ブラジルW杯、日本代表はこう戦え!! 北條聡×二宮寿朗スペシャル対談【後編】

日本代表が本大会で勝つためにどう戦うとよいのか、長年サッカーを見続けてきたサッカーライターの二人である北條聡×二宮寿朗のスペシャル対談【後編】を紹介します。

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厳しい戦いになるギリシャ戦

――ギリシャ戦のキープレーヤーになりそうな選手を挙げるとしたら?

北條 齋藤選手ですね。ギリシャ戦は、日本の目指してきた攻撃的なサッカーが最も試される試合でしょう。どうやって堅い守りを破り、点を取るか。

二宮 相手が引いて守りを固めて来た場合、突かないといけないないですからね。

北條 攻めたい日本と守りたいギリシャ。相撲で言う「相四つ」なので、日本は主導権を握って戦いやすい。ただ、得意の差し手で戦えるのはギリシャも同じ。あのガチガチのディフェンスを攻略する上で、非常に有効なのがペナルティーエリアへ切れ込む斉藤選手、あるいは香川選手のドリブルだろうと。対応を誤れば、PKのリスクがある。
ギリシャの基本フォーメーションは4-3-3だけど、守備の局面では4-5-1に近い。日本のサイドバックが攻撃参加すれば、相手のウイングは下がって対応してくる。人数をかけて守るので、日本は数的優位をつくりにくい。ギリシャのセンターバックは強くて高さもあるので、サイドから単純にクロスを入れてもなかなか得点は奪えない。
そうなると、ワンツーなどのコンビネーションやドリブルを駆使した中央突破がポイントになる。従って狭いスペースで勝負ができる選手がカギになってくるでしょう。もちろん、本田選手のミドルシュートや背後のスペースを狙う岡崎選手の飛び出しなど、あの手この手を使いながらフィニッシュまで持っていく。ここに齋藤選手のドリブルという別の要素が加われば、ギリシャのディフェンス陣は相当に慌てると思う。

二宮 齋藤選手は、Jリーグでの川崎との試合を見ていても、ペナルティーエリアの中に入る能力がすごく高い。ペナルティーエリア内に入れば、相手は焦る。ボールタッチが独特で足が引っかかってくれないから、簡単には飛び込めない。齋藤選手が突破口になる可能性は高いでしょう。

北條 ポイントになるのは真ん中でくさびのパスを受ける動き、つまりポスト役の働きでしょう。このワンクッションが入ることで、相手のマークが外れやすくなる。

二宮 一人で突破するのではなく、一回渡してリターンをもらうなど連動しないと。

北條 特にそのパターンで活きるのが香川選手だと思う。大迫選手や本田選手がどれだけギリシャのディフェンス陣を背負ってリターンパスを出せるか。齋藤選手をジョーカーとして使うなら左サイド。ザッケローニ監督がどんな起用法をイメージしているのか……。

メンバー交代のバリエーションで活路を見い出す

二宮 例えばそこで一の矢、二の矢を打てるのか。今まではそういう状況でハーフナー・マイク選手を入れていた。こっちがダメならこっちでという考え方。でも、今回ザッケローニ監督がやりたいのは、同じ手を重ねてやりたいのだと思う。例えば、齋藤選手を投入したあとに、さらに大久保選手を投入するなど。

北條 だから、誰を交代のカードとして使うかは非常に難しい。試合の流れで決めるんでしょうけどね。場合によっては2トップもあり得るかもしれない。

二宮 大迫選手をトップ下という可能性もありますし、本田選手を1トップの可能性もある。岡崎選手をトップにして左右を齋藤選手、大久保選手という手も考えられる。そのバリエーションはかなり増えている。いろんな“地上戦”のケースが考えられます。
サイドからクロスボールを上げさせないという意味のオプションとして、長友選手を一列前に持ってくるという手もあると思います。サイドバックには今野選手を入れて封じるという手もある。

北條 ただギリシャは人数をかけて守るから、ボランチのどちらかが攻め上がっていかないと数的優位はほぼつくれない。五人目のアタッカーが必要になる。ここは遠藤選手の役どころでしょう。日本のサッカーをやり抜くなら、確実に必要な存在と言っていい。遠藤選手を「使う」「使わない」の基準の一つは、日本がボールをキープする時間でしょう。ボールを持つ時間が長ければ長いほど、遠藤選手はその能力を最大限に発揮できる。
三戦目のコロンビア戦は、前の二戦の流れによって、どう戦うべきかが決まるでしょう。
コロンビアが二連勝していたら、ある程度メンバーを落としてくるかもしれない。四年前の南アフリカW杯の三戦目で、日本は引き分けでも突破が決まる状況だったの対し、相手のデンマークは勝たなければいけなかった。自分たちの置かれた状況をしっかりと把握した上で戦えるかどうか、そこが重要になってくると思いますね。

構成/ 神野哲也

【著者プロフィール】
北條聡(ほうじょう・さとし)
1968年、栃木県出身。大学卒業後、1993年のJリーグ開幕と時を同じくして、出版社に入社し、『週刊サッカーマガジン編集部』に配属される。以降、サッカー日本代表担当、『ワールドサッカーマガジン』編集長を歴任し、W杯やUEFAチャンピオンズリーグなどを取材。2009年から2013年10月まで『週刊サッカーマガジン』の編集長を務めた。2013年10月に退社し、独立。歴代の日本代表を取材してきた独自の視点でサッカーを切り取る。著書に『サカマガイズム』(ベースボール・マガジン社)、共著に『正しいバルサの目指し方』(ベースボール・マガジン社)がある。

二宮寿朗(にのみや・としお)
1972年、愛媛県出身。大学卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社。格闘技、ボクシング、ラグビー、サッカーなどを担当し、数々のスポーツシーンの目撃者となる。2006年に退社し『Number』編集部を経て独立。人物に寄り添った熱い原稿には定評があり、多くのサッカーファンに人気を集めている。著書には『岡田武史というリーダー 理想を説き、現実を戦う超マネジメント』(ベスト新書)、『闘争人~松田直樹物語』、『松田直樹を忘れない。~闘争人Ⅱ永遠の章』(ともに三栄書房)がある。

【書籍情報】
『サッカー日本代表 勝つ準備』
著者:北條聡、二宮寿朗
全国の書店にて、実業之日本社より好評発売中

成功と失敗から学ぶW杯優勝への道
5大会連続五度目のW杯出場となるサッカー日本代表。今や大会常連国の一つになりつつある。それは、選手のレベルアップもさることながら、日本サッカーの経験値が備わってきた結果とも言える。本書で取り上げるテーマは、「勝つ準備」。キャンプ地選定、メンバー選考、強化試合のマッチメーク、フィジカル・メンタルコントロールなどの事前準備から10年後、20年後を見据えた未来の日本代表の強化策まで、短期、中期、長期的な日本サッカーの「準備」を北條聡、二宮寿朗の両氏が独自の視点で論じる。
川口能活(FC岐阜)×二宮寿朗、原博実(日本サッカー協会 専務理事兼技術委員長)×北條聡の特別対談も収録!

    
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