想しても既製商品として世に出ていることもある。
特許出願基本手数料や図面代、印紙代など含めて、25万円也。その他、成功報酬などかなりの金がかかる。高い料金を支払っても、印税生活がしたいという発明者ばかりだ。果たして、いつものホームレス発明家は初期費用を支払えるのか疑問である。

メールや電話だけでなく、特許事務所に、発明品の数々を送ってくることも多い。

  1. 顎の下にペットボトルを装着してハンズフリーでジュースが飲める『楽チンIN(飲)』
  2. 寝たまま小便ができる『男性介護用放尿スキン』
  3. 危険から身を守るために製作されたステンレス製ロングコート
  4. 熱い食べ物を瞬時に冷やすプラスチック氷嚢茶碗

その他、金持ちにニセモノブラックカードなどなど、特許庁に送れば代行資格剥奪必至のどうしようもないガラクタこの上ない。
要するに時間の無駄なのだが、無碍にもできずに相手にしなければならない。

NASAに持っていけば売れる!

困るは、直接やってくるケースだ。
30分5千円の相談料を取るが、ずっと話しにつき合っていると精神的にとことん参ってしまうことがほとんど。
来客室に無理やり通り、どっかりと居座る依頼者も多い。圧倒的に多いのは、生活の知恵をビジネスチャンスに変えようとしている主婦層だ。

「ワタシ、洗濯ネットを発明した主婦みたいに稼ぎたいんです!」

未知の生物でも発見したかのように、大仰にオフィスに飛び込んでくる50代のオバサン。

「はぁ…それはわかりました。で、案件のお話を…」

彼女が持ちだしたのは、夜中に徘徊する認知症の老人を手すりなどに犬のように繋ぎ止めておくゴムの鍵付ベルト。

「うちのあの早く死ねばいいクソジジイもこれで行方不明にならなくなったんですのよ! ねっ、高齢化社会の必需品でしょ?」

どんだけ後ろ向きやねん!しかも私情挟みすぎだし!!

極めつけの依頼者は、来客室で腕を組み、波平みたいな神妙な顔。長い白髪と髭。どう見ても仙人かライフスペースの教祖のようだ。

「うむ。これは、温暖化の地球を救う最終兵器。これはぜひ特許を取っておかねば…」

オヤジが取り出したのは、紙の上をミミズが這ったようなイメージ図。地球、月、電器、ビリビリ…そんな言葉が書き込んである。

なんと、地球の自転を利用してオルゴールのネジを巻く要領で膨大なエネルギーを発電しようという宇宙規模の一大プロジェクトだった。

「エネルギー論、発電論で特許を取れると思う! NASAがすぐに目をつけるかもしれん! パクられんうちに早く!!」

そんなもんパクれるか!
確かに儲かる商売だが、誰かこの連中が寄りつかない装置を発明してもらえないだろうか。

(丸野裕行)

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