清潔すぎると免疫力が落ちる? 「泥んこ遊び」で子供の免疫力が高まる理由

近年、幼稚園や保育所でもモンスターペアレントが話題になっています。その際に「親」が話題にするもののひとつとして、「外で遊ばせるな!」というものがあります。泥や砂で汚れた服を身にまとった子どもの姿を見た瞬間、「汚い!」と怒りの感情が頂点に達するようです。

しかし、子どもの「泥んこ遊び」や「砂遊び」は悪者どころか、じつは健康を考えるうえで、じつに理に適った遊びだということがわかりました。むしろ、過度に清潔にして育った子どもほど、大人になると不健康になるのです。きれいにしすぎると免疫力が落ちてしまう、だからこそ、子どもに「泥んこ遊び」をさせることが重要なのです。

清潔すぎると免疫力が落ちる理由を免疫力研究の第一人者・矢﨑雄一郎さんの本「免疫力をあなどるな!」より紹介します。


清潔すぎる人はボロボロの身体になる

バラエティ番組を観ていると、タレントさんに「キッチリ癖」「キレイ好き」が多いことに驚かされます。そのくらいならまだ笑っていられるのですが、20分も手を洗うなど「潔癖症」と言ったほうよいのでは? という方も多いです。

ちまたには抗菌グッズ、除菌グッズがあふれています。除菌効果の高い洗剤やせっけん、ウェットティッシュ、便座クリーナーなどから、まな板やフキン、テーブル用の除菌スプレーなどキッチン用品まで、じつにさまざまな商品が出回っています。なかにはパソコングッズや文房具など、抗菌の必要性があるのかどうかもよくわからないものまであります。

清潔に気を遣うのはかまいませんが、最近では清潔にこだわりすぎる、いわゆる「潔癖症」の人が増えているようです。テレビを観ていても、自身の潔癖症をカミングアウトする芸能人がたくさんいるのには本当に驚かされます。

  • 電車のつり革が気持ち悪くて触れない……。
  • 公衆トイレが使えない……。
  • 図書館の本に触れない……。

なかには手をきれいにしたいがために何度も抗菌せっけんで手を洗ったあげく、アルコールスプレーで除菌をする人もいます。インフルエンザの流行期や夏場の食中毒が気になる時期になると、テレビ番組やコマーシャルでしきりに除菌の大切さを訴えはじめますから、多くの人はそうした情報を耳にすると、必要以上に菌が怖いと思ってしまうのかもしれません。

しかし、実際には衛生環境の整った日本では、そこまで除菌・抗菌に神経質になる必要はどこにもないのです。風邪予防や食中毒の防止のためにも、「適度に」衛生的なのは確かに好ましいことですが、「過度に」除菌・抗菌をすることは身体が維持しているバランスにとって、逆にマイナスでしかありません。

清潔好きの人は「菌=悪いもの」と考えがちですが、それは大きなまちがいです。よく善玉菌などという言葉を聞くように、人間の身体になくてはならない菌もたくさんあるのです。人間の身体には「常在菌」といわれる微生物がたくさんすみついています。特にたくさんいるのは腸内ですが、身体の表面の皮膚にも表皮ブドウ球菌をはじめ、約1兆個、10種類あまりの常在菌がいます。

これらの常在菌がバランスよく繁殖していることが、肌のバリア機能を維持するためには欠かせません。しかし、手を洗いすぎて常在菌まで失われてしまうと、肌のバリア機能は壊れてしまい、ひどい手荒れを起こしてしまいます。

薬用せっけんや除菌アルコールの乱用は、肌を清潔にするどころか、荒れた角質層のすき間に悪玉菌を繁殖させることになるため、かえって不潔になってしまうこともあるのです。

また最近では、こうした度を越した潔癖が健康にまで害を及ぼしているケースも多く報告されています。清潔すぎる環境で育った子どもはアレルギーを起こしやすく、風邪を引きやすい大人になる可能性があります。免疫学では衛生仮説と呼ばれている考えですが、無菌状態に近い環境によって免疫の基礎となる機能を鍛えることができずに、弱体化させてしまうのです。

子どものうちに適度に菌と接触できる環境にあれば、私たちの身体は鍛えられ、自然と抵抗力が身につきます。子どもの頃の衛生環境が適切だったかどうかが、大人になった後の健康にまで大きく影響するのです。

すべての菌を「汚い」「不潔」と排除しようとするのではなく、少しおおらかな気持ちで菌と「共存」してみることが最高の健康状態を維持するためには必要なのです。

「泥んこ遊び」は積極的にしたほうがいい

公園には砂場がつきもので、小さい頃にはよく遊んだものです。しかし、最近の子どもたちは「泥んこ遊び」をあまりしないそうです。特に都市部では顕著のようで、幼稚園や保育園によっては、あえてみんなで泥んこ遊びのイベントを実施するところもあるようですが、泥に触るのを嫌がる子どもも多いといいます。

冒頭で紹介したように、保護者のなかにも泥んこ遊びを嫌う人が多いようで、幼稚園や保育園に自分の子どもには泥んこ遊びをさせないようにと言ってくる人もいるそうです。最近ではそういった保護者からのクレームを受けて、泥んこ遊びをしない幼稚園・保育園もあるとのことです。

また、砂場に猫除けシートをかけるなどの対策をとっているところもあります。さらにホームセンターなどで「滅菌した砂に抗菌剤をコートした安全・安心な砂」なるものまで売られているというから驚きます。かつて、子どもの頃には自然のなかで泥まみれになって夢中で遊んでいた人には、とても信じられません。

