80年代の東京を知る

2010年代が終わろうとしている今、すでに失われつつある記憶や風景といったものがあります。それが近しい過去であればなおさらでしょう。


80年代には何があったのか

1980年代の東京にはどのような世界が広がっていたのか。ほんの30年ほど前であるにもかかわらず、なかなか内情を知ることはできません。そこにおいて役立つ本の一つが宮沢章夫による『東京大学「80年代地下文化論」講義 決定版』(河出書房新社)です。本書は、80年代にテレビやラジオ番組の構成作家としてキャリアをスタートさせた後、劇作家に転じた宮沢章夫による証言録です。80年代にどのような漫画作品が流行っていたのか。あるいはどのようなテレビ番組や演劇、価値観が流行っていたのかといったことについて著者の私見を交えて語られています。

客観性を浮き彫りにできない

なぜ私見なのかといえば、80年代は高度情報社会とも言われるように、さまざまな価値観や情報が乱立しています。そんな時代において全ての情報を把握することはとても難しいでしょう。特にサブカルチャーや、若者文化を指すユースカルチャーといった分野ならばなおさらです。当時は認められていなかったものが、今になって価値が再検討されるといったことも起こっています。単なる懐かしいアイテムを並べただけのものではなく、80年代とはどのような時代であり、それは現代にどのようにつながっているのか。そのような通史を描き出す試みとして本書はあるのです。

    
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