逃走中の強盗が立てこもった恐怖!主婦が犯人と過ごした、白昼の5時間(1)

最近の治安悪化で、私たちの普段の生活が突然危険にさらされる可能性が高まる、嫌な時代。
犯罪情勢を毎年警視庁が発表する『警察白書』の調べでは、日本全国で起こったコンビニ強盗の数は平成24年には536件ほど発生し、増加傾向にある。
比較的安易なので軽い気持ちで行う人も増え、とても哀しい世の中だ。

今回ご紹介するのは、主婦である新垣ひとみさん(仮名/39歳)。
彼女は、日常生活のすぐそばで一般市民を引き摺り込もうとチャンスを窺っている卑劣な犯罪に、巻き込まれた。
なんと、コンビ二強盗の犯人が、主人と6歳になる娘と慎ましやかに暮らすシアワセな我が家に逃げこんできたのだ。
今思い出しても足の震えが止まらないその時の恐怖を、今日は話してもらいたいと思う。


静かにしていれば殺さない

私が会社を辞め、夫との結婚生活を選んだのは、7年前のこと。
今は神戸の新興住宅地に一軒家を購入し、夫と子供の3人暮らし。つつましやかに暮らしています。
趣味といえば、ママ友とのお茶飲み会か、猫の額ほどの庭でおこなう家庭菜園くらいでしょうか。

平凡な家庭には波風もたたず、ゆっくりとした時間が過ぎるだけでした。
突然、平穏を打ち破ったあの日までは……。

今年1月、私はいつもと変わず、夫と娘に朝食を作り、会社と小学校に送り出し、本格的に家事に取りかかりました。
午前10時頃のことだと思います。食器の後片付けもほどほどに、部屋に掃除機をかけ、古新聞の整理。
それから洗濯機を回しました。脱水を終えた、洗濯物を干すために中庭に出ると、干し台のそばに人影があったんです。

「あのぅ、どちら様でしょうか?」

つっ立っているのは男。細面で頬がこけ、黒いスエットを着ていました。50がらみの男。
よくみると、手に何かを握っています。ギラリと陽の光を跳ね返す包丁でした。
私は恐怖のあまり、その場で固まってしまいました。まさにヘビに睨まれたカエルです。本当に恐怖を感じると、人間は体が硬直してして声も出ないことがわかりました。

「奥さん、静かにしてたら殺さへんさかいに…」

男は庭に出た私に包丁の尖端を突きつけて部屋の中に促し、ガラス戸をピシャリと閉めました。
部屋の中をギロリと眼を光らせて、見渡しています。なんで、この男はここに。信じられないという想いが先立ち、なんだか現実味のない感じがしました。
でも、現に目の前には鋭利な刃物。なんとか現実を受け止めようとします。

「他に誰もおらんのんか、え? 家の中や」
「は、は、はい…」

緊張で乾いた咽喉を何とか動かし、やっとの思いで声を出しました。

「そうかぁ、ほな、ええなぁ。わしも運がええわ。住宅街でどないしようかなぁって思うとったんや」
「え、ええぇぇ…」
「ワシ、そこのローソン襲ってきたんや。強盗や、強盗さんやで、奥さん」
「ひっ!」
「でな、ポリが来よったから逃げてんねん。悪いけど、ほとぼりが冷めるまでここにおらせてもらうで」

私は、“強盗”という2文字に卒倒しそうになりました。従わなければ殺される。ひょっとすると、犯されるかもしれない。何とか耐えて、首を縦に振りました。
それから6時間、男は警察の追っ手が遠のくのをウチの家で過ごすことになったのです。

警察の拡声器が住宅街に響く

男は私に家事の続きをやめるように命令して、ソファで対面に座るように指示しました。
テレビ、コンポなど音の出るものはすべて消し、時計の針の音だけがリビングに響いていました。

「子供、大きいんか?」
「旦那、何してるんや?」
「歳、いくつなんや、あんた」

当然ながら、私の口数が少ないために一方的に男は質問してきます。答えたくないことには答えませんでした。それが私のできる唯一の抵抗でした。

長い1時間が過ぎ、手持無沙汰になった男は室内を物色しはじめました。
想い出の詰まった家族写真や記念に買ったグラス類……正直、そんな汚れた手で触ってほしくないと思いましたが、言いだすことなどできません。
そのうち、男は「腹が減った」と言い出しました。

「なんでもええから、メシ作ってくれへんかな、奥さん」
「ええっ? ご飯ですか?」

買い物にも行っていないし、食材などごくわずかしかありませんが、拒否すれば、何をされるかわからない。その恐怖が先立ちます。
仕方なく、冷蔵庫の残り物でチャーハンを作りました

「おおぉ、焼飯かぁ。あっ! ワシ、ピーマン嫌いやねん。なんでピーマン入れんのん」

こんな状況なのに男は母親に言うようなとぼけた声で言い、嫌いなピーマンをスプーンで避けています。
男は食べている間もずっとオナラをしていて、大きな音が鳴るたびに、私がびっくりして怯えるので、それをみると喜んでいました。
そのとき、表で人の声がしました。どうやら拡声器のような声です。

「○○町の住民の皆さん、一時間ほど前、コンビニ強盗事件が発生しました。包丁を持った犯人はこの近隣に潜んでいる可能性が高く、必ず家の鍵を閉め、外出を控えてください」

警察でした。警察は男がこの地区のどこかに隠れていることをつかんでいる様子でした。男の顔はみるみる青ざめます。

「おい、こっちこい!」

そう男はいらだったように怒鳴ると、スプーンを包丁に持ちかえて、私を引き寄せました。少し警察を恐れているようです。

(丸野裕行)

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