自分が希望する延命治療を医師へ伝える方法

いままでの医療は、医師が治療の主導権をにぎり、判断も「医師任せ」のことがほとんどでした。しかし現在では、本人の希望を最優先することが主流となっています。それでも、なかなか希望通りにはいかないケースがあります。

自分の意思があっても望む延命治療を、周囲の環境によって実行できなくなる場合もあります。しかし、選択はあくまでも本人の問題です。強い意思をもって

「こんなふうに最期を迎えたい」

という希望があればきちんと伝えて、医療のプロである医師に協力してもらうようにします。望まない治療があるなら、断りましょう。素人の発言だからと遠慮して、自分の意見を明確にしない人もいますが、終末期医療こそわがままを言っていいのではないでしょうか。

「家に帰りたい」
「苦しいのや痛いのはいやだ」
「自由に動けるようにしてほしい」
「●●を食べられるようにしてほしい」

など望むことはすべて伝えればいいのです。実際の方法を考えるのは医師の仕事です。周囲のことにあまり気遣いをせず、まずは自身の望みを伝えて周囲に努力してもらいましょう。そうすることで、医師や家族や周りの人も、みなさんの最期を望むものにするための協力ができた、という達成感を得ることができます。

医師へ延命治療に対する自分の希望の伝え方と話し合いについて紹介します。


延命治療を望まないと決めたなら

いろいろ考えた結果、延命治療を望まないなら、「なにをしてほしくないのか」を具体的にしておくと、家族や医療側が困ることがありません。一般的には、末期になって心臓が止まりそうなときは、

・心臓マッサージ
・人工呼吸器の装着
・気管内挿管
・昇圧剤の投薬

が行われます。まずはこれらを「行う・行わない」の選択ができます。長期的な視点に立ったときには、

・点滴による形式的な治療
・鼻腔栄養
・胃ろう

も検討することになります。ただしこれらの延命治療を断るときは、「その際に生じる苦痛については、できる限りとってほしい」などの希望も、はっきり伝えることが大切です。

延命治療を断るとき難しいのは、「どの段階が治療で、どの段階が延命につながるのか」という見極めです。「これ以上の治療はムダである」という判断は、医師でもなかなかできません。それは、最後の最後まで治療をあきらめてはいけないというのが医療の姿勢でもあるからです。医師が延命治療に対して積極的にならないのは、

・高齢である場合
・認知症がある場合
・寝たきりで動けないなどの状況に、進行がんが合併した場合

くらいです。それ以外は、医療サイドでは「治療をやめる」という判断はほぼできません。これは医療では判断がつきかねることだからこそ、自分で「最期の生き方」を決めるべきことなのです。

延命処置を中止すると、家族は殺人と判断されるか?

「一度はじめた延命処置を中止したら殺人になるのか?」

これは、非常に難しい問題です。たとえば、延命処置として点滴を施す場合、もしこれを中断しようとすると、「点滴を絞る」という言い方をしますが、1日の点滴を1000mlから500mlに減らしていきます。そうすることで、次第に脱水になって亡くなるのを見守るのです。これは実際によく行われていることで、特に問題にはなりません。

一方で難しいのは、呼吸が止まって人工呼吸器を装着した場合です。この場合、人工呼吸器を止めることは直接死につながるため、医師は、はずせば殺人罪に問われる危険があります。実際に医師に殺人罪が確定した判例もあり、なかなかはずすことができません。

医師に任せて人工呼吸器を装着した場合、家族が「はずしてください」と言っても、一度装着してしまうとはずすことは難しく、そうなると家で死を迎えることは難しくなります。

そこで延命を希望しないなら、末期の状態になって呼吸がうまくできなくなったとき、人工呼吸器は装着せず、そのまま自然に任せることを子どもに伝えておくことが大切です。本人の意思が明確であれば、医師も家族も迷うことがありません。

話し合いの場を設ける

延命治療に関する選択を、病院側に一方的に任せるのではなく、話し合いの場を何度ももって方針を決めておくことが、気持ちよく最期を迎え、あとから問題を起こさない方法です。

ただ末期の医療ではさまざまな状況が考えられ、単純な結論を出すことはできません。たとえば高齢で認知症の末期で、肺炎を起こし、いまにも心臓が止まりそうなとき、家族が延命処置を望むことは多いとはいえません。

一方、これが50歳代で脳卒中後遺症で寝たきりの人が肺炎を起こして、呼吸が止まりそうなとき、家族はなにもしないでほしいとはなかなか言い出せないものです。こうしたとき、みなさんの意思が明確なら、家族は迷うことがないでしょうし、選択も楽になります。

延命処置をするしないを事前に決めるときは、医師や家族との話し合いをできるだけ多くもつことです。このときは医師にも個人の意見だけでなく、他の医師の意見も聞き入れた上で、判断してくれるようお願いするといいでしょう。

自分の最期は、自分で決めることが大切です。医師へ延命治療に対する自分の希望の伝え方と話し合いについて「子どもに迷惑かけたくなければ死の迎え方は自分で決めておきなさい」より紹介しました。自分の最期を考える上で非常に参考となる本です。

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参考本

「子どもに迷惑かけたくなければ死の迎え方は自分で決めておきなさい(米山 公啓)」

    
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