ブラジルW杯、日本代表はこう戦え!! 北條聡×二宮寿朗スペシャル対談【前編】

日本代表が本大会で勝つためにはどう戦えばいいのか? ブラジルW杯開幕を前にして、長年サッカーを見続けてきたサッカーライターの二人が、緊急対談。コートジボワール、ギリシャ、コロンビアとの戦を徹底討論する。


メンバー選考で重要な多様性とバランス

――まず、今回のW杯メンバー23人を見てどのような印象をもちましたか?

北條 本書『サッカー日本代表 勝つ準備』の中にも書いていますが、メンバー選考で大切なのは、多様性ではないかと。そのためには、熟練の人、時の人、未来の人をそろえた方がバランスはいい。ベテランという点で遠藤選手がいるけれど、それ以外はいなかった。

二宮 遠藤選手以外、2006年ドイツW杯メンバーがいなくなった点がちょっと気になりますね。2010年南アフリカW杯の川口選手、2002年日韓W杯の中山選手、秋田選手など、サブで支えてくれるベテランはいません。もう一人サブでベテラン選手を入れればいいのかなと思っていましたが、ザッケローニ監督は、そこは長谷部選手に任せられるという確信があったのだと思います。

北條 キャプテンについて本の中でも触れていますが、キャプテンはリーダーシップが求められる立場であると同時に、中間管理職でもある。選手と監督、(ゲーム中は)選手と審判、選手とメディア……立場の異なる者同士の架け橋となる、言わば調整役ですね。長谷部選手はその条件を満たす理想のキャプテンでしょう。そういう人材はなかなか、いない。

二宮 歴代優勝チームを率いたキャプテンは30歳オーバーも少なくないと、北條さんは書かれていた。前回大会をキャプテンとして20代で経験して文字通り、脂の乗った状態で迎えることになった。そこは日本の強みになると思います。

北條 時の人という意味では、大久保選手が選ばれた。

二宮 2012年2月のアイスランド戦以来の代表復帰ですからね。

北條 今までの継続的な流れを考えると、新しい選手は選びにくい側面があるけれど、短期決戦では“勢い”がモノを言うケースは非常に多い。1990年イタリアW杯のサルバトーレ・スキラッチ(イタリア)の例はあまりにも有名だけれど、時の人は重要であるという認識がザッケローニ監督にはある。やっぱり、ちゃんと見ているんだなと感じる。

二宮 この人選はやっぱりサプライズだと思います。なぜかというと、ザッケローニ監督は継続して呼ぶというスタンスがありました。継続的に呼んでなかった選手を呼んだという意味でサプライズなのですが、ザッケローニ監督からすると勢いがある、コンディションがいい、という部分も選考基準に入っていた。そこも今回の23人の内、国内組11名、海外組12人という部分は、メンバー発表時の会見でも話していた。
個人的にはこの23人をみて、あるメディアで『勇気とバランスの23人』と表現しました。勇気という部分では、高さを捨てたこと。バランスという部分では、Jリーグから勢いのある選手を入れたこと。日本のサッカーは高さを売りにしないで攻めていくという決意表明のように思えました。ザッケローニ監督は、高さがないことを弱点と考えずに、高さがないことを長所にしようとしている印象です。

北條 足りない武器を補うという意味で、多様性を確保しておくことは定石かもしれないけれど……実際問題、うまくいかなかった。高さのあるフォワードがなかなかチームにフィットしなかった。そこにこだわると、逆にリスクになるという判断から入れなかったのだと思う。高さが弱いのであれば、相手に高さを利用させないようにすればいい。
例えば、コートジボワールのドログバ選手やギリシャのサマラス選手のような空中戦に強いストライカーがいても、決定的なクロスを上げさせなければ、仕事ができないわけだからね。

