国の疲労回復研究プロジェクトでわかった! 国も認める疲労回復成分「イミダペプチド」とは?

毎日の糧である食事に疲労回復の要素を取り入れられれば、疲れに対抗する強力な味方になります。しかし、本当に疲労回復効果がある食材は、残念ながら数少ないものであり、世の中に出回っているもののほとんどが何の根拠もなかったり、疲労感だけを緩和するものであったりすることが多いのです。

その一方で、近年の疲れにまつわる研究の目覚ましい進歩により、本当に疲れを取ってくれる「疲労回復物質」が、いくつか発見されています。しかも、それは高額な健康食品などではなく、極めて身近にある「鶏の胸肉」から見つかっています。国も認める疲労回復成分「イミダペプチド」について紹介します。


疲労回復物質とは

疲労回復物質は、摂取することで、作業中や作業後の疲れを軽減し、さらに疲れが軽くなることで疲労回復のスピードも上げてくれるという働きを持った成分のことです。

疲労回復するか科学的に定義するには?

例えば、あなたが1,000mを走るとしましょう。コンディションは万全。まったく疲れていない状態にあります。一度目は、なにも特別なことはせずに、ただ走ります。走り終わったら、その疲労度と回復にかかる時間を調べます。

そして後日、疲れが抜けて再びコンディションが万全になったタイミングでもう一度走るのですが、今度は、「とある成分」を摂取してから走ったとします。走り終わり、再び疲労度と回復にかかる時間を調べます。

この一連の手順で、「とある成分」を摂取してから走ったほうが、疲労度と回復にかかる時間が明らかに違ったなら、「とある成分」は疲労回復物質であるということができます。やや回りくどい言い方かもしれませんが、疲労感と本当の疲れが異なることがある以上、定義も科学的なものにしておかなければいけないのです。

国も取り組む疲労回復物質の研究

慢性的な疲れに悩む人々の数は多く、疲れを取ってくれる医薬品や特定保健食品などの開発を望む声は高まっています。

このような要望に応えるために、2003年には、大阪市、大阪市立大学、食品メーカー、医薬品メーカーなど18社が連携して「疲労測定化および抗疲労食薬開発プロジェクト」をスタートさせました。総額15億円以上の大規模なものです。

産官学が手を取り合って進めたこのプロジェクトでは、臨床試験を行った23種の食品成分の中で、いくつか抗疲労効果のあるものが見つかっています。

2008年2月には、日本疲労学会が、「抗疲労臨床評価ガイドライン」というものを打ち出しています。病的疲労ではない肉体疲労に対する抗疲労製品(食品・機器・空間など含む)の有効性を検討したものです。

こうした取り組みから、先ほど説明した疲れのメカニズムについてもどんどん明確になってきましたし、疲れを測定したり、新薬のヒントが見えたりという新たな視野も開けてきているのです。

疲労回復に効果的な成分「イミダペプチド」

そして、近年の研究において、疲労回復の救世主として期待される食材が発見されました。それが、「鶏の胸肉」です。正確に言うと、安価で入手しやすい鶏の胸肉に豊富に含まれる成分が、実はかなり効果のある疲労回復物質であることが明らかになりました。その成分の名前は「イミダペプチド」です。

渡り鳥がなぜ何千キロも休まず飛び続けられるのか、という抗疲労メカニズムの研究から発見されたイミダペプチド。他には、マグロやカツオなど、時速数十キロ以上で泳ぎ続けるような回遊魚にも含まれています。ちなみに、大トロなどのお腹まわりではなく、よく動かす必要がある尾びれの部分に多く存在します。

化学的に言うと、イミダペプチドは、カルノシンとアンセリンに代表される、イミダゾール基を有するヒスチジン関連物質が結合したペプチドのことです。

とはいえ、本当にイミダペプチドが疲労回復に効果的がわからないですよね。実は、イミダペプチドに秘められた抗疲労効果は、いくつかの実験により証明されています。まずは、その実験について紹介しましょう。

