奥深き一発屋の世界

一発屋芸人とは、文字通りギャグやキャラクターなどで一世を風靡するものの、瞬く間にテレビから消えてしまった芸人たちを言います。自らも一発屋芸人を名乗る髭男爵の山田ルイ53世が、そんな悲しい一発屋芸人の肖像に迫った本が『一発屋芸人列伝』(新潮社)です。


サービス精神が旺盛

本書の特徴はなんといっても、山田ルイ53世自身が取材を行っている点でしょう。同じ一発屋芸人の立場から、同情を示しつつも、なぜこの人は一発で終わってしまうのかを冷酷に分析してゆきます。もちろん、一発や芸人への愛情を感じ取れる表現も多く使われています。

来歴にも迫る

さらに、こうした一発屋芸人たちというのはテレビで使われことがあっても「あの人は今」のような企画のみであり、そこで当然のように聞かれることは「最高月収」です。しかしながら、そのベターを突き崩し、きちっと生い立ちから迫った本書は、その点において一発屋芸人と誠実に向き合った本だと言えるでしょう。しかしながら、そこにあるものはやはり芸人として一皮むけず、浮上できず潜伏したままの世界であることもあります。

人生訓

本書から得られるものはなんでしょうか。人間は何度だって立ちあがれるといったベターな人生訓でしょうか。いや、そんなことではありません。一発屋芸人の魅力は、一瞬の沸騰ではありません。本人からしたら、その後も長い人生が続くのだという渋みを味うことのできるところが、本の長所だと言えるでしょう。

    
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