評論家としての山川方夫

山川方夫という小説家がいました。戦争体験を自伝的な小説として書き残し、34歳の若さで交通事故死した作家です。教科書に収録された「夏の葬列」は代表作として知られるでしょう。しかしながら、その他にも山川方夫には多彩な顔がありました。


山川方夫は何をしていたのか

山川方夫は小説家となる前は、『三田文学』の編集に従事し、そこで江藤淳、曽野綾子、坂上弘らを排出したことで知られています。その後、商業誌デビューを果たしたあとも、ラジオの放送台本執筆や、映画雑誌に映画評論を寄せたほか、演劇評論なども手がけていました。山川方夫の実像として浮かび上がって来るのは、いわば文章にまつわる何でも屋という顔でしょう。

山川を知る良書

現在、山川方夫の小説は、文庫本でいくつかの作品が出ています。その一方で、エッセイを読む場合は全集に手を伸ばさなければいけません。そんな手の届きにくい山川方夫のエッセイを一冊にまとめた本が『目的をもたない意志:山川方夫エッセイ集』(清流出版 )です。本書では山川のエッセイがおおよそ発表された年度ごとに掲載されていますので、彼の人生を追うように、思考の過程を見ることができます。物静かな印象を受ける山川ですが、エッセイは時に熱く、映画評に至ってはつまらない作品を罵倒すらしています。それだけ作品を作り上げることに情熱をかけていたのだとわかるでしょう。

    
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