3つの検証から明らかになったイミダペプチドの力

イミダペプチドの抗疲労効果を実証するために行われたのは、3つの検証でした。

  1. パフォーマンスの低下が抑えられるか
  2. 疲労感が軽減されるか
  3. 細胞の損傷や酸化を抑えることができるか

1. パフォーマンスの低下について

疲れているという状態は、肉体的・精神的な負荷によりパフォーマンスが落ちている状態ですから、摂取することでパフォーマンスの低下を抑えなければ、疲労回復物質とはいえません。

実験は、被験者をグループに分けて行いました。まず、4週間、毎日あるドリンクを飲んでもらいます。一方のグループには、イミダペプチドを400mg含む飲料、もう一方は、プラセボと呼ばれる本物そっくりに作った飲料で、イミダペプチドは入っていません。

どの被験者がどちらを飲んでいるかは、被験者にも、調査側の医師にも結果を検討する時(キーオープン)までわからない状況です。4週間後は、いよいよ検証です。エルゴメーターというトレーニング器具を使い、全力で「自転車こぎ」をしてもらい、ペダルの回転数の変化を追いました。

イミダペプチドが入っていないプラセボを飲んでいたグループは、3時間半自転車をこいだあたりでペダルの回転数がぐっと落ちて、4時間経過後も回復することがありませんでした。では、イミダペプチドを摂取したグループはどうでしょうか。

3時間半の時点で、やはり回転数が落ちたのですが、そこから徐々に回復し、4時間経過後には、回転数はなんとこぎ始めの数値まで戻ったのです。

2. 疲労感の軽減について

日常で疲労感を自覚している207人を3グループに分けました。ひとつのグループには、イミダペプチド400mgを含むドリンク、もうひとつのグループにはイミダペプチド200mg入りのドリンク、そして最後のグループにはプラセボを、8週間に渡り毎日飲んでもらいました。

この試験の際にも、被験者はもちろん、調査側の医師も誰がどのドリンクを飲んだかわからないようにして、先入観からの決めつけがおきないよう万全を期しています。

疲労感の測定には、「VAS(Visual Analogue Scale)」という疲労度テストを採用しました。被験者に、疲労感やつらさ、痛みなどがどれくらいかを、それぞれ0~10の数値で判断し、そのトータルで診断します。労働衛生の現場でよく用いられる手法です。

その結果、イミダペプチドの摂取量に応じて、明らかに疲労感が軽減されていることがわかりました。この実験により、イミダペプチドを摂取して2週間後から、疲労感が軽減されるという結論を得られたのです。

3. 細胞の損傷や酸化を抑えられるかについて

体内の細胞が酸化し錆びると、尿の中の8-イソプロスタンという物質が増加することが知られています。これを指標にしたところ、イミダペプチドを摂取した際には、この物質の増加が抑えられることが確認できました。イミダペプチドは、抗酸化物質として、活性酸素による細胞の酸化をしっかり抑制し、細胞が錆びるのを防いでいたのです。

さらに、血中のTGF-βという物質で、細胞の損傷を調べました。TGF-βは、ガンのマーカーとしても知られているように、細胞が損傷を受けたときに上昇します。当然、疲労負荷を与えた場合にも活性酸素により細胞の損傷が起きるため上昇するのですが、イミダペプチドを摂取した際にはその上昇が抑えられていました。つまり、イミダペプチドが疲労負荷による細胞の損傷を抑える働きを持っていることが分かりました。

さらに、近藤教授が実施した別の実験では、イミダペプチドが疲労因子FFを減らし、疲労回復物質FRの反応性を高める働きがあることも明らかになっています。

以上のことから、イミダペプチドは、疲れが発生するメカニズムの中で、抗酸化作用で細胞が錆びて傷つくのを防ぎ、疲労因子FFを軽減させ、細胞の機能低下を抑えるという働きをしていることが明らかになりました。この事実は、イミダペプチドが、体を疲れにくくさせ、また、疲れを回復しやすくする効果があることを意味しているのです。

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