日本人が「庶民的な宰相」を求めるワケ

2度目の自民党新総裁になった安倍晋三自民党総裁。総裁選の直前に、ゲン担ぎとして昼食に3500円のカツカレーを食べていたシーンがテレビに映し出され、「庶民感覚に欠けている」という切り口で報道されました。政治のトップに立つ人に対し、庶民感覚を求められるのは、なぜなのでしょうか。


■総理大臣は身分の高い人がなるものという感覚

初代の総理大臣、伊藤博文はもともと農家出身で、武士になりましたが、決して身分の高い人物ではありませんでした。しかし、その後は公家などといった身分の高いとされる出身の人物が総理を務めたこともあり、国民にとっては身分の高い人が総理大臣になるものという感覚が刷り込まれてきたのかもしれません。初の平民宰相が誕生したのは大正時代になってから、原敬内閣で実現されました。

■「庶民宰相」と言われた総理大臣たち

もう少し近い年代を見てみましょう。昭和の総理で「庶民派」と言われた代表格は田中角栄です。田中角栄の実家は農家。それが政治家となり、総理大臣にまで上り詰めたということから、庶民感覚を良く知る総理大臣として支持されました。逆に、麻生太郎や鳩山由紀夫といった元首相たちは、莫大な資産を持っていることもあり、一挙手一投足について、しばしば「庶民感覚がない」などと叩かれることがありました。

■「庶民になりきれ」と言った大平正芳

自ら「讃岐の貧農の倅」と話し、第68・69代総理大臣を務めた大平正芳は、はっきりと「総理総裁たる者は徹底的に庶民になりきらねばならない」という言葉を遺しています。庶民の感覚がなければ、納得のいく政策を作ることはできないという考えだったのです。発言の内容からすれば、やはり自分の育った環境から生まれた考えだったのではないでしょうか。そんな大平元首相は、日本で最初に一般消費税を導入しようとしましたが、世間の猛反発を受けて頓挫しています。

野田内閣発足時は「散髪代が1000円」だったということで好意的な報道をされていましたが、今では高級店で散髪するようになったとか。いずれにしても、実になる政治をしてくれるのであれば、散髪やカツカレーの値段などは、気になる人も少なくなるのではないでしょうか。

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