ストレス性睡眠障害とうつ性睡眠障害になる原因と治療方法

ストレスが多い人は、ストレス性睡眠障害になりやすくなります。また、慢性的にストレスがある状態だとうつ病になりやすくなり、うつ性睡眠障害になってしまいます。心の問題による睡眠障害であるストレス性睡眠障害とうつ性睡眠障害になる原因と治療方法を紹介します。


ストレス性睡眠障害

ストレス性睡眠障害は、さまざまなストレスが原因となって起こる睡眠障害です。ストレスは、「対外的な刺激に対する生体の反応」のことです。生体には、周りの環境がどのように変化しても、内部の状態をある一定の範囲内に保っておこうとする「生体恒常性(ホメオスタシス)」という仕組みが備わっています。

体温や血圧、血糖値などがある程度の触れ幅を持って維持されているのは、ホメオスタシスの働きのおかげです。その調整をしてくれるのが、交感神経と副交感神経という2系統の自律神経です。生体に何か対外的な刺激が加わると、ホメオスタシスが一時的に乱れます。そのときに生じる歪みが、「ストレス」なのです。

ストレス2つの種類

ストレスには、「物理的刺激」と「心理的刺激」の2種類があります。

物理的刺激

物理的刺激は、暑さや寒さ、騒音、異臭、激しい肉体労働や運動、家事による疲労、かゆみや痛みなどによるストレスです。真夏の暑さを乗り切るエアコンや凍える寒さから身を守るダウンジャケットもなく、自動車や洗濯機などの便利な機械がなかった時代、物理的刺激が人にとっては最大のストレスになっていました。

心理的刺激

現代人の多くが悩まされているのが、心理的刺激です。ストレス性睡眠障害の引き金になるのも、大半はこの心理的刺激です。心理的刺激には、肉親との死別や離婚、がんなどの深刻な病気になった場合の悩みなどが挙げられます。東日本大震災のような突発的な災害、失業なども大きな心理的刺激です。

ビジネスマンにとっては、もっと身近なことがストレスになります。それは人間関係です。人間は集団で生活する社会的動物で、人とのつながりや関わりを持ちながら日々の暮らしを営んでいます。

職場では上司や同僚との関係、家庭では配偶者や親類、子どもたちとの家族関係、恋人との恋愛関係。人と人との関わりは、いったんもつれると強い心理的刺激となります。こうした関係性はいずれも相手があることなので、自分ひとりでいくら悩んでも解決策が見つからない事例が多いからです。

心配事によるストレスが原因で眠れなくなる

ストレス性睡眠障害では、眠ろうとしても心配事が次々と浮かんで寝つけなかったり、ようやく眠れても不安感で中途覚醒して眠れなくなったりします。

上司からの叱責が気になったり、同じ部署にいるそりの合わない同僚と良好なチームワークが築けない。あるいは配偶者との冷めた関係が改善できなかったり、好きな恋人の心変わりの兆しを感じたりと…こうした心理的な刺激は、睡眠障害の大きな原因となります。

ストレスの受け取り方である感受性には個人差があります。ちょっとしたミスをしてチーム全体に上司から怒られても、気にならない人もいれば、深刻に悩む人もいます。

同じ心理的な刺激を受けたとしても、受け手の感受性次第でストレスの大きさは変わるのです。デリケートな心の持ち主で、感受性が鋭いタイプほど、残念ながら職場の人間関係でストレス性睡眠障害を起こす確率は高くなります。

ストレスは心身症の原因となる

心理的なストレスにつねにさらされていると、便秘や下痢、胃の痛み、高血圧、疲れといった肉体的な異常が出てきます。このような状態が続けば「心身症」と診断されます。心身症とは、

「身体的な疾患のなかで、その発症や経過に心理社会的因子が密接に関与し、器質的ないし機能的障害が認められる病態をいう。ただし神経症やうつ病など、他の精神障害に伴う身体症状は除外する」

