活性酸素が疲れの原因だった。疲労物質FFとFRとは?

ヒトが活動する場合、筋肉や脳内などあらゆるところで大量の酸素を使いますが、その過程で「活性酸素」という物質が生まれます。これは、呼吸をして生きていく以上、どうしても発生する物質です。この活性酸素が、すべての疲れの原因なのです。


活性酸素とは

活性酸素は、強力な酸化作用をもっており、それにより体に侵入したウィルスなどの外敵を分解してくれます。しかし、活性酸素の作用は諸刃の剣で、ヒトの細胞を酸化させてしまうやっかいな面があります。

細胞が酸化するとは、細胞が錆びつき傷ついた状態になることであり、酸化してしまうと本来の機能を果たせなくなります。体のすべては細胞からできていますから、その一部が正常に機能しなくなると、全体のパフォーマンスも落ちることになります。

では、呼吸をしているだけでどんどん細胞が酸化してしまうのかといえばそうではなく、通常なら体には活性酸素から細胞を守るシステムが働いており、問題になることはありません。ただし、激しい運動をしたり、強いストレスを感じたりすると、活性酸素の量が一気に増えて細胞を守るシステムが処理できる量を超えてしまいます。

そして、溢れだした活性酸素によって細胞が傷ついて、結果的に機能低下を起こしてしまいます。この機能低下が、疲れの原因です。

疲れの直接の原因となる物質「FF」

疲れのおおもとである活性酸素が細胞を錆びさせた際、酸化した細胞から出る老廃物の一種から誘発される物質があります。それが、疲労因子FF(ファティーグ・ファクター)です。

疲労因子FFの存在が明らかになったのは、2008年のことです。国際疲労学会において、東京慈恵会医科大学ウィルス学講座の近藤一博教授によって報告されました。実験で、徹夜や激しい運動をさせたマウスの臓器を調べた結果、あるタンパク質が通常の3~5倍、肝臓や心臓にいたっては10倍もの量、検出されました。

このタンパク質こそ疲労因子「FF」だったのです。さらに、疲労因子「FF」を元気なマウスに投与したところ、くるくると小気味よく車輪を回していたマウスが、徐々に運動をしなくなり、疲れて動けなくなったのです。

実験により示唆されたのは、疲労因子「FF」は疲れをおこしてしまう直接の原因であること、そして疲れている状態とは、体に疲労因子「FF」がたくさん増えた状態であること、というものでした。

「FF」で疲れが測定できる

この発見は、画期的なものでした。なぜなら、今まではあいまいな点が多かった「疲れ」そのものを、客観的に測定できるようになるからです。疲労因子FFは、疲れると血液中にも増えていきます。それを利用すれば、血液を採取してその量をチェックし、通常時と比べることで、自分がどれくらい疲れているかがリアルタイムで判別できるわけです。

このような調査方法で疲れを測定することは、労働者の健康管理を考える労働衛生の分野で注目されています。最近でも、バス運転手の長距離運転による事故が問題になり、政府が過労運転防止対策に乗り出しました。

たとえば、長距離バスやトラック、パイロットなどの職業の人に対し、就業前に疲労因子FFの血中濃度を測定できれば、業務を遂行できるだけの判断力や注意力が備わっているかが客観的に判断できます。これにより大きな事故が防げるようになるなら、社会的にもきわめて有意義といえるでしょう。

疲労回復物質「FR」

疲労因子FFが増加したときに、人の体はそれを増えるがままにしておくのではありません。抑制しようとする仕組みが、ちゃんと備わっています。そこで登場するのが、疲労回復物質FR(ファティーグ・リカバリー・ファクター)です。

体内で疲労因子FFが増えると、呼応するように疲労回復物質FRが現れてきます。この物質は、傷つけられた細胞の修復を促す働きがあります。疲れから回復するということは、傷ついた細胞が修復されることに他なりませんから、この疲労回復物質FRの値が、そのまま疲れに対する回復力を表します。

同じような運動をしても、翌日に疲れが残る人とあまり残らない人がいるでしょう。それはこの疲労回復物質FRの反応性に関係しており、反応性が高い人は疲れが残りづらく、低い人は疲れが残りやすいといえます。FRの反応性を高めることができれば、疲れの残りづらい体になることができるでしょう。

疲労回復物質FRの反応性を高めるためには、食事やライフスタイルなどの生活習慣を変えることがポイントです。

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参考リンク

「疲労回復(日本予防医薬)」

    
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