食品添加物の「一括表示」と「表示免除」の罠

鮭のおにぎりの表示を見ると、 「pH調整剤」 「グリシン」 「調味料(アミノ酸等)」 とあります。ほかのおにぎりよりも表示されている添加物は少なめです。

「3種類なら少ないほうだろう」

と思うかもしれません。しかし、おにぎりの添加物は、実は「3種類」どころではありません。少なく見積もっても6種類、多ければ10種類以上の場合もあります。その理由は「一括表示」と「表示免除」に秘密があります。


一括表示とは

一括表示とは、いくつかの添加物を一括して表示することです。「香料」や「乳化剤」など、同じ目的のために使われるのであれば、一括して表示していいと食品衛生法で定められています。そのほうがわかりやすいという理由で行われているのですが、添加物屋・加工食品業者にとってはこれほど便利でありがたい法律はありません。

pH調整剤は1種類じゃない

食品の変質・変色を防ぐ「pH調整剤」もひとつの物質名ではありません。「クエン酸ナトリウム」「酢酸ナトリウム」「フマル酸ナトリウム」「ポリリン酸ナトリウム」といった添加物の「集合体」なのです。4~5種類は使われているのが普通です。それぐらい入れないと、pHの調整効果が出ないのです。

化学記号のカタカナが4~5種類もずらずら並んでいたのでは「添加物を大量に使っている」という悪印象を持たれてしまいますが、一括表示なら「pH調整剤」とだけ書けばいい。少なく見せかけられます。

また「フマル酸ナトリウム」「ポリリン酸ナトリウム」などとカタカナの物質名がずらずら並んでいたら「なんかいやだな」「気持ち悪いな」と思われてしまいますが、「pH調整剤」とあれば、あまり悪いイメージは持たれない。それもメーカーにとっては利点です。

これら一括表示の添加物には、使用基準がありません。要するに「pH調整剤」の一括表示の「裏側」で、何種類の添加物がどれぐらい使われているか、普通の人にはまったくわからないのです。

香料、イーストフードも危険

「香料」 「イーストフード」 という表示を見たら、同様の一括表示だと思ってまず間違いありません。「香料」などは、約600種類の添加物の中から、目的の香りを出すために数種類を混合しているのですが、その種類と比率の複雑さは、使用するメーカーさえわからないほどです。

調味料(アミノ酸等)も危険

「調味料(アミノ酸等)」も「等」を隠れ蓑として、実際にはどれだけの種類が入っているかわかりません。 「グルタミン酸ナトリウム(化学調味料)」「DL-アラニン」「グリシン」などのアミノ酸系はもちろん、アミノ酸系以外の「核酸」なども「等」に入ります。何種類入れてもいいので、加工する側としては非常に便利です。

そもそも「グルタミン酸ナトリウム(化学調味料)」と書いてしまうと、「なんだ、化学調味料入りか」と嫌がられる。メーカーとしては、それはなんとか避けたいのです。しかし「調味料(アミノ酸等)」とすれば、その表示から「グルタミン酸ナトリウム(化学調味料)」を連想する人は少ない。それどころか、最近は「アミノ酸ブーム」でアミノ酸は健康によいと「アミノ酸信仰」さえあるようです。

たしかに「グルタミン酸」は天然に存在するアミノ酸です。添加物リストにもありますが、味はほのかなうまみと酸味です。しかし、アルカリで中和して「グルタミン酸ナトリウム」にすると、あの独特の強いうまみが出ます。だから、表示も厳密にいえば「調味料(アミノ酸化合物等)」とすべきです。

一括表示が許可されている添加物の種類

  • 香料
  • 乳化剤
  • 調味料
  • 酸味料
  • 膨張剤
  • pH調整剤
  • イーストフード
  • ガムベース
  • チューインガム軟化剤
  • 豆腐用凝固剤
  • かんすい
  • 苦味料
  • 光沢剤
  • 酵素

なんでもかんでも一括表示できる便利な法律

添加物の物質名をずらずら並べずに済み、数も少なく見せかけることのできる一括表示は、添加物を大量に使っているメーカーにとっては、大変都合のいい法律です。こうなると、メーカー側にこれを利用しようという「作為」が働いてもおかしくありません。

まず、ずらりと並んだ添加物を前に、なんとか一括表示に持っていけないかと検討するわけです。「これとこれは乳化剤の一括表示でいこう」「これはpH調整剤の範疇に入るだろう」 などというように「組み合わせ」を考えるのです。あるいは、「これはあと2種類混合して酸味料と表示しよう」 として、一括表示にするために、わざわざ余計な添加物を増やしたりするのです。

