成功した会社の経営戦略を真似すれば成功するの? 単純そうな成功の要因ほど複雑というビジネスの罠

スターバックス、サウスウエスト航空など成功している会社は、どのように競争優位を生み出しているのでしょうか。ビジネス書やアナリストが様々な競争優位点を指摘しています。そして、このポイントを真似すれば成功すると自身満々に言うでしょう。しかし、よくわからないまま真似をすると、とんでもないことが起こります。成功した会社の経営戦略を真似すれば本当に成功できるのでしょうか? 単純そうな成功の要因ほど複雑というビジネスの罠について紹介します。


地域の特性に合わせるという嘘

海外市場に進出するには、その地域の特性に合わせることが大切です。しかし、地域の状況に対して、不適切な製品を出したり、ビジネスのやり方が合わなかったり、企業や製品の名前がおかしいというケースはたくさん存在します。

ユナイテッド航空は白い花を乗客に配ることで有名でした。そして香港からのフライトでも花を配ったのだが、白い花は香港では死や不運を意味していました。

インドのMPビーンプロダクツは、東アジアの地域では幸運を意味する「まんじ」のシンボルを、インドで販売される全製品に付けていました。しかしそのシンボルは、ナチスを想起させる鉤十字でもあり、ドイツビールの販売を始めたときにはトラブルを起こしました。

近畿日本ツーリストは、海外でビジネスを展開したときに、望んでもいない客層が集まってしまう危険に直面しました。近畿(Kinki)は、英語でのKinky(奇妙な、異常なの意味)を想起させてしまうからです。

コカ・コーラは1920年代に中国市場に進出したが、失敗に終わりました。「コカ・コーラ」という読み方を、中国の漢字に当てはめて販売したのです。しかし、後になってわかったのは、その中国の漢字の当て字の意味は、「ロウのオタマジャクシを食べろ」という、なんとも飲み物としては魅力のない響きだったのです。

さらに昔、イギリスの東インド会社が1857年にインドでの市場を完全に失いそうになった出来事もあります。東インド会社は、インドの兵士にブタの油が塗られた薬莢に入った銃弾を提供していました。その銃弾は発射する前に薬莢の先端を嚙み切ってから使うものです。インドの兵士にとっては、ブタを口にするのは宗教的に許されない問題で、兵士たちは戦闘意欲を大きく失ってしまったのです。

このように、他の地域でやっていたことを、そのまま実行するのではなく、地域の特性を踏まえて形を変えなければいけません。しかし、地域の状況に完全に合わせれば、成功するというほどビジネスは簡単ではありません。

単純そうな成功の要因ほど複雑

企業組織やビジネスモデルというものは、非常に複雑な仕組みであり、目に見えるものも見えないものも含めて多くの要素が絡んでいます。そして、何が成功の要因だったのか、きちんと理解することは、なかなかできません。その会社の人ですら、なんで会社が成功したのかがわかっていなかったりします。

サウスウエスト空港の成功の理由は?

サウスウエスト航空が、成功したのは、迅速な輸送、プロセスの標準化、資材、飛行機の機体、強い企業文化、リーダーシップ、採用プロセスなどが理由だと言われていますが、どれが本当の成功の要因でしょう? 結局はよくわからないのです。ここに挙げたものだけでなく、多くのものが組み合わさった結果、成功したと言えるのです。

スターバックスの成功の理由は?

スターバックスの大きな成功は、コーヒーの品質、従業員の教育、お店のレイアウト、コーヒーを作るプロセス、雰囲気など、どれが成功の理由でしょうか? これらの要素が関係し合って、競争優位性を生み出しているとしか言えません。

このように複雑なシステムがあると、2つや3つの要素を変えただけで、何が起こるかがわからなくなります。すべての要素が関係し合っていて、予想もしていなかったような形で全体がダメになってしまうかもしれません。絡み合っている状況を解読し、理解することなんてできないのです。

完全にコピーしないと成功できない

INSEADのガブリエル・シュランスキー教授とウォートン・ビジネススクールのシドニー・ウィンター教授は、完全な「コピー」を推奨しています。地域の特性に合わせるのではなく、初めは持っているものを完全にコピーします。それで、そこそこうまくいくようなら、それから1つずつ時間をかけて、地域の状況に合わせていくのです。

スターバックスも実はコピーから始まっています。創業者であるハワード・シュルツがイタリア風のエスプレッソバール(喫茶店)を完全にコピーして作ったのがスターバックスの始まりだからです。

シアトルで創業した第1号店は、エスプレッソバールのようでした。椅子もなくスタンディングバーだけで、全脂肪牛乳を使い、オペラが店内に流れ、蝶ネクタイを付けたウェイターがいました。ハワードは、これは結構いけるとわかってから、次第に店を変えていったのです。ゆっくり1つずつ、試行錯誤を繰り返しました。もしハワードが初めから地元の状況に合わせて店を作っていたら、うまくいかなかったかもしれません。

最初は地域の特性になんか合わせるな!

「コピー」するときのポイントは、地域の特性に合わせることではなく、むしろ初めは合わせないことです。地元の状況に完全に合わせることはしません。注意深くゆっくりと、あとから変えていけばいいのです。まずは完全にコピーし、なんとか地域でも受け入れられるくらいにはうまくやり、それからゆっくりと変化を加えていきます。最後には、ローマにある本当のコーヒーバールとは劇的に違うコーヒー屋「スターバックス」が出来上がったのです。

成功した会社の経営戦略を真似すれば成功するなんてビジネスの嘘です。単純そうな成功の要因ほど複雑で見えにくいものなのです。

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