黒人選手だから「速い」のか?

オリンピックをはじめとする陸上の国際大会で活躍する黒人選手たち。黒人選手は他の人種に比べて生まれつき身体能力が高いと考える人が多いのではないでしょうか。しかし、黒人選手が「速い」のは、黒人だからという理由だけではないのです。


ケニアの長距離選手

ケニアからは多くの優秀な長距離選手が誕生しています。2007年の世界陸上では3000メートル障害でトップ3を独占。かつての世界記録保持者デルガド、08年北京五輪金メダルのワンジル、2012年にはキルイとキプサンクが銀と銅を獲得しています。しかし、ケニア人が他の黒人と比べて身体的能力が明らかに違うわけではありません。

ケニアという国のなかでも世界レベルの選手を輩出する特定の地域があり、そこではかつて夜中に他の集団から牛の略奪をすることがあったといいます。追手につかまらず、すばやく移動するため牛を追いながら走行したそうです。また、現代では、同じケニアでも、トップ選手ほど「学童期に10キロ以上走って通学している」という調査結果が出ています。最近では強化プログラムが確立されているためとも報道されています。

カリブの陸上と野球

ボルトをはじめ多くの短距離選手を生み出しているジャマイカ。一方、メジャーリーガー産出国となっているドミニカ共和国。ジャマイカとドミニカ共和国はカリブの国で、地理的には600キロほどしか離れていません。両国とも西アフリカ出自としている黒人が多いのです。ジャマイカはイギリスの影響を受け、ドミニカ共和国はスペイン、その後、米国の影響を受けています。

地理的に近く、人種的にも極めて近いルーツをもつ2つの国ですが、トップ選手を輩出している種目は異なります。それは、身体能力の差ではなく、学校や家庭、スポーツ文化の違いが主な理由です。子どもたちを特定のスポーツ種目に誘い、育成し、成功者には報酬が与えられます、ジャマイカではそれが陸上であり、ドミニカ共和国ではそれが野球なのです。

ジャマイカと野球、ドミニカ共和国と陸上

たとえば野球の日本代表チームとジャマイカの代表チームが対戦すると、日本の代表チームのほうが実力は上でしょう。また、日本のトップの陸上選手たちが、ドミニカ共和国の陸上選手と試合を行った場合、日本の選手の勝利確率はかなり高いと思われます。この場合、観戦者は「黒人選手は生まれつき身体能力が優れている」というストーリーにはめ込むことはできません。

黒人選手は他の人種の選手よりも身体能力に優れているのかもしれません。しかし、その国や地域の生活様式、スポーツ文化、人気種目が大きく関わっていることは明らかです。

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