「痛いの痛いの飛んでいけ」には科学的根拠があります

多くの人は子どもの頃、ちょっとしたケガをしたときに、お母さんが「痛いの痛いの飛んでいけ」といいながらやさしくさすってくれると、不思議と痛みがやわらいだという経験があるのではないでしょうか。これは、子ども向けの単なるおまじないのように思えるかもしれませんが、実は本当に効果があります。


「さする」という刺激が、痛みを伝わりにくくします

まずは、「さする」ということがとても重要です。人間は体のなかに、痛みを伝わりにくくする「内因性疼痛抑制系」というシステムを持っています。ケガなどをすると、痛みを伝える信号は脊髄を通って脳のほうへと上がっていくのですが、このとき「さする」という刺激が、痛みを伝わりにくくするブレーキとなるのです。

ぎゅっと押さえるのも効果があります

やさしくさするだけでなく、ぎゅっと押さえるのも効果があります。腕をケガしたときなどに、思わず「うっ」といって押さえると思います。「押さえよう」と思ってから行動にでるのではなく、体が自然にやっているのです。やさしくさする、強く押さえるだけでなく、つねるなどの痛み刺激も他の部分の痛みをおさえることができます。予防注射を受けるときに、他の部分を自分でつねって、注射の痛みをがまんしたことはありませんか? これも同じ働きによるものです。こういった、「なでる」「押さえる」というのは、人にしてもらっても、自分で自分におこなっても効果があります。

ケガをした部分をやさしくなでる効果は?

ケガをした部分をやさしくなでると、この抑制系の作用を高めることができます。これは、1965年に発表された『ゲートコントロールセオリー』という有名な学説ですが、同じ痛みでも、いろいろな刺激によって痛みを強く感じたり、軽く感じたりすることの説明として立てられた学説です。

痛みの研究のきっかけになった『ゲートコントロールセオリー』

『ゲートコントロールセオリー』によって、痛みはただひとつの末梢の刺激によって起こるものではなく、いろいろな要因の制御を受けていることが示され、そのあとの痛みの研究が進むことになりました。その後の研究で、脳のある部分を刺激すると、痛みを感じなくすることができるという動物実験などをきっかけに、下行性疼痛抑制系が発見されました。

慢性の痛みの場合

慢性の痛みの場合は、下行性疼痛抑制系のブレーキの機能が悪くなっていることが痛みの慢性化に関わっており、その下行性疼痛抑制系の働きをよくすると痛みを抑えることができるようです。最近では、下行性疼痛抑制系の働きをよくすることで鎮痛効果を得ようという薬が診療の場面で使われるようになって、慢性痛の治療効果の成績アップにつながっています。

鍼治療や低周波刺激による鎮痛効果のメカニズム

鍼治療や低周波刺激による鎮痛効果のメカニズムは、広汎性侵害受容性調節といわれています。

まとめ

いかがでしたか?
「痛いの痛いの飛んでいけ」といいながら誰かにさすってもらったときに感じる安心感も、痛みをやわらげる効果があります。
第三者にやさしくしてもらうことで「自分の痛みをわかってくれた」「やさしくしてくれた」という気持ちになり、痛みが癒されるのです。痛みの強さは同じでも、不安やイライラした気持ちは痛みをより強く感じさせ、反対に、安心感を得たり、癒されたりすると痛みの苦痛は軽く感じるようになります。
この記事は参考になりましたか?

参考書籍:河手眞理子著『「痛みの名医」が教える 体の痛みがスッキリ消える』(二見書房)

    
コメント