二宮 サイドからのクロスボールを上げられないようにチームで守らないといけない。その意識付けをしっかりやっていく必要がありますよね。

――守備の選手が少なくて、攻撃的な選手が多いという印象ですが。

二宮 23人の意味は2チーム構成できてGKが一人。これが基本形です。同じバランスで配置した時に、ザッケローニ監督のチームがもう一つ(4-2-3-1で)作れる。なので、僕は前めの選手が多いとは思いません。自分が三番手の選手とはならない。必ずバックアップの二番手の選手になる。
二番手か三番手かというのは、選手にとっては大きい。二番手ということであれば途中出場もある前提で準備をしなくてはならない。ボランチで五枚あるよりは、四枚の方が準備という意味ではいいと思う。センターバックもしかり。責任感も生まれてこのバランスはいいと思う。

北條 ポリバレントな(複数のポジションをこなせる)選手を優先的に選んでいる。

二宮 そこはザッケローニ監督も会見で強調していた部分です。

北條 歴代の日本代表でも、いろんなポジションのできる選手は必ず一定数、そろえていた。今回、未来の人は23人の中に入っていない。確かに難しい選択だけど、予備登録メンバーの中に南野選手がちゃんと入っていた。かなり考えられたメンバー選考だと言える。

二宮 南野選手に対するザッケローニ監督の期待が、うかがえますよね。

北條 今回、日本サッカー協会の原博実・専務理事がインタビューの中で、ザッケローニに対して、できるだけ若い選手を使ってほしいという要望を出していたと語っている。監督に就任して2年間は、W杯予選を突破するという目標があるので、ある程度メンバーを固定してやって来 た。その後は、五輪組や若い選手をうまく融合させてきたと思う。

コートジボワール戦のカギは、サイドバックの攻防にあり

――初戦のコートジボワール戦、先発メンバーはどうなりそうですか?

二宮 コンディションもありますが、1トップを考えた時には今の調子のよさ、高さ、守備の迫力という面で考えると大迫選手がいいのかなと思います。あとは、ボランチをどうするかですかね。

北條 誰をボランチで先発させるか、それによってザッケローニ監督のメッセージが見えてくるんじゃないかな。もう一つ気になるのは、センターバックでしょう。高さの面を考えて、今野選手ではなく森重選手を使ってくるかもしれない。

二宮 ただ、長谷部選手はザッケローニ監督の中では、ピッチ内、ピッチ外の信頼度はかなり高い。ケガから復帰して間もないという状況ですが、まだまだ準備の期間はある。
センターバックに関しては、コンフェデレーションズカップでイタリアのバロテッリ選手をマークした今野選手の評価はやっぱり高い。基本は今野選手と吉田選手だと思う。でも空中戦に強い森重選手の株も相当に上がっていますよ。

北條 もう一つの問題はファーサイドを狙ったクロスの対応でしょう。そこでサイドバックがしっかり中に絞ってマークをつかめるかどうか。そこが国際舞台ではかなり大事になるからね。カウンターが中心のアジア勢との試合やJリーグなどではクロスの質に問題があるから、そこが多少ルーズでも致命傷になるケースは少ない。ところが、世界のトップレベルが相手になると、ピンポイントでクロスが入ってくるから、失点につながりやすい。

二宮 そのポジションにインテルで活躍している長友選手やシャルケ04の内田選手がいるあたりは日本の強み。

北條 サイドバックは、一対一の勝負で負けないこと、簡単にクロスを上げさえないこと。そこが非常に大事になってくる。

二宮 目の前のアタッカーに対して仕事をさせない。それがカギになってくると思います。

北條 コートジボワール戦は、特に重要になってくるかもしれない。細かいコンビネーションを使うよりも、一対一の勝負を仕掛けてくる。ウイングが勝負して、自分でシュートまでもっていくか、ドログバ選手にクロスボールを入れるか、この二つが得点パターン。サイドバックが対面のウイングをどれだけ抑えられるかが試合の行方を左右すると思う。

