小沢健二の空白期間を知る

小沢健二は90年代にミュージシャンとして活躍し、その後単身アメリカのニューヨークへと渡ります。しかし、その後19年間にわたって沈黙をしていました。それはあくまでも、90年代と比べメジャーな音楽シーンに現れなかったという意味なのですが、ほとんどの人にとって小沢健二は消えた人であり、あの人は今、という状態であったかもしれません。


何をしていた?

しかし小沢健二は消えていたわけではありません。さらに活動を沈黙していたわけでもありません。むしろ積極的に動き回っていたといえるでしょう。その小沢健二の空白期間に焦点を当てた本が宇野維正による『小沢健二の帰還』(岩波書店)です。著者は『1998年の宇多田ヒカル』(新潮新書)で、日本において音楽CDがもっとも売れた年代と、その時に活躍していた宇多田ヒカルに着目して日本の音楽産業を解き明かしたことで知られます。その前はロッキング・オン社において音楽編集者兼ライターとして活躍していました。

同世代論

著者は、小沢健二と友人を通したつながりがあり、同時代人としての小沢健二をずっと追ってきた人物です。そうであるが故に、沈黙をしていた小沢健二に関して、インタビューの言葉などを注意深く引用しながら空白期間を解き明かそうとします。そこにあるものはファンとしての目線だけではなく、音楽ジャーナリストとして時代の中に小沢健二をどう位置づけるかといった作業でしょう。著者はファンとしての思い入れの強さゆえに、焦点がぶれてしまいがちな小沢健二その人をまっすぐにとらえているのです。

音楽以外の小沢像にも

さらに本書では音楽活動以外にも、コラムやエッセイなどを記すほか、童話作家としても活躍した小沢健二の文章、言葉にも着目しています。単なるミュージシャンの評伝ではない、小沢健二という人、時代、思想をとらえた一冊であるといえるでしょう。

    
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