経営戦略に数字は必要なのか? もっともらしい経営戦略の嘘

人なぜ経営戦略を語るときに数字を求めるのでしょうか。そもそも経営戦略とは、長期的な課題、不透明性、不確実性に対処するために存在します。しかし、実際はこのような状況では数字はうまく計算できず、無理に計算したところで信頼性が低く誤解を生む可能性があるものになってしまうのです。経営戦略に数字は本当に必要なのでしょうか?


■経営者を安心させるための数字?

先行きの不透明さが増せば増すほど、経営者はよりいっそう数字を見たがるようになるものです。不確実性が高い状況での長期的な経営戦略投資決定は、経営者を不安にさせます。そこで、いくつかの数字を見ることで、計画を承認または却下するだけの明確な根拠があると納得し、自分自身を落ち着けます。

もちろん、数字は自分の主張に合うように作ることができるし、数字ばかりに目を向けていると、重要だが数値化できない視点が抜け落ちてしまいます。そうなると、短絡的な結論を導き出してしまったりするのです。

ただし、経営戦略から数字を根こそぎ除いてしまえばいいわけではありません。意識的に数値化することで、ときに思いもしなかった事実を発見・認識することもあります。しかし、最終的な意思決定は、

「私たちは細心の注意を払って数字を作り終えたら、いったんそれを脇に置き、最後は直感と経験に基づいて決断を下す」

経営戦略の中の数字は、あなたの意思決定の1つの材料にはなるでしょう。しかし、それが真実のすべてだと誤解してはいけないのです。数字は脇に置き、あなた自身の感覚と判断をうまく使わないといけないのです。

■数字を見たい欲求は酔っぱらいと同じレベル

ビジネスマンの数字を見たいという欲求は、街灯の下で鍵を探す人の逸話と同じです。

ある男が真夜中にバーを出ると、街灯の下でかがみながら何かを探しているほろ酔いの男を見つけます。その男にこう聞きました。

「何か探しているのですか?」
「自転車の鍵です、どうも失くしてしまったようで」

ほろ酔いの男はこう答えました。一緒に探しますよと申し出て、男と一緒に探し始めました。10分以上探し続けても見つからなかったので、このほろ酔いの男に

「本当にここで失くしたんですか? こんなに探してもどこにもないですよ!」

と聞いてみました。「いや」と、男は道の脇の暗がりを指しながら言いました。

「そこの暗がりで失くしたんですが、そこだと暗すぎて見つけることができないんです。だから、明るい街灯の下で探しているんです」

この話の教訓は、問題の本当の原因は見つけ出すのが難しいところにあるのに、明るく見通せる場所でばかり、解決策を探しがちだということです。

経営者や管理職は、この酔っ払いの自転車乗りのような行動をとることがありまうs。会社や部門が業績不振に陥っているときは、本当の原因は多くの場合、見えづらいところ、「良くない評判」、「低い従業員モラール」、「サービス品質」にあったりすることが多いのです。しかし、実際はコストを抑え、従業員を解雇し、投資を中止し、厳しい目標を掲げ、数字として捉えられるもの(=明るいところ)を削減しようとします。

明るいところにあるものを厳密に見たところで、問題を早く解決するための鍵を見つけることはできません。また、生産能力や社員数など、数字で捉えることのできる明確なものは、競争力の源泉にはあまりならないのです。こういう数字はお金で買えるので、視点を変えれば、競合他社も容易に獲得できるものなのです。

逆にお金で買うことができず、生み出すために多くの時間と労力が必要となり、数字として見えづらいものが、他社との違いを生み出すことが多いのです。たとえば、従業員のモラールや評判、企業文化などです。

目で見て測ることができる、明らかなものだけに惑わされてはいけません。もちろん、目に見えるものも必要だが、そういうものは競争力をもたらしたり、トラブルを避けたりするには、ほとんど役に立ちません。本当は、経営戦略に数字は必要ではなかったのです。これは、もっともらしい経営戦略の嘘なのです。見ることも測ることもできないものこそ、育て、管理していくことが経営戦略のポイントなのです。

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