夫のカネはわたしのもの、わたしのカネはわたしのもの?

自分の家はある。あとは夫が先立つのを待つだけだといえば、おだやかでないかもしれません。しかし、多くの既婚女性にとって、自分の家は夫名義の家であって自分の家ではありません。妻に収入がなければ、家を共同名義にするのにさえ夫に贈与税がかかります。しかし、ある条件さえ満たせば、「夫のカネはわたしのもの、わたしのカネはわたしのもの?」なんです。


妻が優遇される時代

日本の法律は、夫婦共産(夫婦共有財産)制を認めていないから、夫が稼いだものは夫のものです。しかし、財産法では個人主義をつらぬいている日本の法律は、遺産相続になると妻を優遇することになりました。

1980年まで、妻の法定相続分は夫の遺産の3分の1、残りの3分の2は子どもたちに均等分割と決められていました。子だくさんの時代には、これでもよかったかもしれませんが、少子化で子どもがひとりかふたりになると、場合によっては妻より子どもが優遇されることになります。

1981年に、妻の相続分が2分の1まで上昇しました。同じ時期に、専業主婦の年金権が認められたから、これは「福祉の含み資産」とみなされた主婦に、夫を看とったごほうび「夫のカネはわたしのもの」として与えられたのでしょう。

第3号被保険者(サラリーマンや公務員の無業の妻)なら保険料を払わなくても年金をもらう権利があ、というこの80年代末の年金改革を、「専業主婦優遇策」とよぶのはまちがいで、「オヤジの看とり保障」というべきでしょう。

看取りさえすれば夫の財産の半分は妻のもの

つまり、オヤジを看とりさえすれば、夫に先立たれた妻は黙っていても夫名義の財産の半分は自分のものになるのだ。しかも相続税の基礎控除額は5,000万円プラス法定相続人数×1,000万円。つまり、妻と子ども2人の計3人が相続人なら8,000万円までは税金がかからない計算です。

ほとんどの不動産の評価額は路線時価よりはずっと低いから、中流程度の夫が残してくれた不動産など、ほとんど相続税の対象になりません。相続税が高すぎて土地の物納で納めたなどという週刊誌ネタは、大都市圏の不動産持ちだけの話です。

しかも、子どもはとっくに自立しているから、いまさら父の遺産をくれとは言い出さない(だろう)。ヘタに分けてくれと言えば、母親を住まいから追い出すことになり、自分がめんどうをみるはめにおちいりかねないからです。少子化の時代、黙っていても母親が亡くなれば、いまの不動産は自分のもとにころがりこんでくることを予期しています。

夫のカネはわたしたちのもの、わたしのカネはわたしのもの?

高齢社会をよくする女性の会が2002年に会員を対象に実施したアンケート調査によれば、「自分名義の不動産がありますか?」という問いに、「イエス」と答えたひとが約7割もいました。対象となった会員は平均よりやや経済階層が高いかもしれませんが、とびぬけてリッチなひとたちばかりではありません。

「夫のカネはわたしたちのもの、わたしのカネはわたしのもの」という金銭感覚をもっている妻は多いのです。そして自分の収入はすべて自分の貯蓄にまわし、50代で自分名義の家を建てる。

「これでいつでも離婚できる」とつぶやく妻に戦々恐々としているのは、夫のほうなのです。

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