娘を人質にされた母親は…!主婦が犯人と過ごした、白昼の5時間(2)

幸せな生活が一変、コンビニ強盗がマイホームに押し入ってきた。
主婦である新垣ひとみさん(仮名/39歳)が一番気がかりなのは、学校から帰ってくる娘のことだけ。

彼女は、命よりも大切な娘を守らなければない危機をどのように切り抜けたのか。
では、続きを聞いていただこう。


奥さん、小便せんでもええんか?

強盗の隣で小さくなっている私は、なんだか奇妙な気分に襲われました。自分は何か悪い事でもしたのだろうか、罰が当たるようなことをしたのだろうか、自分を責めるような気持になり、涙が出てくるんです。男は、私の涙に気がつき、顔をしかめました。

「なんやねん、オレなんにもしてないやんけ! ちょっとここでほとぼり冷まさせてくれっていうてるだけやろうが!」
「す、すいません…」

女の涙を見ると、男はうろたえるものなのでしょうか。
男は、ティッシュの箱をこちらによこし、ブツブツと小声で文句。

「ちょっと、ついてきてくれ。小便や」

それから私にトイレについてくるようにいいました。

「俺、小便するから、そこにいとけや」

ドアを開け、偉そうに放尿する男。私は、ドアの前で背中をむけて待っていました。自分の家のトイレで、こんな男が用を足す、というのは、本当に腹立たしいものです。

「窓あるんやなぁ、ここ。こっから逃げられたら困るから、奥さん、面倒やし、あんたもやっとくか? 小便や。オレ、見んようにするから」

男は信じられない言葉を吐きます。誰がこんな男の前で……。確かに、トイレには行きたいとは思いましたが、こんな男の前では絶対に嫌です。
我慢してリビングに戻ると、もう昼。男は、キッチンに立って、子供のお菓子を物色し、冷蔵庫の中のビールを飲みながら、くつろいでいます。
本当に何様なのか。恐怖というより、怒りが私の中で大きくなっていきました。

でも、愛娘が帰ってくる時間が近づいています。どうしよう。解決策がないまま、無情にも時計の針は時を刻んでいました。

ぬいぐるみに隠した刃物が娘に…

2人ともリビングで押し黙ったまま、午後1時を迎えました。給食を食べた小学1年生の娘が帰ってくる時間。最悪の事態です。
ランドセルを背負った娘が、元気いっぱいに帰ってきました。
リビングまで滑り込んでくる娘。

「お母さん、ただいま~!」
「あ、あ、あ、梨央ちゃん、お、おかえり…」
「今日なぁ、カイトくんと一緒に帰ってきてん」
「そ、そ、そうなん…」

娘が男に気づきます。

「このおっちゃん、だれぇ?」
「え、えっと、えっと…」

焦る私はしどろもどろ。

「おっちゃんなぁ、お母さんの親戚やねん。一緒に遊ぼっか」

私は男に近づかないように娘を抱きしめましたが、何も知らない娘は男の元へ。
チャック付の牛のぬいぐるみに包丁を隠して、男は自分のすぐそばに置きました。何かあれば、すぐに娘を殺す、という脅しのようです。

私が、男と遊ぶ娘を見て、ヤキモキします。汚らわしい手で娘に触らないでほしい。
でも、私の思いとは裏腹に子供は男になつくように遊んでいます。

男が娘と絵遊びをはじめたところで、突然インターフォンが…。
ディスプレイを覗くと、そこには警察官が立っていました。

「すいません、奥さん。コンビに強盗の犯人が逃走しているので、何か変わったことはありませんか?」
「は、はい…」と、うろたえる私。
「おい、娘がどうなるか、わかってるな。なんとか誤魔化さんかい!」
「いえ、何もありませんけど…」
「一応、ここらへんに潜伏しているようなので、奥さん出てきていただけませんか?

男が娘を抱き、玄関先を顎でしゃくります。
それから近づいてきた男は、私の耳元でこう囁きました。

「わかっとるやろな。娘の腹から腸でてんの見たないやろ…。アカデミー賞もんの芝居、頼むで」
「は、はい…」

男はぬいぐるみを娘のお腹辺りに突きつけました。
怯える私。玄関先へ急ぎます。

「奥さん、変わったことは?」
「ないですよぉ! おまわりさんも大変やね! えらい男前。お茶でもご馳走したいくらいやわぁ」

「いえいえ、勤務中ですから…。そうですか。外出はやめといてください。わざわざホンマありがとうございました。決まり事なもんで」

警察官は何の疑いも持たずに帰っていきました。途端、男の笑い声。

「いやぁ、ええ芝居やなぁ! 気に入ったわ! このまま、旦那が帰ってくる晩までいて、寿司でもとって、みんなで飲もかぁ! ハハハハハ!」

こんな言葉を聞き、私の恐怖と緊張の糸はプツンと切れてしまいました。

「アンタ、ええ加減にしいや! アンタみたいなカスににやられるぐらいやったら、私が娘やるわ! 言わへんから、はよ出てけ!!」

言うと、男は所在なさげな目でオロオロしはじめ、トボトボと淋しそうに家を出ていきました。
男を送り出したのは“母は強し”の言葉でした。

5ヵ月後、男が逮捕されたニュースを観ました。同じくコンビニ強盗の罪で現行犯逮捕。警察は余罪を追及しているとのことでした。

最後はあんな強気な言い方をしてしまいましたが、やはり怖いです。私の家に立てこもる前の犯行。私は知っているのに、それを警察に告げる勇気はありません。

(丸野裕行)

前の記事

「逃走中の強盗が立てこもった恐怖!主婦が犯人と過ごした、白昼の5時間(1)」

    
コメント