なぜ日本人はつけ麺が大好きなのか? つけ麺の魅力と誕生の歴史

東京に来るとびっくりするのがつけ麺。初めてつけ麺を食べたときのおいしさに感動した人も多いのではないでしょうか。今回は日本人が大好きなつけ麺の魅力を余すことなく、ご紹介します。


■つけ麺はいつ生まれたのか?

つけ麺は、東京都豊島区の「東池袋大勝軒」の店主山岸一雄さんが修業時代に考案したものです。山岸さんは東京都中野区の「栄楽」というお店で皿洗いから修業を開始し、東京都中野区の「大勝軒」で店長を務めたあと、昭和36年に独立しました。修業時代の「栄楽」で職人たちは、茄で上がった麺をザルで湯切りしてドンブリへ移す際に、ザルに残った少量の麺を集めました。そして量がまとまったところで、湯呑みにタレ、ダシ、唐辛子、ネギを入れて麺ツユを作り、もり蕎麦のように麺をくぐらせて食べていたのです。山岸さんが中野区の「大勝軒」に移ってからも同様にして食べていたところ、お客さんの興味を引き、商品化のために改良を重ね、昭和初年に晴れてメニューに加わりました。お客さんの前に初めて登場したつけ麺は、豚骨、鶏豚ガラ、サバ節、煮干し、野菜などのダシに、醤油ダレ、唐辛子、砂糖、酢などで味付けした甘辛酸っぱいツユ、そして麺は多加水の太麺でした。

実は、メニュー名も「つけ麺」ではなく、「特製もりそば」だったのです。のちに代々木上原の「大勝軒」で出された際は「つけそば」でした。いつどこの店で「つけ麺」とネーミングされたかは定かでありませんが、昭和40年代に「元祖つけ麺大王」がチェーン展開したことで、広く一般に認知されるようになりました。山岸さんはレシピを隠すことなく、雑誌で公開したり、弟子志願者を広く受け入れて製法と味を惜しまず伝授したので、いまでは全国に「山岸チルドレン」が店を構え、つけ麺が普及しました。そして、つけ麺元祖である「東池袋大勝軒」は平成19年3月、多くのつけ麺ファンに惜しまれながら、閉店しました。

■つけ麺の魅力とは?

つけ麺の魅力として一番なのは、麺そのものの味や食感がわかりやすいことです。日本人は素材そのものの味が生きた料理を好む傾向が強く、麺においても当てはまります。蕎麦ならば「せいろ」、うどんならば「もり」、麺とツユが別々になっているような、麺そのものを味わいやすい食べ方が好きなのです。

例えばパスタにおいても、アルデンテすら知られていなかった昔の日本では、ナポリタンやミートソースのような麺の味がわかりづらい食べ方が主流でした。しかしイタリアンが普及した現在では、ペペロンチーノのように麺そのものを感じやすいシンプルな食べ方が人気となっています。日本人の嗜好を考えれば、つけ麺が支持されるのは当然の成り行きだったのです。

■つけ麺が人気になった理由

つけ麺が人気となったのは、麺の品質の向上、麺とスープの相性が挙げられます。ラーメンが国民食となって店舗間の競争が激化し、価格競争する店、味で戦おうとする店に分かれました。味で戦おうとする店は、味に磨きをかけるためにスープに使う素材の品質を上げたり、素材の分量を増やすため、原価率が高くなります。そこで販売価格を抑えるためにコストカットとして、自家製麺に到達しました。麺を自家製にするとコストが削減できるのがラーメン業界。自家製麺の店が増えることで、それまでは大ロット以外の特注を受け付けていなかった製麺所も、小ロットで受注せざるをえない状況となりました。製麺所がお店のスープに合う麺を供給するために商品開発を行うことで、麺そのものの品質向上につながっていきました。

■お店のメリット

醤油ラーメンとつけ麺のみ、豚骨ラーメンとつけ麺のみといった具合に、味は一種類のみで、同じ味のラーメンとつけ麺を出すスタイルが東京で一般的となりつつあります。これは、何種類もの味を作り分けるのがオペレーション的に面倒、という理由もあります。しかし、何種類もの味があるとなんでも屋の印象となり、お客さんにこだわりが伝わらないというイメージ上の問題があります。さらに、夏場に客足が落ちるラーメン店にとって、つけ麺は、売り上げに大きく貢献してくれます。東京でつけ麺が人気のお店では、初夏から秋にかけては8割以上のお客さんがつけ麺を注文しています。また、麺は冷たくてもツユは温かいため、夏場につけ麺の魅力に開眼したお客さんが、冬も継続して食べてくれるケースも多いのです。このように一年を通して販売できる点が、ラーメン店の定番夏メニューである冷やし中華との大きな違いとなり、つけ麺の普及につながっています。

つけ麺が食べたくなってきましたね。ラーメン評論家の石神秀幸さん著者の「ラーメンの真髄」では、つけ麺だけでなくラーメンの魅力が紹介されています。ラーメン好きの人は読んでみてはいかがでしょうか?

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参考本

「ラーメンの真髄(石神秀幸)」

    
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