TV番組の視聴率が「死語」になる日

普段見ているTVがアナログからデジタル化したことによってTV番組の放送環境は大きく変わりました。TV番組の視聴率が「死語」になる日は近いのです。


視聴率調査変革の時

これまでの送り手側の一方的な情報発信を、受け手が受容するという時代から、受け手が数ある送り手側の情報の中から、本当に見たいものを選択するという時代になりました。TV番組の発展とともに、日記式調査からオンライン調査、ピープルメーター調査へと発展してきたTV番組の視聴率調査も大きな岐路に立たされています。「デジタル化」の試練をまともに受けることになるからです。

デジタル化による視聴率の変化

視聴率調査にとっての試練は、一つは放送環境の変化、もう一つは視聴態様の変容です。「デジタル化」は「多局化」と「多メディア化」をもたらし、「視聴率調査のあり方」を大きく変えます。

多局化による視聴率の変化

「多局化」により、多彩なチャンネルが登場すると、視聴者の選択は多岐にわたり、視聴の分散化はいっそう高まります。高視聴率番組は姿を消し、多くは1~2%の低視聴率番組ばかりとなってしまう可能性もあります。そんな変革のときに、従来のマスメディアの到達量を測る視聴率は、本当に必要なのでしょうか。

多メディア化による視聴率の変化

また「多メディア化」による多様なメディアの出現に対応する新しい測定機の開発が必要です。「多メディア化」は視聴者のTVの見方にも大きな影響を与えます。「蓄積型放送サービス」の登場によって、人は時間に関係なくTV番組を楽しむことができます。放送時間にしばられず、再生視聴をベースにした「自分だけのタイムテーブル」で、TVを楽しむようになります。そんなとき、従来の「実放送」のみを測定対象にした視聴率は、有効な尺度といえるのでしょうか。

自宅以外のTV視聴の増加

競技場の大画面やスポーツバーなど、TV放送をさまざまな場所で楽しむようになってきています。そんなとき、自宅の中だけの視聴率測定で十分なのでしょうか。また、「ワンセグ」や「カーナビ」の出現は、自宅外のTV視聴を飛躍的に広げています。自分の見たいときに、見たいところで、見るような視聴形態に、視聴率はどう対応すればいいのでしょうか。

ターゲットを意識したチャンネルへの対応

さらに「多局化」されることによって、送り手はターゲットを意識したチャンネル作成を行うでしょう。例えば若者に狙いを定めたチャンネルなら、「ロックミュージック」や「サッカー」をラインナップするとすれば、そのチャンネルの視聴者特性は自然と決まってきます。そんなとき、年齢別個人視聴率を調べる必要はあるのでしょうか。「デジタル時代」でも従来と同じような営業が展開されるとしたら、よほどサンプル数を多くして、対応する必要があります。もしくは、測定対象チャンネル数を極力絞ることが必要になります。もしくはいっそ編成や番組制作のためのデータに限って利用するように、測定方法の転換を図ることも必要かもしれません。

そうであれば視聴率を毎日測定する必要もなければ、局別に表示する必要もありません。どんな番組が好まれているのかを、好感度の高い順から300程度ランキングを作れば十分でしょう。もしかすると、視聴率の高く出た番組から共通因子を抜き出し、番組制作に生かす新手の「質」の調査が生まれるかもしれません。あるいは究極の視聴率調査として期待され、運営されては休止に追い込まれてきた、メディア接触と商品購入の関係を明らかにする「シングル・ソース」の調査が、またまた息を吹き返すかもしれません。

いずれにせよ、到達メディアとしてのTVが、広告取引のための「通貨」として利用してきた「視聴率」が、従来とは意味が異なる指標となるでしょう。メディアと視聴態様の多様化・変化に遅れることなく、調査開発を進めていかない限り、視聴率に明日ばありません。デジタル化はTV番組の視聴率が「死語」になる時代の始まりなのかもしれません。

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参考本

「視聴率の正しい使い方(藤平芳紀)」

    
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