ダメなのび太が描く未来

「ドラえもん」のストーリーのほとんどは、“ダメなのび太”が軸になって展開していています。しょっちゅうジャイアンたちにいじめられ、怠け者グセもあり勉強もできないのび太くんは、ドラえもんが出してくれるひみつ道具の力を借りて問題を解決します。しかし、そのあとは調子に乗って道具を壊してしまったり悪用してしまったり、のび太くん自身に不利益がかぶってくるというオチで話が終わります。このワンパターンというべき展開には、私たちに向けた大事な課題が隠されていることにお気づきでしょうか?

テクノロジーはダメ人間のためにある

テクノロジーによって生まれた道具は、コンピューターを自在に使いこなせる人のためではなく、むしろ機械が苦手な人にこそ使ってもらえるように作られていると言えます。昔のパソコンは、命令に当たる言葉(コマンド)をキーボードで書き込むことでプログラム(アプリ)を起動させていたのですが、今は画面に並んだアイコンをタップするだけであらゆるアプリが使えるようになっています。「自分はダメ」「機械は苦手」という人たちに活用してもらうために、こうした工夫が生まれてきたのです。

未来の仕事像がそこにある

ダメなのび太くんが最初の問題を解決した後に調子に乗ってしまう裏には、「ラクして生きていきたい」という怠けもの根性があるわけですが、この怠けたい気持ちを求める欲求は、言い換えれば「働く」という概念のない世界を目指していると言えます。のび太くんのように、ときに悪知恵を駆使してでも道具(テクノロジー)を利用し、ラクして生きられる世界の夢を拡大していくことこそ、世間が求める「未来の仕事像」と言えるかもしれません。

本能のポジティブ化

人間の行動は、本能から生じるものがほとんどです。テクノロジーからは、ときに人間にとって豊かさをもたらすものもあれば、好ましくない歴史が生まれたこともありますが、どれも人間の本能が作ったものと言えます。ドラえもんがどんなにすごい道具を取り出しても、のび太くんの本能までコントロールすることはできないのと同じです。人間のマイナスの本能をしっかり見つめ、それをプラスの本能へ変換し拡張出来るか。それが未来の人類に求められる課題となるでしょう。 参考書籍:吉角裕一朗著「『まだない仕事』で稼ぐ方法」 (ワニ・プラス刊) 足立謙二 ライター。時事通信社記者を経てフリー。WEBニュース、雑誌などに執筆。得意ジャンルは昭和カルチャーから特撮、最新アニメまで幅広く偏り気味に。