「戦争の心理学」から読み解く映画「アルマジロ」

現在公開中のドキュメンタリー「アルマジロ」。特筆すべきは、ほぼ無規制で「アフガニスタンで戦うデンマーク軍の青年兵士」に密着した従軍取材にあります。これまでも多くのメディアに「これは本当にノンフィクションなのか?」と激賞されてきました。ここでは戦場に送られた兵士の心を戦場心理学から紐解いてみましょう。


■常軌を逸した負傷兵、目を爛々とさせ傷口を誇らしげに語る

映画の舞台となるのは、タリバン掃討作戦最前線アルマジロ基地。デンマークから出発する際、家族に笑顔を見せていた、ある青年兵。月日が経つにつれ、戦場独特の緊張感が彼の心を支配していきます。やがてタリバンとの激しい交戦で負傷した青年の目は、完全に正気を失っていました。手当てを受けて基地に戻ると、彼は「横っ腹から尻を弾丸が通過していったんだ」と。仲間たちに目を爛々とさせて興奮しながら自慢します。戦争は無垢な青年の心をなぜここまで変えてしまったのでしょうか。

■デーヴ・グロスマンの「戦争の心理学」から解く兵士の心境

心理学軍事学教授のデーヴ・グロスマン氏は、今回紹介する書籍の中で陸軍士官学校の心理プログラム責任者だったジャック・ビーチ大佐の言葉を引用して兵士達の戦場における心理についてこう分析しています。

「戦闘の興奮に酔っていようと、たんに戦闘の場にいるだけであろうと、たいていの人間にとってはたんにそこにいるということが、それまでの人生で最も強烈な経験だろうと思う。生きているという確かな手応えがあり、周囲の仲間たちと深く親密なきずなが生まれる。戦争から戻ったとき、そこにやりがいのある仕事が待っていれば別だが、そうでなければ戦場に戻りたくてたまらなくなる」

■ 非リアル化する戦場 英王室ヘンリー王子もゲームと比較

映画「アルマジロ」では、さらに興味深い視点から、兵士の心理が描かれています。デンマーク軍の兵士たちがリアルな戦場に自らの身を置きながら、非リアルな戦争のテレビゲームをプレーするというシーン。実は公人のイギリス王室のヘンリー王子が、アフガン駐留後の取材で発したコメントが物議を醸しているのです。攻撃型ヘリでタリバン兵の殺害も認めている彼が、「プレイステーションやXboxの愛好者の一人として、親指がすごく役立ちました」と話し、戦場の任務をゲームに喩えた発言も実際にあるのです。

英ヘンリー王子のみならず、映画「アルマジロ」を観に来ていた学生からも「ヘッドカメラが映し出す戦争という映像がゲームみたいで面白いから観に来た」という声が聞こえてきました。一方で「銃口を向けられたら、自分を守るための戦いなら殺るしかない」という声もあり、若者たちの戦争の捉え方は非リアルとリアルの狭間で揺れているのではないかと思えました。あなたは戦争をどう感じるか。本書と併せて、本物の戦争を一度劇場で体感してみてはいかがでしょうか。

「『戦争』の心理学 人間における戦闘のメカニズム(デーヴ・グロスマン、ローレン・W・クリステンセン)」の詳細を調べる

    
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