そういうことが、消費者の知らない「裏側」で平気で行われているのです。ひとつの物質がひとつの役割をするとは限らないのが、添加物です。「酸化防止剤」や「乳化剤」など、複数の働きをすることも多い。こっちは赤、こっちは黄色などと明快な色分けはなかなかできないのが添加物の世界なのです。

たとえば「クエン酸ナトリウム」という添加物がありますが、これは食品を保存するpH調整剤の効果もあれば、味の改善にもなるので、多くの目的に使われています。ですから、たとえば本来保存の役目で使っているのに、「グルタミン酸ナトリウム(化学調味料)」と一緒に調味料として使ったのだと言い張れば、「調味料(アミノ酸等)」の中にもぐりこませることもできます。チーズに使えば「乳化剤」にもなるのです。こうなると、もう一種のトリックです。

表示免除の「裏側」

こうした消費者に見えない添加物は「一括表示」だけではありません。そもそも加工食品においては、添加物を含む原材料をすべて表示しなければいけないと、食品衛生法で決められているのですが、「表示免除」という例外ケースが認められており、以下の5つの場合に限っては、添加物を表示しなくていいということになっているのです。

  • キャリーオーバー
  • 加工助剤
  • バラ売りおよび店内で製造・販売するもの
  • パッケージが小さいもの
  • 栄養補助剤

キャリーオーバー

「キャリーオーバー」とは、原材料からそのまま持ち越される添加物のことです。焼肉のたれをつくる際には、原材料にしょうゆを使いますが、このしょうゆに含まれる添加物は表示しなくていいのです。

「しょうゆ風調味料」には多くの添加物が含まれています。しかし、最終的に出来上がる「焼肉のたれ」には、しょうゆの添加物の効き目は及ばないから表示しなくていい、ということになっているのです。だから表示には、ただ一言「しょうゆ」とあるだけです。

それ以外にも、お酒の「酸味料」や「化学調味料」、マーガリンに含まれる「乳化剤」や「酸化防止剤」など、キャリーオーバーは想像以上に数多くあります。表示に書かれていない部分で、大量の添加物が使われているのです。消費者が見抜けない添加物がどれほどあるかということです。

加工助剤

加工食品をつくる際に使われた添加物のうち、食品の完成前に除去されたり、中和されたりするものは「加工助剤」とみなされ、表示しなくてもいいことになっています。

つまり、「最終的に残っていなければいい」ということになっているのです。たとえばみかんの缶詰は、内皮がむかれた状態で詰められています。この皮は塩酸とカセイソーダで溶かして除去していますが、塩酸はカセイソーダで中和されるため、みかんには残っていないから表示の必要はない、ということになっているのです。

バラ売りおよび店内で製造・販売するもの

バラ売り(包装していないもの)の加工食品も、添加物の表示は不要です。パックに詰めないで枚数売りされている魚や、「詰め放題」などとして売られているお菓子などがそうです。ベーカリーショップのパンなども、トレイに載せてバラ売りにされている場合は表示不要です。

また、店内で製造・販売するものも、表示は不要になります。持ち帰り弁当屋でつくられたお弁当などがこれに当たります。レストランのメニューもそうです。「自分でつくって自分で売るから表示の必要はない」ということになっているのです。

スーパーの店内でつくられる惣菜などもこれに該当しますが、こちらは自主的に原材料を表示するところが多くなっています。このバラ売りにも大きな問題点があります。「どんな添加物が使われているかわからない」ということです。たとえばクリームパンをつくる際に、「乳化剤」や「保存料」「pH調整剤」などの添加物を使ったりします。これらは包装すれば表示しなくてはいけませんが、バラ売りにすれば書かなくてもいいのです。そのため、「裏側」が何を使われているか、知りようがないのです。

パッケージが小さいもの

飴や一口サイズのお菓子など、パッケージが小さい場合(30平方センチ以下)は、原材料を記載しなくてよいことになっています。コーヒーフレッシュなどもこれに該当します。

添加物をいちいち全部書いていたら、小さなラベルではとても足りません。お弁当やサンドイッチ、お菓子など、入っている添加物をすべて書いたら、ラベルが本体を覆ってしまって、中身が見えなくなるものだってあるはずです。だから、主要なものだけを書いてごまかしていたりするのです。

参考本

「食品の裏側―みんな大好きな食品添加物(安部司)」

    
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