開高健のエッセイを味わう

開高健は小説家として知られますが、同時に多くのエッセイを記しました。その内容は趣味のグルメや釣りといったものから、戦後の動乱期を過ごした大阪の風景、戦地に赴いたベトナム戦争など、多岐にわたります。


一冊に凝縮

開高健のエッセイの味わいを一冊に凝縮した本が小玉武編による『開高健ベスト・エッセイ』(ちくま文庫)です。本書では「わが天王寺」から章立てがはじまります。戦後の動乱期を大阪で過ごし、すでに結婚して子どももいた開高健のたくましく生きる姿が描かれています。続く「青春の匂い」では、少し年を取った開高健が、戦後の焼け野原を回想してゆくような作品が続いています。

文学への語り

さらに、本書の「レトリックの魔」「書物の罪/文学の毒」においては、開高健の文学論についてたっぷりと語られています。開高健その人ばかりではなく、小説を多く執筆する中で会得した文学論、あるいはその世界に対する情熱が注ぎ込まれていると言えるでしょう。さらに忘れてはいけないのが「裸のリアリスト:「ヴェトナム戦争」始末」です。ヴェトナム戦争体験は開高健の中では大きく、いわゆる未完の闇三部作へと繋がります。もちろん釣りを取り扱った「『オーパ』の周辺」や、食べ物を扱った「美味求真プラス」といったテーマもありますので、硬軟織り交ぜた楽しめる内容となっています。

    
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