と定義されています。つまり、精神的な障害とは区別される身体の疾患で、心理的刺激が原因で身体に症状が現れるのが心身症です。

心身症に深く関わるのは、自律神経です。強い心理的刺激があると、身体が緊張します。すると、身体を活動的にする交感神経が優位になります。交感神経が優位になると、副腎髄質という場所からアドレナリンというホルモンが分泌されて心拍数、呼吸数が増え、血圧が上がります。そして発汗が起こり、筋肉に血液が集まる分だけ消化管などの内臓の血流が低下し、消化吸収が滞ります。

こうした一連の反応を、アメリカの生理学者ウォルター・B・キャノンは、「闘争ー逃避反応」と名づけました。キャノンは、元来物理学の用語だった「ストレス」という単語を、生体に初めて用いた学者としても知られています。

闘争ー逃避反応は、英語で「ファイト・オア・フライト・レスポンス」といいます。緊張がもたらす交感神経の興奮は、動物が天敵などに出会った際、戦う(ファイト)か逃げる(フライト)かを決める本能的な反応であるとキャノンは考えました。

心拍数が上がり、筋肉に血液が集まると、戦うにしても逃げるにしても有利です。また、アドレナリンは脂肪細胞の脂肪分解を促して、筋肉の運動エネルギー源をつくり出してくれます。

そりの合わない上司や同僚は、天敵のようなものです。心理的刺激で交感神経が優位になると、血圧が上がって高血圧になったり、内臓の血流量が低下して胃が痛くなったりするのです。腸の活動レベルが低下すると、便秘や下痢のような便通の異常も起こってきます。

そして心理的刺激による自律神経の異常は、眠りにも悪影響を与えます。夜、副交感神経が優位になり、リラックスして眠るべき時間になっても、交感神経が優位で心身ともに興奮しているので、健全な眠りが得られなくなるのです。

心理的な刺激によるストレスにずっとさらされていると、「うつ」の症状が現れ、最終的には「うつ病」になってしまいます。ストレス性睡眠障害がうつ性睡眠障害を引込してしまうのです。

うつ性睡眠障害

うつ性睡眠障害も、交感神経の興奮により、引き起こされます。うつというのは症状で、それが病的になると病院で「うつ病」と診断されます。うつには次のような症状があります。

うつの主な症状

疲れているのに眠れない
食欲がなくなって瘦せる(または食欲が高ぶって太る)
他人に会うのが億劫で気が進まない
気分が落ち込み、絶望的な気分になる
好きだったことや物に興味が持てなくなる
仕事に集中できない

これらの症状のなかでも、いちばん典型的なのは「疲れているのに眠れない」という状態です。疲れているときほど、本当は良く眠れるはずです。睡眠不足なのに眠れない、疲れを自覚しているのに眠れないのは、うつのサインです。これうつ性睡眠障害といいます。

うつとは、生きようという基本的な活力ややる気が低下した状態です。こうなると生体は、「この難局を何とかしよう!」と交感神経を優位にして、活力を出そうとします。すると、動きが悪くなったエンジンを空噴かしするような状態になり、やがてエンジンが壊れてうつ病になります。

うつ病は中高年に多い病気でしたが、最近では20~30代の若い世代でも増えていることが問題視されています。ビジネス環境の変化から、若い世代でも仕事に対する責任が相対的に増えてきました。それが、うつ病の若年化をもたらしていると考えられています。

うつになると、仕事への前向きな意欲が失われてしまい、明るくポジティブな気分で仕事に向き合えなくなります。そればかりか、うつを放置するとうつ病になり、うつ病を放置すると最悪の場合には自殺などの自己破壊に至ります。

「疲れているのに眠れない」という症状が出たら、SOSのサインとと考えましょう。うつは放置するほど重症化し、重症化するほど治るまでに時間がかかります。睡眠障害をサインとして、うつとうつ病が重症化する前に対処することは極めて重要です。

ストレス性睡眠障害とうつ性睡眠障害は病院で治療しよう

ストレス性睡眠障害とうつ性睡眠障害による治療は、自分で治療しようとせず病院で治療をしましょう。特に心の問題は自分だけで解決するのは困難です。病院で治療を受けることをおすすめします。

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参考本

「眠れない人がぐっすり眠れる本(鴨下一郎)」

    
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