二宮 日本チームは、スカウティングもしっかりやってくるはず。拮抗した勝負になると思うのですが。

北條 たぶん点は取れる。コートジボワールのディフェンスはそんなに強くないし、人数をかけて攻めることができれば十分に勝負になる。

二宮 初戦はとにかく大事。初戦でいいファイトをすることがマストの条件ですね。

北條 ただ、最悪なのは初戦に入れ込みすぎて、負けてしまった時にそのダメージを引きずってしまうこと。たとえ初戦で負けても「これで終わりだ」とネガティブになってはいけない。そうしないと三連敗もあり得るでしょう。正直、今回のグループには「勝ち目なし」という絶対的な強者はいない。コロンビアにも十分に勝てる可能性はある。

二宮 一戦目は何が一番大事かというと、自分たちがやりたいサッカーをしてホップ、ステップ、ジャンプのホップをやっておくこと。いきなりステップはできない。たとえ負けたとしてもホップができれば、二戦目でステップして、三戦目でジャンプできればいい。三戦をトータルで考えて継続性を大事にした方がいいでしょう。

北條 実際に初戦を落とせば、切り替えるのは難しいだろうけど(笑)。ただ、今回のチームには反発力があるんじゃないかと期待している。昨夏のコンフェデレーションズカップでは初戦でブラジルに負けた後のイタリア戦で良いパフォーマンスを見せていた。あそこでズルズルいかなかったのは、精神面でタフということでしょう。

――コートジボワール戦でのキープレーヤーを挙げるとしたら?

北條 攻守両面を考えても、やっぱりサイドバックですかね。コートジボワールのウイングは守備の意識がそれほど高くないので、日本のサイドバックが攻撃参加すれば数的優位をつくりやすいと思う。そうなれば得点のチャンスが生まれてくる。

二宮 コートジボワールに一点は取られると思います。その時に日本は一点、または二点返せるか。誰が点を取るか。そういう意味では岡崎選手を推したい。今年の岡崎選手は本当にすごい。裏に抜ける動きを繰り返し、相手が嫌がるくらいにやっていってメンタル勝負にもっていく。そして最後は、こぼれ球を決めるというパターン、どうですか(笑)。

北條 ゴール前のこぼれ球がことごとく岡崎選手の目の前に転がってきそう(笑)。

二宮 長友選手と岡崎選手は2013-2014シーズンで活躍した選手。岡崎選手は守備もやるけど、ストライカーとしてのエゴも確立した印象がある。

北條 左サイドでつくり、右サイドで決める。それが日本の得点パターンですからね。

<後編につづく>

『サッカー日本代表 勝つ準備』
著者:北條聡、二宮寿朗
全国の書店にて、実業之日本社より好評発売中

北條聡(ホウジョウサトシ)
1968年、栃木県出身。大学卒業後、1993年のJリーグ開幕と時を同じくして、出版社に入社し、『週刊サッカーマガジン編集部』に配属される。以降、サッカー日本代表担当、『ワールドサッカーマガジン』編集長を歴任し、W杯やUEFAチャンピオンズリーグなどを取材。2009年から2013年10月まで『週刊サッカーマガジン』の編集長を務めた。2013年10月に退社し、独立。歴代の日本代表を取材してきた独自の視点でサッカーを切り取る。著書に『サカマガイズム』(ベースボール・マガジン社)、共著に『正しいバルサの目指し方』(ベースボール・マガジン社)がある。

二宮寿朗(ニノミヤトシオ)
1972年、愛媛県出身。大学卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社。格闘技、ボクシング、ラグビー、サッカーなどを担当し、数々のスポーツシーンの目撃者となる。2006年に退社し『Number』編集部を経て独立。人物に寄り添った熱い原稿には定評があり、多くのサッカーファンに人気を集めている。著書には『岡田武史というリーダー 理想を説き、現実を戦う超マネジメント』(ベスト新書)、『闘争人~松田直樹物語』、『松田直樹を忘れない。~闘争人II永遠の章』(ともに三栄書房)がある。

    
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