保険会社が破綻したら補償はどうなるの? 破綻前後の補償内容

もしものときの保険。もしその保険会社が破綻したら補償はどうなるのでしょうか? 今回は、保険会社の破綻前後の保証内容について紹介します


破綻すると最大90%の補償

銀行が破綻した場合なら、預金は元本1000万円とその利息が保護されます。生命保険会社では「責任準備金等の90%」、損害保険会社では「80%もしくは90%」といった形で補償されます。

この「責任準備金」というのは、将来の保険金支払いに備えて積み立てているお金のことです。

例えば、10年後に100万円の満期金が受け取れるという養老保険では、毎年10万円ペースでお金が積み立てられている計算です。5年たった時点では責任準備金が50万円たまっているはずですが、破綻した保険会社の資産の状況は、本来積み立てられるべき金額を下回っている可能性が高いです。

そこで、「生命保険契約者保護機構」(保険業法によってすべての生命保険会社の加入が義務づけられている組織)が不足分を補って、「責任準備金等の90%」の45万円(=50万円×90%)は確保するのが、破綻時の補償となります。

保険は、預貯金のように1000万円分ずつ分けるということがかんたんにはできません。保険金額1000万円を得るためにこれまで払ってきた保険料の額も、年齢や保険種類によってさまざまです。健康でなければ、新たに入ることも難しいのです。だから、その保険のために積み立てたお金である責任準備金ベースで補償することにしています。

予定利率の引き下げに注意

破綻時の生命保険の補償は「責任準備金等の90%」が基本ですが、さらに「予定利率の引き下げ」と「早期解約控除」が適用されるケースもあります。

責任準備金等の90%だけであれば、本来なら100万円受け取れるはずだった満期金が、90万円ぐらいに減額されるだけですみます。

さらに、予定利率の引き下げが行われた場合には、保険会社が約束していた運用利回りが引き下げられるため約半分しか受け取れなかった事例もあります。

予定利率が高かった時期に加入した契約ほど、高い予定利率で運用されていた分だけ、予定利率の引き下げによる減額のダメージが大きくなります。また、保険種類としては、養老保険のほか、終身保険や個人年金保険など貯蓄性が高い保険ほど責任準備金の額が多い分だけ影響が大きく、定期保険など掛け捨ての保険は影響が少ないしくみとなっています。

早期解約控除に注意

また、破綻して再出発しようとするときに解約が相次ぐと、破綻生保会社の資産状況がさらに悪化することが予想されます。そのため、しばらくの間は解約するとペナルティとして解約返戻金を通常より少なくする「早期解約控除」が実施されるのが通常です。破綻した日産生命の場合は1年目で15%、第百生命などは20%という高い率でした。

そのため、もとよりも不利な補償内容(90%の補償&予定利率の引き下げ)になりながらもそのまま継続するか、不利な条件で解約(早期解約控除)するかの選択になります。契約者には最悪の選択です。こうならないためにも、契約前に保険会社をきちんと調べ、破綻することがないかを調べることが大切です。

ちなみに、生命保険と同じような保障商品を持つ共済や少額短期保険業者(ミニ保険会社)は、生命保険契約者保護機構への加入が認められていません。その代わり、農林水産省管轄のJA共済は、窓口となったJAが破綻しても、ほかのJAやJA共済連に共済契約を移転する制度が農協法・共済約款に定められています。生命保険契約者保護機構の補償とは別のセーフティネットになる点も理解しておきましょう。

損保会社が破綻した後の補償

もしも契約している損保会社が破綻したと知った矢先に自動車事故を起こしたとしたら、「生保会社の破綻時と同様に90%しか保険金が支払われないのではと心配してしまいます。

しかし、損保会社が破綻した場合は、損害保険契約者保護機構」が補償します。自動車保険や火災保険、賠償責任保険といったメインの損害保険については、破綻後3カ月間に発生した事故に対する保険金は全額が支払われるように、損害保険契約者保護機構が補償するしくみになっています。

ただし、3カ月経過後は、解約返戻金や満期返戻金の割合と同様に、補償割合が80%になります。生命保険は90%です。医療保険や民間介護保険など人の身体に関する保険を損保会社も扱っていますが、それらは生命保険と近いので、生命保険同様に補償割合は90%になっています。

なお、強制加入の自賠責保険や個人が入る地震保険については、補償割合は100%です。これらは公共性が高い保険で、損保会社全体で運営しているので、破綻の影響は受けない補償内容になっています。

また、破綻損保会社がかかえていた保険契約は、契約を引き受けてくれる救済保険会社に移転したり、損害保険契約者保護機構に引き継いでもらうことになります。その際に、生命保険の破綻時の扱いと同様に、予定利率の引き下げが行われることがあるので要注意です。

また、損害保険は通常、火災保険や地震保険など1年契約が基本です。しかし、年金払積立傷害保険や介護(費用)保険など、再加入が難しく、長く継続することが前提の保険に関しては、生命保険の破綻時の扱いと同様に、早期解約控除が適用される可能性があります。

また、火災保険で、保険契約者が個人・小規模法人・マンション管理組合である場合には、損害保険契約者保護機構の補償対象としています。つまり、マンション管理組合でマンション共用部分に火災保険をかけているケースなども、同様の補償内容となります。

破綻前の予定利率の引き下げ

保険会社が破綻するととても大変ですよね。そこで、破綻しかねない状況になってしまったときには、保険会社は、予定利率を引き下げたい旨を金融庁に申請することができるようになっています。

予定利率の引き下げとは、契約者に約束した額を払えないため一定割合を減額する処置をとることです。つまり、契約者に痛み分けを強いることになるわけです。

保険会社からの申請を行政が認可・公告するまでの間について、内閣総理大臣が解約停止命令を出してしまうので、申請が出されたあとは、保険契約者が契約を解約することはできなくなってしまいます。その後に、予定利率の引き下げの計画を総代会にかけて特別決議(相互会社では4分の3以上、株式会社では3分の2以上)が決定されると、引き下げ対象者全員に通達が届く流れです。

ここで、1カ月以上の異議申し立て期間が与えられますので、10%超の反対があり、その契約者の保険契約の債務額が全体の10%超であれば、予定利率の引き下げは実現しなくてすみます。

破綻との違いですが、破綻時には責任準備金の10%カットがありますが、予定利率の引き下げはありません。また、予定利率の引き下げは、破綻時には過去行われてきましたが、厳しかったところでもこれまで2%台でした。予定利率の引き下げ申請は破綻の前の段階なわけですから、最大に引き下げても下限は3%と定められています。

予定利率の引き下げも破綻も、わかってからでは契約者は身動きができません。そうした対応がとられる可能性があることを理解して、契約先の保険会社の財務健全性をチェックする習慣をつけることが必要です。

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