立件不可の新手詐欺“スシスシ詐欺”とは何ぞや?

様々な詐欺が巷にあふれてる。賢い詐欺師におバカな詐欺師……
今回は、ライター丸野が厳選した、くだらない詐欺師・坂田(仮名/61歳)の経験談を聞いていただきたい。

今年で詐欺師歴40年になるオレは、数々の騙しの手口を研究してきた。
行列のできる店の前で勝手に注文を聞いてまわって前払いで金を受け取ったり、ラブホテルの前で不倫らしきアベックをカメラでパチリ、探偵のフリで口止め料をもらったり、人の敷地で勝手に松茸狩りの看板を出して利用料を騙し取ったり…。

だが、すべての手口は刑法264条の詐欺罪に当たる。もう年だ。
前科3犯で2度と塀の中は勘弁願いたいオレは、立件しづらい“ゆる詐欺”で、老後の生活を支えようと考えた。
今までの経験を加味し、あみ出したのが、オレオレ詐欺ならぬ“スシスシ詐欺”。
オレは現在、この方法で月50万弱の金を稼いでいる。男やもめにしては上々の稼ぎだ。
今日は“スシスシ詐欺”の手口と今までにオレが巻き込まれた騒動の数々を聞いてもらおう。


息子が注文の数を間違った

なぜ、寿司なのか。それはオレが詐欺師になる前に、鮨屋に板前修業に出されていたからだ。
ネタの仕入れや酢メシ作りはお手の物。一連の動作を体が覚えている。
寸借詐欺にみえるのだが、それ相応の品があるので、刑法には触れない。では、手口の説明といこう。
まず、仕出し屋の衣装を用意。昼食前の11時頃、目ぼしい複数の会社が入居したオフィスビルに向かい、各会社を直接訪ねる。

「すんません! 別のフロアに配達するはずの寿司の折り詰め5個を50個と息子がケタを間違えて注文受けちゃったんです。大量に余ってしまって…このまま帰るわけにもいかないんでお安くしますから、買っていただけませんか?」

本当は1500円のところを半額の750円で…と持ちかける。年寄りが悲しい眼をしていれば、相手の同情心につけ込めるのである。
昼食時に来ることもあって、安さに釣られて買ってみると、中身はかっぱ巻きやかんぴょう巻き、しんこ巻きの巻き物のみ。

1500円という元値から期待した握り寿司は入ってなく、もともと200円もしない寿司しか入っていない。しかも醤油さえついていない。
折り詰めには店の名前も電話番号も記載されておらず、苦情の入れようもないのだ。

「まぁ、お気の毒ですね! じゃあ、みなさん! お父さんにお昼は協力してあげて、お寿司にしましょう」

こんな声をどこのオフィスでもかけてもらえる。3~4件も回れば、すべて完売。

現金支払いの対価を生鮮食品で渡しているので、詐欺として立件するのは難しく不可能に近い。
おまけに相手はどこの誰だかわからず、領収書もない。不実告知を立証し、寿司を食べていない状態で契約無効を争う程度しか出来ないのだ。
1日数時間、自宅で寿司を作り、車でオフィスを回って、ものの15分で仕事が終わる。材料費の負担も少なく、順調なときは還暦のオレにとっては楽な仕事であった。

上の階はウチの系列の会社だ!

だが、一筋縄ではいかない職場もある。

「私たち、これ全部いただくから。それで、そのぉ息子さんはおいくつ? どこの保険に入られてるの?」

こんな交換条件が当然の湯に飛び出すのが保険会社の営業所。

大したことはないが鬱陶しいことは確かだ。飛び込んだ会社によってこんなこともある。

「こんにちは! あのぉ~、寿司を…」
「はい、何かご用?」と40代半ばの男が応対にやってきた。
「当選されたんですか? おめでとうございます!」
「で、そこに最終通告って書いてあるだろうが! あぁ~!!」

な、なんだ…!? いったい。

いくつもデスクが並べられたオフィスで、15人くらいの男たちが電話に向かって怒鳴ったり、甘い声で話してみたり、と忙しそうにしている。

「いやぁ、あのぅ、ウチの息子が注文を聞き間違ってしまいまして…」
事情を話すと、男が言った。

「アンタ、それ寿司詐欺だろ? ネットでアンタ、噂になってるよ」
「え、え、え、えぇ…!?」

言葉に詰まると、男は優しい顔。

「詐欺師が詐欺師のところに来ちゃダメだよ。ウチだって、バカ騙してるんだから…」

早々に退散してから、後日わかったのだが、その会社は民放テレビ局で振り込め詐欺と懸賞詐欺の悪質業者として取り上げられていた。

「おっちゃん、苦労してるんやな、アニキらが来るから全部もらうわ」と言ってくれたヤクザ経営の企業。

こんな代物を売ったら最後、街中血眼になって探される。
さらにおかしな会社に飛び込めば、身の危険すら感じることもある。
同じビル内で25個売って、階下の企業へ。

「すいません! ウチのせがれが…」

いつもの調子で会社に入ってゆくと、役職が上と思しき男2人の前に7人の若い社員たちが立たされている。

「おたくはどなた?」
「…寿司屋です。あのぅ…お昼が決まってないのであれば…」
「上の階の『萩原商事』も買ったんだな?」事情を説明すると、男がオレに訊ねてきた。ハイ、とオレ。
「ちょっと待ってて…、買ってやってもいいから。お前ら、今月のノルマ言うてみろや!!」オレから社員たちに向きなおし、声を荒げる男。
「20件達成です!!」
「誰1人、達成できてないじゃろうが!!」

目の前で、全員がブンッと振りかぶられた木製のバットで殴り倒された。こ、恐っ!

「おい、おーい! ペンチ持ってこい! お前ら、ウチの厳しさ教えたるわ」

ペンチでいったい何を!?  そう思った瞬間、オフィスの電話がけたたましく鳴った。

「はい。寿司屋? おお、今いる…何? あぁ~? どういうことだ! このジジイ!! 上の会社はウチの系列だ!!」

ヤ、ヤバい! オレはその場に寿司を置き去りにして、自分の年齢を感じさせない猛ダッシュで非常階段を駆け下りた。
上から、怒声が追ってくる。こ、殺されるぅ~!!
同じビルに入っていても、テナント同士、交流すらないのが一般的だ。しかし、系列でつーつーとは…。
なんとか逃げ切ったが、それから数ヶ月は現場復帰はムリだった。

法律などではなく、直接制裁を加えられる恐れもある“スシスシ詐欺”。
だが、ごく普通のビルにマトモじゃない会社が多く事務所を構えていることを思うと、普通に働くことの方が難しい、なんて思ってしまう。
オレは手っ取り早く稼げるこの手口で、今日も日本経済を支える主要なビジネス街を巻き寿司抱えて、男還暦ひた走る。

(丸野裕行)

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