イヤな記憶はなぜ消えない?

誰もが記憶の片隅に追いやってしまい、もうすでになきものとしたいと切に願うようなイヤな記憶は誰しもが持っているものです。そのイヤな記憶というのは、ただちに消してしまいたいと思ってはいても、意識すればするほど頭の中にぐるぐると思考がめぐっていってしまうというのは皮肉です。とはいえ、それこそ人間らしいと、ひとつの開き直りを示そうにも、なかなかそうはいきません。それがイヤな記憶の本質であり、思わず苦笑するといった体験をすることも多いのではないでしょうか。

なぜ消えないのか

そこから導き出される素朴な疑問、つまりは心の底から湧き上がってくる疑問として、イヤな記憶というのはなぜこうにも消えないのかといったひとつの命題があるでしょう。その疑問にひとつの答えを示してくれる本が榎本博明による『なぜイヤな記憶は消えないのか』 (角川新書)です。本書の著者は心理学者として研究に研究を重ねてきた人であり、その期間は20年にも及ぶようです。それだけの時間をかけても、ひとつの核心めいた真実へ到達することができないほど、人間の心の構造というのは複雑なのでしょう。さらにもうひとつ、イヤな記憶というものがその核心にずっとくすぶり続けているといったこともあげられるでしょう。

意思としてどうなのか

本書ではイヤな記憶を反芻する人に対して、さっぱり忘れてしまう人といった人の気質が対比的に出されています。そうした部分からわかりやすさを追求した本だとも言えますね。