「めぐりあうものたちの群像」が切り開いた豊穣な歴史

歴史とは過去に起こったものすべてです。歴史の項目を辞書で見れば、履歴という言葉が出てきます。インターネットの履歴を思い浮かべて見ましょう。過去にアクセスしたすべてのサイトが出てきます。かのように歴史はとても膨大な対象を取り扱うのです。

そのため、歴史は時として簡略化がなされます。それは勝者によって、時の権力によって、あるいはもっと卑俗に言えば声がデカイやつによって規定されていきます。


膨大な音楽史

青木深の手によって紡がれた「めぐりあうものたちの群像: 戦後日本の米軍基地と音楽1945-1958 」(大月書店)では、終戦後の日本におけるアメリカ軍人たちと音楽の関係に着目しています。

軍人たちの娯楽施設としてダンスホールが作られ、レストランでは生バンドの演奏が行われます。そこで音楽に関わった人間たちの群像を、日本人、アメリカ人と問わず、膨大な資料と関係者インタビューにあたり一冊にまとめがたのが本書です。

アメリカ「軍人」として一面的にしか理解されていない人びとにも複数の顔があることがわかります。アメリカ人は白人だけでなく黒人もいればヒスパニックもいる。さらに白人の中にもドイツ系、アイルランド系と無数のルーツがある。さらに極東アジアにおいて、フィリピン、沖縄と無数のルーツが出現します。

多彩なグルーヴが混ざり合って1つの音楽文化を形成していたことがわかる刺激的な本です。

次々と物故者となった関係者のインタビューをギリギリのタイミングでひろあげられたのも、絶妙なめぐりあいと言えるでしょう。

    
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