たしかに手や顔、それに洋服まで汚れてしまいますので、大人の目からみれば泥んこ遊びは汚らしく見えるのかもしれません。とはいえ、この一見不衛生な遊びこそ、幼い子どもの免疫細胞を鍛えてくれる「免疫細胞のトレーニング」になっているのです。

清潔すぎる環境で育った子どもは総じて風邪を引きやすく、アレルギーも起こしやすくなりますが、泥んこ遊びをしないで育った子どもは、まさにそれに該当します。では、どうして「泥んこ遊び」が免疫のトレーニングになるのでしょうか。

「泥んこ遊び」で免疫力が高まる理由

免疫とは「自己(味方)と非自己(外敵)を見分けて非自己を排除する機能」です。外敵は「抗原」とも呼ばれ、主にウイルスや細菌などの病原体(免疫反応を引き起こす物質すべて)を指しています。世の中に存在する抗原の種類は10億とも100億ともいわれていますが、私たちの獲得免疫はこれらの抗原に出合うたびに、それぞれの抗原ごとに最適な攻撃方法や最も効果的な武器の作り方を学習し、記憶していきます。

つまり、出合う抗原が多ければ多いほど獲得免疫のレパートリーが拡がり、能力はパワーアップしていくわけです。特に、子どものうちにできるだけ多くの抗原にさらされると獲得免疫はどんどん強くなり、多くの外敵に対する「記憶」ができて、再び細菌やウイルスにさらされても感染しなくなります。

自然免疫は加齢によって機能が低下していくので、その低下を防ぐことが重要ですが、獲得免疫は「強化」していくことが重要です。なぜなら、先制攻撃を担う自然免疫は生まれながらに備わっていますが、獲得免疫は生まれてから私たち自身が「獲得」して強化していくものだからです。みなさんはこんな話を聞いたことはありませんか?

「子どもの頃にペットを飼っているとアレルギーになりにくい」
「農家で育った子には花粉症が少ない」

実際にオーストラリアで行われたアレルギーの調査では、牛や馬を飼育している家畜小屋に出入りしている子どもはそうでない子どもに比べて花粉症や喘ぜんそく息の発症率が四分の一だったそうです。同様に、家畜と触れあう機会の多いモンゴルの遊牧民にもアレルギー患者は極端に少ないといわれています。

これは、ペットや家畜と触れあって多くの抗原に出合っていることで、獲得免疫が鍛えられるということにほかなりません。じつは、この獲得免疫を効果的に鍛える時期には「最適なタイミング」があります。

私たちの身体には、獲得免疫の学校ともいうべき器官があります。肋骨の裏側、心臓のちょうど上あたりにある「胸腺」という臓器です。骨髄の中にある造血幹細胞でつくられた獲得免疫のひとつであるT細胞は、生まれるとすぐにその学校に集められます。そこで待っているのは厳しい教育です。ここでT細胞が覚えなくてはならないのは、攻撃すべき抗原との闘い方を覚えることと、攻撃してはならない自己をしっかり認識することです。

10億とも100億ともいわれるさまざまな抗原に対応できるよう、T細胞には個々にちがった武器が与えられ、それぞれの抗原に適した闘い方を学びます。このときに大事なのが、その人がどれだけたくさんの種類の抗原に曝露されてきたかということなのです。抗原の種類が多ければ多いほど、この学校で教えられる闘い方や武器のバリエーションは多くなります。

また、自分自身の正常な細胞を抗原とまちがえて攻撃しては大変なので、この学校では誤って自己のたんぱく質に反応してしまったT細胞はみんな殺してしまいます。そのため、この学校を無事に卒業できるT細胞はきわめて優秀な約一割のみ。ほとんどのT細胞はこの学校から体内に出ていくことなく死んでいきます。ここを無事卒業できたT細胞は、いうなればエリート中のエリートです。

しかし、この学校の役割を果たす「胸腺」は、私たちが思春期の頃に最も大きくなり、その後はどんどん萎縮していき、20歳を過ぎる頃にはなくなってしまいます。つまり、きちんと教育を施された優秀なT細胞を得ることができるのは20歳までだということです。

それ以後の獲得免疫は、これまで学校で教えられてきた闘い方しか使えないので、武器のレパートリーをそれ以上増やすことができません。ですから、それまでに獲得免疫の機能を向上させることが免疫機能を向上させることになります。

私たちが健康になるために重要なのは、免疫を決して軽視しないこと、そしてふたつのポイントを実践することです。

  1. 免疫の機能低下を防ぐことで、細菌やウイルスといった外敵から身を守ること
  2. 免疫機能を向上させることで、免疫の作業効率を高めること

このふたつのポイントは、じつは「細胞レベル」で考えると、自然免疫と獲得免疫の話でもあったのです。つまり次のようになります。

  1. 「自然免疫」の機能低下を防ぐことで、無数の抗原から身を守る
  2. 「獲得免疫」の機能を向上させることで、各抗原に適した能力を身につける

このことからも「免疫力を高める」とは、免疫細胞を活性化し、その働きをよりよくする、ということだとわかります。免疫力を重視する、ということは免疫細胞の働きを意識することでもあるのです。

自然免疫や免疫システム自体は何歳からでも改善できますが、獲得免疫に関しては20歳までにどれだけ免疫の貯金ができたのかで、その人の力は決まってしまいます。だからこそ獲得免疫の学校(胸腺)が用意されている子どものうちに、泥んこ遊びをさせて、たくさんの菌やウイルスに負けない身体をつくっておく、その意識を持っておくことが重要なのです。

子供の免疫力を高めるためにも、サンマーク出版の本「免疫力をあなどるな!(著:矢崎雄一郎)」を読むことをおすすめします。

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