成年後見制度の基本と成年後見人の仕事内容

成年後見制度は、自分が正常な判断ができなくなった場合に役立つ制度です。成年後見人に、代理判断、契約の同意・取消などを行ってもらうことで、適切に財産管理を行うことができます。成年後見制度の種類、手続き、成年後見人について紹介します。


成年後見制度とは

認知症、知的障害、精神障害などになった場合、自分の判断能力が不十分な状態となり、正常な判断ができなくなります。。このようにきちんと判断ができない状態では、高額な契約や不利益な契約をしてしまう可能性があります。

不動産の販売契約、介護サービスや施設の契約、遺産分割協議、悪徳業者による法外な販売などの被害も増えています。そこで、成年後見人を立てることで、判断能力の不十分な人を保護し、支援するのが「成年後見制度」です。

成年後見制度の2つの種類

成年後見制度には、2つの種類があります。

1. 法定後見制度
すでに判断能力が不十分になってしまった人のための制度
参考リンク

「法定後見制度」

2. 任意後見制度
判断能力があるうちに、任意後見人を決めておく制度
参考リンク

「任意後見制度」

成年後見制度申請の手続き

成年後見制度は家庭裁判所に申し立てを行います。その後、成年後見制度開始に必要な調査や鑑定を行い、成年後見制度を開始します。

法定後見制度の申請先

法定後見制度を利用するには、本人の住所地の家庭裁判所に後見開始の審判などを申し立てる必要があります。手続の詳細に不明な点がある場合は、申立てをする家庭裁判所に問い合わせるようにしましょう。

任意後見制度の申請先

任意後見制度を利用するには、まず、公証役場に出かけて任意後見契約を結ぶ必要があります。家庭裁判所へ行くまでに近くの公証役場で必要な手続きを行いましょう。

成年後見制度申立てから開始までの期間

申立てから成年後見等の開始までの期間は、4ヶ月以内となっています。成年後見制度が開始されるまでの間のタイムラグがあります。このタイムラグの間に金銭トラブルに巻き込まれる可能性があるので、任意後見制度を検討するのがよいでしょう。

成年後見人に選ばれる人

家庭裁判所が、最も適任と考える人を選びます。親族だけが選ばれるわけではなく、法律や福祉の専門家、福祉関係の公益法人などが選ばれる場合もあります。最近では、本人に一定額以上の財産がある場合には、本人の財産を適切に管理するため、専門職を成年後見人に選任したり、後見制度支援信託を活用したりすることが一般的になってきています。

成年後見人になれない人

本人に対して訴訟をしたことがある、破産者である、未成年など成年後見人としてふさわしくない人は、成年後見人にはなれません。

成年後見人の役割

成年後見人は、本人の意思を尊重し、本人の心身の状態や生活状況に配慮しながら、本人に代わって、財産を管理したり必要な契約を結ぶことで、本人を保護・支援します。

成年後見人の仕事は、本人の財産管理や契約などの法律行為に関するものに限られており、食事の世話や実際の介護などは、一般的には成年後見人の仕事ではありません。成年後見人はこれらの事務を家庭裁判所に報告するなどして、家庭裁判所の指示等を受ける「後見監督」業務を行います。

成年後見人は適切な財産管理を行う

成年後見人は、本人の財産を適切に維持し、管理する義務があります。本人と成年後見人が親族であっても、あくまで「他人の財産を預かって管理している」という意識を持ち、成年後見人の仕事に取り組むことが必要となります。

成年後見人が本人の財産を投資運用したり、自分のために使い込んだりすることは、原則として認められません。また、成年後見人が、家庭裁判所の許可なしに、本人の財産から報酬を受けることも認められていません。成年後見人が本人の財産を適切に管理していない場合、

成年後見人を解任される
損害賠償請求を受ける
業務上横領などの罪で刑事責任を問われる

こともあります。

成年後見人の仕事

まず、本人の財産の状況などを明らかにして、成年後見人選任後1ヶ月以内に、家庭裁判所に財産目録を出し、今後の予定を立てます。それ以外にも、財産を適切に管理する、本人に代わって契約する、状況を家庭裁判所へ報告するなどの仕事が発生します。また、最後の仕事としては、本人が死亡した場合、2ヶ月以内に遺産を確定し、相続人と家庭裁判所へ報告します。

成年後見人の任期

本人が判断能力を取り戻す、もしくは亡くなるまで、成年後見人の任期は続きます。また、成年後見人を辞めるためには、家庭裁判所の許可が必要となります。成年後見人の仕事は予想よりも多いため、報酬を支払うことが一般的となっています。

成年後見人の報酬の目安

裁判所による報酬の目安では、成年後見人が、通常の後見事務を行った場合の報酬は、月額2万円。ただし,管理財産額が高額な場合には、財産管理事務が複雑になる場合が多いので、管理財産額が1,000万〜5,000万円以下の場合には基本報酬額を月額3〜4万円、管理財産額が5,000万円を超える場合には基本報酬額を月額5〜6万円としています。保佐人、補助人も同様です。

成年後見の申立てをする方がいない場合

身寄りがない場合、申立てをする人がいない認知症高齢者、知的障害者、精神障害者の保護を行うため、市町村長に法定後見開始の審判の申立権が与えられています。こちらもわかりづらいので法務省の実例でみてみましょう。

市町村長が後見開始の審判を申し立てた事例

本人の状況:知的障害
申立人:町長
成年後見人:司法書士

本人には重度の知的障害があり、現在は特別養護老人ホームに入所しています。本人は、長年障害年金を受け取ってきたことから多額の預貯金があり、その管理をする必要があるとともに、介護保険制度の施行にともない、特別養護老人ホームの入所手続を措置から契約へ変更する必要があります。

本人にはすでに身寄りがなく、本人との契約締結が難しいことから、町長が知的障害者福祉法の規定に基づき、後見開始の審判の申立てをしました。家庭裁判所の審理の結果、本人について後見が開始され、司法書士が成年後見人に選任されました。

その結果、成年後見人は介護保険契約を締結し、これに基づき、特別養護老人ホーム入所契約のほか、各種介護サービスについて契約を締結し、本人はさまざまなサービスを受けられるようになりました。

成年後見制度の課題

成年後見制度は正しく機能すれば、素晴らしい制度ですが課題もたくさんあります。

後見人等選任の法的手続きに費用がかかる
後見人等への報酬支払いが必要
後見人等の引き受け人が足りない
後見人との金銭トラブル

など様々な課題もあります。ただ、成年後見制度は、自分が正常な判断ができなくなった場合への対策として便利な制度です。自分が死んだ時のことだけでなく、ボケてしまったときなども考えて、任意後見制度を検討するとよいでしょう。

次の記事

「法定後見制度」

前の記事

「福祉用具販売」

    
コメント