それは野次ではありません! 歌舞伎の「かけ声」は通のワザ

都議会の場で塩村あやか議員がセクハラ野次を飛ばされた出来事に対し、テレビのインタビューに答えた自民党の高木都議会議員が「歌舞伎と同じ」と発言しました。しかしこれに待ったをかけたい歌舞伎ファンはたくさんいるのではないでしょうか!?


「野次」とは騒ぎ立てること

「野次を飛ばす」「野次馬根性」などと言いますが、そもそも「野次」とは、国語辞典によると「自分の関係ないことに興味本位で騒ぎ立て、見物すること」(デジタル大辞泉)という意味です。単に騒ぎ立てたい人が声を掛けているというだけと捉えてもいいでしょう。

そう考えると、都議会という場で野次が飛ぶ状況は、あまり褒められたものではありません。野次を飛ばされたのは、一部週刊誌が塩村あやか議員の不倫疑惑を報じていたせいとも推測できますが、そもそも議員の発言中に野次を飛ばす行為そのものが問題であるとも言えます。

歌舞伎のかけ声は役者への賞賛

議会での野次を「歌舞伎の掛け声のようなもの」と言ってよいものなのでしょうか。調べてみると、まったく違うものであることがわかります。

歌舞伎を観たことのある人なら、必ず客席から聞こえる男性の掛け声を耳にしますよね。この掛け声を掛ける役割のことを「大向こう」と呼びます。「成田屋」(中村団十郎や中村海老蔵など)や「紀伊國屋」(澤村藤十郎など)「澤瀉屋」(市川猿之助、市川中車など)といった、歌舞伎役者の屋号を、舞台のクライマックスや名ぜりふ、役者が見せる所作が決まった時などにかけるのです。歌舞伎の舞台はお話が盛り上がるポイントが決まっており、そのタイミングで声を掛けます。

もちろん、演目の内容をよく知っていなければ、良いタイミングで声を掛けることはできませんし、場合によっては役者の演技にも影響が出ることがあります。つまり、歌舞伎を熟知している人でなければ掛け声を掛けることは難しいのです。

このように、歌舞伎の掛け声は、場を盛り上げる役割、役者を賞賛する役割を持っており、掛け声を出す側にも歌舞伎の深い知識が必要なのです。野次とは性質も目的もまったく違うことがわかります。

ちなみに、掛け声をかける大向こうの団体が存在しており、大向こうになるための勉強会が開かれているそうです。掛け声を掛けてみたい、歌舞伎の知識を深めてみたい人にはお勧めです。

歌舞伎ファンから怒りの声「セクハラ野次と一緒にするな」

塩村あやか議員に野次を飛ばしたのは声が届いた方向から、自民党の議員ではないかと言われていました。そのため、身内をフォローしたいがための言い訳だったのかもしれませんが、あまりに歌舞伎を知らないどころか、騒ぎ立てるだけの野次と一緒にしている発言をしたことは残念です。歌舞伎の良さを知るファンにとってはは野次の内容に加え、掛け声と同じなどと言われ、腹立たしいことでしょう。

自民党の鈴木都議が名乗り出て塩村議員に謝罪しましたが、こうした議会の野次が存在すること自体、都議会全体で考えをあらためてもらいたいものです。

    
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